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今更ながら、私が鹿実野球部を応援するようになった経緯をお話ししようと思います。かなりの長文になりますが、どうかご容赦下さい。

まず一番最初のきっかけは、やはり1996年の春の選抜優勝です。この当時私は小学校低学年。優勝の瞬間はたまたま高速道路のパーキングエリアのテレビで見ていたのですが、その場にいた大勢のお互い面識がないであろう大人たちが共に喜びを分かち合う姿を見て、子供心に「凄い出来事が起こったんだ」と心を揺さぶられたのを憶えています。

さらにその2年後の夏の甲子園杉内俊哉投手のノーヒットノーラン。96年優勝当時は野球に興味が無かった私ですが、この時は徐々に野球のルールや仕組みを理解し始めた頃。2年前に鮮烈な印象を植えつけた「鹿実」が、またも全国の舞台で凄い事をやってのけたーーー強い、凄い、カッコいいものが好きな男の子が、これに惹かれないわけがありません。自分が生まれ育った鹿児島の名を全国に響かせる鹿実の快進撃に、少年の私は心臓を鷲掴みにされたような感覚でした。

この二つの出来事がなければ、鹿実野球部のファンにはなっていなかったかもしれません。

 

だだ、この後数年間は鹿実に代わり、ライバル樟南が鹿児島の高校野球の覇権を握る事になります。

99年から2003年まで、鹿児島の高校野球空前絶後夏の甲子園5年連続出場。特に最初の2年間は圧巻の強さでした。

まず99年は上野弘文投手と鶴岡慎也捕手のバッテリーに、現在は樟南のコーチも務める青野毅選手が2年生ながら四番に座るという強力な布陣。後にプロの世界に進むこの3人を中心に夏の甲子園ベスト4まで勝ち進みました。敗れた準決勝も優勝した群馬・桐生第一に、上野投手が好投しながら9回表に均衡を破られるという惜敗。私の記憶記憶にある範囲では、この年の樟南が鹿児島県勢で最も深紅の大優勝旗に近かったのではないかと思っています。

翌年も引き続き主砲を務め、エースでキャプテンという立場まで加わった青野選手がチームを牽引し甲子園ベスト8。

秋春の県大会では苦戦しながらも、夏は目覚ましい戦績を修めるその戦いぶりは試合巧者そのもの。まるで「俺たちは甲子園を知っているのだ」と誇らしげに言わんばかりの、チーム全体の確固たる自信を感じました。

先程述べたような「凄い、強い、カッコいい」が好きという子供心の大原則に身を委ねたら、鹿実から樟南に鞍替えしてもおかしくないかもしれません。ですが、私はこの時も樟南よりも鹿実を熱心に応援してました。もちろん全国で戦果をあげる樟南の活躍は鹿児島県民として誇らしくはありましたが、それ以上に甲子園行きを樟南に阻まれた悔しさ、強敵としての憎たらしさの方が、この当時は強かったと思います。私の「鹿実ファンとしての自我」は、むしろこの頃さらに強力に形成されていったといえるかもしれません(笑)

 

鹿実が樟南に勝って甲子園に行って欲しい。そう強く願う気持ちとは裏腹に、鹿実野球部はこの後緩やかに低迷していきます。夏の県大会の戦績は99年から準優勝→ベスト4→準優勝→ベスト8と、決して悪い成績ではありません。ですが、甲子園優勝を経験し常に甲子園出場という結果を求められる名門としては苦しい時代だったのもまた事実でしょう。

02年のチームは本多雄一主将を中心に春の九州大会を優勝した強力なチームでしたが、最後の夏は樟南戦にたどり着く事なくベスト8敗退。この年を最後に、長年鹿実野球部の指揮を振るい続けてきた久保克之監督(現総監督)は「甲子園は近くに見えて遠き処」という言葉を教え子に贈り勇退しました。

 

その翌年からは、鹿実野球部の苦難の時代が始まります。

02年秋からは鹿実のエースとして甲子園出場を果たした竹之内和志監督が指揮を執りますが、その年は外から見ても苦しい台所事情が手に取るように感じ取れました。春とNHK旗で準優勝……という結果だけ見たら決して悪くはありませんが、その内容は「御三家」の最古参である鹿商に決勝でなければコールド負けという大差で敗れるというもの。

エースが打たれても、変える投手がいない。下窪投手や杉内投手の育成に携わった竹之内監督の手腕をもってしても、投手陣の編成が上手くいかない……

この頃は鹿実の長い歴史の中で最も部員数が減り続けた時代。特に03年の3年生は十数人程度という少人数。樟南を始め多くの有力中学生選手が鹿実以外の学校を選んだ時代だったのかもしれません。

だから当時の野球好きな大人たちは「鹿実の野球は終わった、厳し過ぎるし古すぎる。あれでは今の子供は選ばない」と口にして憚らなかったのをよく憶えています。そして、それを聞く度に死ぬほど悔しい気持ちになった事もーーー

03年のチームは結局それまで外野のレギュラーだった強肩の野手を急遽エースに据えるものの、夏は3回戦敗退。久保総監督は前の年に「近くに見えて」と仰りましたが、この年は甲子園がとにかく遠く見えた、遠く感じた一年間でした。翌04年はなんとか立て直し甲子園出場を成し遂げますが、さらに翌05年の春の県大会ではまさかの初戦敗退。これが大きな波紋となり、竹之内監督は責任を取る形で退任。

僅か三年足らずの任期ではありましたが、様々な葛藤を抱えながらも鹿実の苦しい時代を支えた竹之内監督の時代を、私は忘れることができません。

そして、この時代を知っているからこそ、私は「鹿実は終わった」と何度言われようとも笑い飛ばす事が出来るのです。

 

竹之内監督の後を引き継いだのが現在も指揮を執る宮下正一監督ですが、その後も数年は戦績が上向きません。その間に共学化を契機に創部し長澤宏之(現創志学園)監督の下力をつけた神村学園や、「ロッコウ旋風」で全国的な話題になった鹿児島工が甲子園で躍動します。いよいよ「鹿実は終わった」が県民レベルで浸透してきた07年夏、鹿実野球部は久々の県大会決勝まで辿り着きました。

結果はサヨナラ負けで甲子園への切符を後一歩で逃したのですが、私はそのチームに漠然とながらも大きな変化を感じたのを憶えています。

決勝までの勝ち上がりこそ地味な接戦ばかりでしたが、とにかく自信を持って戦っている。必死でボールに食らいつき、泥臭く一点を奪いに行き、水も零さぬような鉄壁の守備で「勝ち切る」野球。何より、グランドに立つ9人の選手が一つの意志を持つように規律、統率が取れた。まるで軍隊のような野球。

ーーー今までの鹿実とは何か違う……変わった?いや、そうじゃない、「戻った」んだ。そうだ、鹿実の野球が帰って来たんだーーー

甲子園こそ届きませんでしたが、私はこの年の戦いぶりに鹿実野球復活の大きな手応えを強く感じました。負けた悔しさよりも、鹿実野球の真髄をその目に焼き付ける事が出来た。その事が嬉しかったのです。

翌年、鹿実は再び夏の決勝の舞台に立ちます。相手は春の選抜に九州代表として出場し、甲子園で強豪平安(現龍谷大平安)と延長引き分け再試合の死闘を演じた鹿児島工。当時高校を卒業し県外に出ていた私は、決勝を見るためだけに帰郷しました。リベンジを成し遂げる彼らの勇姿を、その目で見ないわけには行かない、と。

ロッコウ旋風の余波があり、どちらかと言えば鹿工推しの声が多かった一戦でも、彼らは普段通りの「鹿実野球」を実践しました。プレッシャーがかかる舞台でも……いや、プレッシャーそのものを力に変えるような戦いぶり。強敵鹿工を4ー2で退け、見事一年前の先輩たちが成し遂げられなかった甲子園出場を果たしたのです。

甲子園の舞台では水を得た魚のように、県大会打率2割台だった打線が奮起し、初戦は14得点の大爆発。中でもバスター打法の9番打者田之尻選手の満塁ホームランには驚きました。勝負強さは確かに持ち味でしたが、ここまで長打力があったのかと……

その後の宮崎商・赤川投手との投げ合いでは背番号10のエース岩下投手が魂の投球、報徳学園戦での劣勢の9回に3番森田選手がサウスポー近田投手から放った意地の一発も思い出深いです。

 

ーーーそうか……これが鹿実野球なんだ。だから自分は鹿実野球が好きなんだーーー

 

惜しくも夢の舞台に届かなかった07年、そして夢の舞台で躍動した08年。この2年間で私は鹿実野球をより深く理解し、今まで以上に好きになりました。悔しさから這い上がり努力し続けた選手たち。そして彼らの力を最後まで信じ、厳しく指導し続けた宮下監督。この軌跡を知ってしまったら、もう一生ファンをやめることなんてできません。

 

鹿実の野球は2019年の今日も、古い、時代遅れと言われることがあります。大半は否定的な意見です。技術より精神力を鍛える指導方針はナンセンス、長時間のハードトレーニングは効率が悪い、今時こんな指導は虐待ではないか、と。

しかし、大舞台での彼らの底力を支えるのは、この非効率で時代遅れなこのスタイルです。

「あれだけのことを乗り越え、あれだけのことをやった。だから負けるはずがない」

そう強く思える事こそが、鹿実野球の強みなのです。

一緒に努力し、共に怒られ、時には選手同士で厳しく言い合い、ぶつかり合う。青春時代にここまで本気になれる場所がある事は、幸せな事だと思います。だからこそ、メンバーは選手はベンチに入れなかった仲間のために戦えるし、スタンドの仲間はどこよりも力強い声援で後押しするできるんです。

 

近年は鹿実の厳しさ、過酷さを理解した上で「鹿実で野球がやりたい。鹿実の野球がやりたい」と門を叩く選手が増えて来たと聞きます。ファンとしては嬉しいですし、誇らしく思います。

そして、卒業後に「鹿実でこいつらと野球やれて良かった」というOBの声を聞く度にさらに嬉しくなってしまいます。

 

だから、古いと言われようが、時代錯誤と言われようが、鹿実野球部に鹿実らしく在り続けて欲しい。

ただただ外から見守ることしか出来ない一人のファンに過ぎませんが、私はそう強く願います。

逆襲へ、夏連覇へ、最後のピース

前回エントリーこれが全国レベル……鹿実野球部、九州大会初戦敗退 - Bの魂の続きを。

しかし、あれだけ強かった明豊も次戦でコールド負けしてしまうとは……野球は難しいスポーツです。

では改めて試合を振り返ってみます。

 

まず先発メンバーを見て驚かされました。スタメンマスクが三年生正捕手の玉田選手ではなく、一年生の城下拡(入来中/串木野ドリームズ)選手。昨年U15日本代表に選出された逸材ではありますが、入学したての一年生をいきなり九州大会という大舞台で起用するとは、宮下監督も思い切ったなあと思ったものです。それだけ期待の高い選手ということなのでしょう。

ただし、結論から言えばこの大胆な起用が裏目にでた形となりました。初回の守りでいきなり3点を献上する形に。戦前私は「明豊が上手ではあるが、勝機もある」と見ていましたが、それは「序盤をロースコアに抑えた上で先取点を取れた場合に限る」というもの。そう言った意味では途中で点差こそ詰め寄ったものの、この初回の失点が試合を決めてしまったといえるかもしれません。

もちろん失点が全て城下選手の責任とは言えませんが、やはり入学一ヶ月しないうちに扇の要を任せるのは荷が重かったという印象でした。中学時代バッテリーだったはずの高田投手とは微妙に息が合っていなかったように感じましたし、ピンチを招いた場面で間を取るような場面も見られませんでした。最も、それを一年生に求めるのは酷な話。これもいい経験です。とはいえ捕球、送球動作やたった一打席のバッティングを見たら、とても一年生とは思えない高い能力を感じさせてくれました。順調に行けば、鹿実の看板を背負って立つプレーヤーになることは間違いないでしょう。今回はほろ苦いデビューとなってしまいましたが、今後の成長と活躍が楽しみです。

 

序盤から3点のビハインドを背負う事となった鹿実。先発の髙田投手は県大会同様制球に不安を抱えての投球でしたが、2回以降は代わった玉田捕手の好リードでなんとか持ち直します。厳しく突いたインコースの速球には球威があり、明豊打線も詰まらされるシーンもありました。彼の最大の武器はこの速球。球速こそ130キロ台ながらも、地を這うように伸びるこの球がしっかりコースに決まった時はそうは打たれません。

ただし現状は速球一本槍。変化球の精度が安定せず、緩急やボール球を振らせるような投球が難しい。それ故にコースを狙い過ぎカウントが悪くなり、甘く入った球を痛打される……県大会では見逃されていた彼の弱点に、明豊打線は容赦なく畳み掛けてきました。流石は全国4強です。明豊のバッターは全体的にポイントが近いため選球眼もよく、見逃すか?と思ったタイミングからバットが出て来るためバッテリーとしても対処が難しかったでしょう。

結局髙田投手は5回持たず降板となり、この春最短イニングでのノックアウトとなりました。

この結果を持って今足りない物が何か、彼自身が強く自覚したでしょう。試合後のコメントからも、それを窺うことはできました。

やはりストライク先行で攻める投球が出来なければ、相手打線に付け込まれてしまう。そしてこちらの反撃ムードに水を刺すことになる。相手打者が嫌がるような厳しい球をコンスタントに投げ込める真の制球力を身につける必要があります。勿論、一朝一夕とはいかないでしょう。根気よく自分の身体、心と向き合い、技術を向上させていかなければなりません。

四死球こそ多いですが、彼は元々制球の良い投手。この春得た経験を、必ず活かしてくれるでしょう。今はまだまだ投手として成長段階。小手先の投球に走らず、「強く厳しい球」を投げる事に注力して欲しいです。

 

その後鹿実は公式戦初登板のサウスポー森重投手やエース福留投手を投入しますが、結局明豊打線を止めきれず8回コールド負け。打線は見せ場を作っていただけに、やはり守備で相手の勢いを止めきれなかったのが痛かったですね。打ち合いでは相手い分がありますから。

鹿実の野球は守備で作った流れを攻撃に活かし、奪ったリードを活かして主導権を握る攻守一体型の野球。だからこそ、守備でリズムを作れないのは致命的です。その鍵を握るのは、マウンドに立ちプレーの最初にボールを触る投手です。この投手陣の立て直しが夏の連覇の最大の鍵になるのは間違いないでしょう。

初登板だった森重投手も、決して力のない投手ではありません。短いイニングではありましたが。髙田投手より制球は安定しており、しっかり自分の意図を持って投球をできているように思いました。まだまだ実戦機会が必要だとは思いますが、夏頃には戦力として計算できる投手になっている事でしょう。

そして私が誰よりも期待したいのは福留投手。彼には三年生エースとして、投手陣を、そしてチームを引っ張る存在になって欲しい。髙田投手、森重投手と下級生が力を付けてきてはいるものの、このチームのエースナンバーに相応しいのは彼だと私は思います。マウンドでの立ち姿や打者に立ち向かう姿勢、落ち着きなどは、やはりこれまでの経験と3年間揉まれてきたものを感じさせます。彼は入学当初は登板機会が少なく、新チーム最初の公式戦の市内新人戦でも登板機会を与えられませんでした。そこから這い上がり背番号1を勝ち取った男です。この試合でも大勢決した終盤まで投げる事が出来ず、駄目押しの得点を許した事はきっと悔しかったはず。その悔しさを是非とも次以降の登板で晴らして貰いたいです。

 

この九州大会で、鹿実野球部の現状の力が露わとなりました。ただ、あくまでも「現状」です。力が足りないのなら、今からつけてやればいい。まだ4月。7月の選手権までは充分時間があります。他のチーム以上に力をつければいいのです。

それが可能である事を、今回鹿実に立ち塞がった明豊は証明している。その事は前回エントリーでも触れさせていただきました。鹿実もそうなれると私は信じています。

だって、負けてから強くなるのが鹿実ですから。追い詰められてから底力を発揮する不屈不撓の魂の野球。それが発揮されるのは、きっとここから。

 

さあ、逆境の鹿実を見せてくれ。

 

 

これが全国レベル……鹿実野球部、九州大会初戦敗退

第144回九州地区高校野球大会

2回戦

鹿児島実4–11x明豊(大分推薦)

※8回コールド

鹿実 000 200 02=4 H 7  E0

明豊 300 030 23=11 H14 E5

【投手】

[鹿]高田、森重、福留–城下、玉田

[明]吉開、岡本、若杉–成田

【長打】

三=後藤(明)

二=吉木2、高田(鹿)、野邊2、後藤、釘崎(明)

【試合経過】

明豊が選抜ベスト4の力を見せつけ鹿実を圧倒。初回から鹿実バッテリーの立ち上がりを攻め立て3点を先制すると、中盤5回にも強打にエンドラン、スクイズを絡め3点。先発高田をノックアウトした。終盤も森重、福留の両左腕を攻め続け、8回コールド。

鹿実は攻撃面では4番吉木の二本の長打、高田の適時二塁打など見せ場を作ったが、投手陣が試合を作ることが出来なかった。

 

 

 

……分かっていたとは言え、やはり全国上位チームは甘く無かったですね。こういう結果になることも十分予想はしていましたが、地元開催でのコールド負けはやはり辛い……

休日という事もあり会場には鹿実の勝利を期待した多くのファンが来場してましたから、そこで鹿実野球の強さを示せなかった事は、ファンとしては素直に残念です。

 

しかし一方で、この結果を殊更に悲観する必要はないと思います。去年の今頃は県のベスト8で宿敵樟南相手にコールド負け。そこからの甲子園出場だった事を忘れてはいけません。更に言えば、今回立ち塞がった明豊も、2年前の九州大会は初戦コールド負けでした。相手も今回の鹿実と同じく、選抜で結果を残した福大大濠。そこからチームを鍛え直し、その年の夏は九州勢最高成績のベスト8に勝ち上がりました。以来明豊は九州高校野球を牽引する存在になっています。明豊を筆頭に大分県勢は三校全て初戦突破と目覚ましい活躍ですが、数年前の地元開催の九州大会では今回の鹿児島県勢と同じく全チーム初戦敗退を喫しています。そこから県を挙げての高校野球強化計画が始まり、その取り組みが結果となって現れ始めているのでしょう。

結果が出ていない時こそ、好調な時は見過ごしてしまいがちな己の弱さと向き合う良い機会。重要なのは、この敗北を次の糧にして立ち上がる事です。それが出来れば今回の大敗も、後から振り返った時に貴重な財産となっているはずーーー

過去にも言いましたが、敗北を知って強くなるのが鹿実野球です。過去の先輩たちも、敗北の悔しさを糧に強さと逞しさを手に入れていました。今年のチームだってそうです。今回は結果を残せませんでしたが、秋の新人戦の時と比べたら驚異的な成長を遂げています。その成長の歩みを知っているからこそ、今回の結果で躓く事は絶対にないと信じることができるんです。

まだ夏の県大会まで2ヶ月半。冬場と違い、その日々の成長を試合を通して見る事が出来る。ファンとしてこれほど楽しい季節はありません。

今後も私は、このチームの成長の過程を見続けて行こうと思います。

 

 

次回の記事では、今大会で改めて浮き彫りになった具体的な課題について触れるつもりです。

 

強豪校に立ち向かえ!〜九州大会組み合わせ決まる〜

今年は地元鹿児島開催となり、県勢4校が出場する九州大会。

その組み合わせが決まりました詳細は県高野連のページで確認できます。

http://www4.synapse.ne.jp/k-b/144kkumi.pdf

 

さて、鹿実の初戦の相手は明豊となりました。むう、いきなり強敵です……

ソフトバンク今宮健太選手の母校でもお馴染みの大分の強豪ですが、智弁和歌山時代選手として全国制覇を経験した川崎監督が就任してからはまた違った力強さを身につけてきた印象です。

一昨年秋はヤクルト濱田選手らの強打が全面に押し出された野球で夏ベスト8。この間の選抜では複数の好投手を駆使して、頂点まであと少しと迫るベスト4まで勝ち上がりました。もはや九州を代表する強豪と言ってもいいでしょう。鹿実も吉村投手らがいた一個上の代では、九州大会でコテンパンにやられています。当時のリベンジの機会であり、選抜上位チームを倒し名をあげる絶好のチャンスです。

 

……と言いたいところですが、そう上手く行かないのが高校野球です。

明豊は甲子園で結果を残したチームだけあって、非常に完成されたチーム。鹿実も秋からすれば実力をつけてきてますし、攻撃力、守備力は九州でも充分戦えるレベルまでに引き上げてきていると思います。ただ、現状投手陣はまだまだこれからといったところ。これから経験を積み。課題をクリアしていかなければならない段階です。

そう言う意味では、いきなり全国上位のチームと対戦できるのは間違いなくプラスになるはず。

とにかく今ある力全てをぶつけに行った上で、今後の成長に生かして欲しい。個人的には、結果以上にそういった部分を望んでいます。

 

勿論地元開催である以上、結果も求められます。球場に足を運ぶファンのほとんどは、県代表である鹿実の勝利を期待しています。その期待と声援を力に変えて戦って欲しい。ホーム開催の九州大会は秋も合わせて4年に1回。貴重な体験になるはず。

あの、いつもとは違う鴨池の声援を味わい、そして楽しんで戦いましょう!

 

新一年生の入部、そして県大会を欠場した椎原選手もおそらく復帰してくるでしょう。

応援するこちらとしても俄然楽しみになってまいりました。

県大会以上に素晴らしい戦い、そしてこの一戦の勝利を期待して、いつもと変わらぬ声援を贈りたいと思います。

 

キバレ、鹿実野球部!

 

 

掴んだ手応え、新たな課題。鹿実、準優勝で九州大会へ。

数日溜めたぶん、まとめてやります。

 

第144回九州地区高校野球 鹿児島県予選

▼4回戦

鹿実 002 063 =12 H17 E0

鹿工 000 000 =0 H3  E2

【投手】

[実]福留、松元、鶴田–玉田

[工]堀脇、政倉–木村

【長打】

二=叶、川口、藤村、玉田、折田(実)中野(工)

 

▼準々決勝

鹿実 301 010 220=9 H16 E0

枕崎 101 001 000=3 H8 E0

【投手】

[実]高田–玉田

[枕]小湊、迫、五十川、前野–福永

【長打】

三=藤村、折田(実)

二=叶、吉木(実)

 

▼準決勝

鹿実 102 010 04=8 H9 E0

鹿商 000 000 00=0 H4 E2

【投手】

[実]福留、松元–玉田、内田

[商]東、東村–北園

【長打】

二=吉木、折田(実)

 

▼決勝

鹿実 000 000 401=5 H10 E1

神村 012 012 01X =7 H9 E1

【投手】

[実]高田、福留–玉田

[神]田中瞬、桑原–松尾将

【長打】

三=田中天(神)

二=吉木、玉田(鹿)古川(神)

 

私が実際に観戦したのは準々決勝枕崎戦だけなので試合経過コメントは割愛させていただきます。

準優勝、そして九州大会出場、この結果以上に選手個々の、チーム全体としての成長を実感出来た事。それがこういう結果として現れた事が本当に嬉しいです。

全員が新チーム結成時と比べ、強く逞しくなってました。

大会序盤は当たりのなかった4番吉木選手も準決勝以降は主軸としての活躍を見せましたし、初戦で不安定な投球を見せた福留投手も4回戦以降無失点でエースとしての役割を果たしました。玉田選手の正捕手としての好守に亘る活躍や、新主将山添選手のリーダーシップ、新たに3番に座った川口選手の打撃も頼もしかったです。

そしてなにより、下級生ながら3試合先発を務めた高田投手。決して安定感のある投球とは言えませんが、彼がチームの戦力として欠かせない存在となった事は非常に大きいと私は思います。強いチームを作るためには下級生世代の活躍が必要不可欠ですし、大型化、スピード化が進む現代高校野球では彼のような投手を育てる事が上を目指すためには必要不可欠。

決して楽な展開ではなかった中で2試合完投させ、決勝も苦しい投球ながら8回途中まで高田投手を投げさせた宮下監督からは、なんとしても彼を一人前に育てあげようという強い意志を感じました。

そして高田投手も、プレッシャーの中良く投げたと思います。

ただ、神村との決勝では彼の課題が全て出た格好となりました。四死球9が示す通り、まだまだ投手として未完成。指にしっかりかかった時の速球の勢いは素晴らしいのですが、その球が安定して決まらない。ボール先行となり無駄なランナーを出し、ピンチを迎え痛打を食らう。その流れを食い止める事が出来ず、チームも勢いを削がれる形になりました。

とはいえこれは彼にとって非常に良い経験になったはずです。神村は県内屈指の強打を誇りますが、それだけでなく簡単にボール球を振らない選球眼や、揺さぶりをかけ投手にプレッシャーを与える強かさなど、総合的に優れたチームです。だからこその9四死球6失点に繋がったといえるでしょう。今抱えている課題をこれ以上ないほど痛感できたのではないでしょうか。こういうチームを倒さない限り、全国の舞台へは立てません。本人も今回の投球は悔しいでしょうし、これを必ず次へ繋げて欲しい。悔しさをバネにして強くなるのが鹿実野球ですから。

さらに成長した姿が観れる日を、いちファンとしても楽しみに待ちたいと思います。

攻撃面でも、この試合では序盤から中盤にかけて得点を奪う事が出来ませんでした。先制して主導権を握り、守備のリズムに繋げるのが鹿実の野球。それが一切発揮されず、反撃が遅くなってしまいました。この部分をさらに磨き上げて行って欲しいです。

神村の県内連勝記録を止められなかったことは残念ですが、間も無く九州大会が控えてます。全国クラスの強豪の実力を肌で感じられる貴重な機会ですし、経験を積んでさらなるチーム成長を期待したいところです。

まだまだ四月。ライバルチームはこれからさらに力をつけていくでしょうし、鹿実もそれに負けるわけにはいきません。これまで通り、一歩一歩着実に、鹿実らしく確かな歩みを進めていってください。

 

このチームは、絶対にまだまだ強くなる。私はそう確信しています。

 

逸材台頭!リベンジ成功!鹿実、宿敵撃破し4回戦進出!!!

震えました……

 

第144回九州地区高校野球大会 鹿児島県予選

3回戦

鹿実 011 100 110=5 H10 E1

城西 000 000 040=4 H5 E5

【投手】

[実]高田–玉田

[城]八方、小峯–田代翔

【長打】

二=笹山(実)、多和田(城)

 

【試合経過】

共に2年生右腕が先発のマウンドに上がった一戦。鹿実は城西先発八方を攻め立て、2回に8番玉田、3回に4番吉木のタイムリー、3回には2番笹山のスクイズで効果的に得点を重ねると、2番手小峯からもバックのミスに乗じて追加点を奪う終始優位な展開。

投げては公式戦初先発の高田が7回まで2安打無失点の好投。立ち上がりこそ制球に苦しむが、キレの良い速球と要所での強気の内角責めで城西打線を翻弄し、大一番での抜擢に応えた。

劣勢の城西も8回に意地を見せ、一挙4得点の猛攻で1点差に詰め寄るが反撃もここまで。

最終回の守りも3人で締めた鹿実が昨秋のリベンジマッチを制し4回戦にコマを進めた。

 

戦士の魂が躍動

いやあ、本当に素晴らしいゲームでした。

新チームから誰よりも指揮官の叱責を受け続けた4番の泥臭いタイムリー、ここぞで見せた内外野の好守、ジワジワと相手投手を追い詰める粘り強い攻め、そしてついに頭角を現した期待の逸材の好投………

一つ一つのプレーに、燃えるような魂を感じた気がしました。これこそが鹿実の野球です。これがあるから、私は鹿実ファンをやめられないんです。新チーム以降のベストゲームと言って良いでしょう。

 

さて、今日の試合を振り返るとします。

まずはなんと言っても先発高田投手でしょう。この起用には驚きました。宮下監督がここ数年、強豪校相手に下級生投手を先発させた例はほとんど無かったので。

立ち上がりの投球は正直言って不安を抱きました。簡単に四球を許すし、リズムも良くない。緊張なのかどこかフワフワした投球に感じました。ただ、そこをバックはよく盛りたてたと思います。今日は内外野とも好守が光りました。

高田投手はアウトを重ねる毎に躍動感が出てきて、中盤以降の立ち振る舞いは堂々たるものでしたね。

ピンチを迎えた時ほど良い球が行くところや、要所で内角を厳しく突く度胸。やはり期待されるだけのものがあります。

今後、相手チームに研究され対策を練られるのは間違いないはずで、これからが大変だとは思いますが、とりあえずは結果を残した事に対して自信を持って貰いたいものです。

 

そして、下級生の頑張りを支えた上級生野手陣の活躍も見事でした。

今日は初戦のような長打攻勢は影を潜めましたが、逆に鹿実らしい泥臭く粘り強い攻めを展開できたと思います。

個人的には4番吉木選手のタイムリーが嬉しかったですね。決して良い当たりではありませんでしたが、貴重な追加点をしぶといバッティングでもぎ取ってくれました。これで次戦以降も当たりが出てくれるといいですね。

終盤には苦しい場面も作りましたが、一点差に迫られた場面でも選手たちに焦りの表情は見えなかったです。ここに大きな成長を感じました。

それでも9回表に追加点を奪えず1点差のまま迎えた裏の守りは流石に「先頭出たらヤバイかも」と思いましたけどね(汗)

ただ、それを杞憂に終わらせてくれたのがショート折田くんのファインプレーでした。三遊間寄りのヒット性の当たりに飛びつき、素早く一塁に送球。あれで9割方勝利を確信しました。

とにかく全員で掴んだ勝利と言って良いでしょう。誰がヒーローではなく、全員がヒーローでした。

あの秋の敗戦から、厳しい冬を乗り越え、良くぞここまでのチームを作り上げてくれました。その成長の証を、これ以上ない結果で形にしてくれたと思います。

ここを負けたらNHK旗出場やシード入りも危ぶまれただけに、とにかくに勝てて良かった、本当に良かった……

 

………と、喜びに浸ってばかりはいられません。まだベスト16に入っただけですし、目標は夏の頂点ですから。まだまだ試練はつづきます。ただ、一応これで昨年の甲子園初戦敗退から続く悪い流れを断ち切れたのは間違いないはず。

ここからは前を見て進むだけ。これまで通り一歩一歩着実に成長していくことを、ファンとしては何より願います。このチームはまだまだ強くなれると確信していますから。

 

決して「谷間の世代」なんかじゃない。それを結果で証明し続けて欲しいです。

鹿実、コールド発進!!本年初戦観戦レポート

と、銘打ちましたが、昨日ほ実は球場に遅れて到着したので初回の攻撃だけ丸々見れていないです……

というか、こういうのは早めにアップしなきゃいけませんよね(−_−;)すみませんm(_ _)m

 

第144回九州地区高校野球大会 鹿児島県予選

2回戦

鹿   実 710 001 2=11 H17 E1

伊集院 000 012 0=3  H6   E2

【投手】

[鹿]福留–玉田

[伊]佐々木、小島颯、家村–瀬戸口

【長打】

本=玉田、川口(鹿)

二=川口、笹山、福留

 

【試合経過】鹿実がプレイボール直後から猛攻を仕掛け、序盤からゲームを支配する。

上位打線の連打と相手守備の失策、さらには9番玉田の三点本塁打も飛び出し一挙7点のビッグイニング。3回、4回、5回はチャンスを作りながら無得点に終わったが、中盤には川口のソロ本塁打、代打原口の適時打で突き放し、終わってみれば17安打11得点。

守りではエース福留が持ち前の制球が定らずやや苦しい投球となったものの、最終的には7回3失点で試合をまとめ、7回コールドで三回戦進出を決めた。

 

確かな成長

今年最初の公式戦を快勝で飾った鹿実ですが、もちろんここで浮かれる訳にはいきません。何せ、次の相手は去年秋に敗れた城西。間違いなく強敵ですし、何よりここで負けてしまうとNHK旗出場と夏のシード入りが絶望的になりますから、絶対に落とせない試合です。

ただ、甲子園帰りで準備不足な感があった秋と比べ、ひと冬越えてチームは着実に成長を遂げてるのは間違いありません。特に打線はスイングの力強さ、打球の鋭さが明らかに増していました。

ホームランのシーンこそ見逃してしまいましたが、9番の玉田選手は昨年と比べ見違えるほど振りが良くなっていました。このまま彼が恐怖の9番打者として活躍してくれたら、本当の意味で切れ目のない打線が形成出来そうです。また、捕手としても課題だった送球に強さ、正確さが備わってきた印象でした。ここ数年絶対的正捕手の不在が懸案事項だっただけに、彼にはこのままチームの信頼を勝ち取ってほしいところです。

そして誰よりも見張ったのが、この試合3番に座った川口選手。どんな球でも強く振って行く姿勢と、広角に打ち分けることの出来る懐の深さ、捕らえた打球の質。全ての面で群を抜いていました。

元々良い打者だとは思ってましたが、ここまでの打者に成長するとは思いませんでした。左打者が多く並ぶ鹿実にとっては、彼のような右の強打者は非常に貴重な戦力です。好投手が相手となる城西戦でもどんな活躍を見せてくれるか非常に楽しみですね。

 

次戦へ、そして今後の課題

一方、いくつかの課題や気になる部分もありました。

一つはチャンスを作ったうえできっちり返すという「鹿実らしい堅実な野球」の精度です。17安打に対して11点が示す通り、もっと得点できる試合でした。バントをリズムよく一発で決められないシーンもあり、この部分についてはまだまだ詰めていく必要がありそうです。

気になった点としては、エース福留投手の四死球の多さでしょうか。元々制球が持ち味の投手でしたが、この日は先頭打者への四球や押し出しの四球、そしてカウントが悪くなった際の甘い球を打たれる、一人の打者に対し多くの球数を要する……など、内容的には彼本来の投球にはほど遠いものでした。

フォームも秋からやや変わっており、まだまだ試行錯誤してる部分もあるのだと思います。

ただ、マウンド捌きは堂々としたものがあり、崩れかけても要所はキッチリ締めるところは流石エースといったところでした。この日の反省も踏まえ、次戦は更にいい投球を期待したいですね。

城西だけでなく、鹿児島には左の好打者を揃えるチームが多いので、甲子園出場のためにはサウスポーである福留投手の好投が必須。そのためにも相方である玉田捕手とのコンビネーションや、バックが守備で盛り立ていくことも大切です。

個々の力以上に、チーム全体の総合力で相手を凌駕する。そんなチームを作り上げて行ってほしいです。それこそが鹿実野球の目指すものですから。

 

昨日より今日、今日より明日

今年の3年生は下級生時代から試合経験を積んだ選手が少ない事、また新人戦や秋季大会で早期敗退した事から、一般的には低い評価を下されているのも事実です。実際昨年のエース吉村投手、不動の4番西選手といったタレントはいません。

それでも、私は秋から一貫してこのチームが弱いと思ったことは一度も有りません。

むしろ成長次第で昨年以上のチームになることも十分可能だとも思っているくらいです。

そのためにもまずは対戦相手以上に、まず己の内なるものに打ち克って欲しい。昨日の自分を超え、1日1日成長して行って、それを自分自身で評価できるか。その積み重ねが自信となってゆくものです。

秋と比べても、このチームは着実に前進しています。先日の試合では技術面や体力面はもちろん、チーム全体が半年前よりもエネルギッシュになっていると感じました。この歩みが今後も続いていけば、2年連続の甲子園も見えてくるはずです。

そのためにも、明日の城西戦は非常重要な一戦です。簡単に勝たせてくれる相手ではないのは間違いないですが、あの敗退から始まった長い冬の積み重ねを全てぶつけるつもりで戦って欲しいです。

秋のリベンジを期待して、私も心から声援を贈ろうと思います。

 

進め。前進せよ、鹿実野球部。この歩みを止めるな。