逆襲へ、夏連覇へ、最後のピース

前回エントリーこれが全国レベル……鹿実野球部、九州大会初戦敗退 - Bの魂の続きを。

しかし、あれだけ強かった明豊も次戦でコールド負けしてしまうとは……野球は難しいスポーツです。

では改めて試合を振り返ってみます。

 

まず先発メンバーを見て驚かされました。スタメンマスクが三年生正捕手の玉田選手ではなく、一年生の城下拡(入来中/串木野ドリームズ)選手。昨年U15日本代表に選出された逸材ではありますが、入学したての一年生をいきなり九州大会という大舞台で起用するとは、宮下監督も思い切ったなあと思ったものです。それだけ期待の高い選手ということなのでしょう。

ただし、結論から言えばこの大胆な起用が裏目にでた形となりました。初回の守りでいきなり3点を献上する形に。戦前私は「明豊が上手ではあるが、勝機もある」と見ていましたが、それは「序盤をロースコアに抑えた上で先取点を取れた場合に限る」というもの。そう言った意味では途中で点差こそ詰め寄ったものの、この初回の失点が試合を決めてしまったといえるかもしれません。

もちろん失点が全て城下選手の責任とは言えませんが、やはり入学一ヶ月しないうちに扇の要を任せるのは荷が重かったという印象でした。中学時代バッテリーだったはずの高田投手とは微妙に息が合っていなかったように感じましたし、ピンチを招いた場面で間を取るような場面も見られませんでした。最も、それを一年生に求めるのは酷な話。これもいい経験です。とはいえ捕球、送球動作やたった一打席のバッティングを見たら、とても一年生とは思えない高い能力を感じさせてくれました。順調に行けば、鹿実の看板を背負って立つプレーヤーになることは間違いないでしょう。今回はほろ苦いデビューとなってしまいましたが、今後の成長と活躍が楽しみです。

 

序盤から3点のビハインドを背負う事となった鹿実。先発の髙田投手は県大会同様制球に不安を抱えての投球でしたが、2回以降は代わった玉田捕手の好リードでなんとか持ち直します。厳しく突いたインコースの速球には球威があり、明豊打線も詰まらされるシーンもありました。彼の最大の武器はこの速球。球速こそ130キロ台ながらも、地を這うように伸びるこの球がしっかりコースに決まった時はそうは打たれません。

ただし現状は速球一本槍。変化球の精度が安定せず、緩急やボール球を振らせるような投球が難しい。それ故にコースを狙い過ぎカウントが悪くなり、甘く入った球を痛打される……県大会では見逃されていた彼の弱点に、明豊打線は容赦なく畳み掛けてきました。流石は全国4強です。明豊のバッターは全体的にポイントが近いため選球眼もよく、見逃すか?と思ったタイミングからバットが出て来るためバッテリーとしても対処が難しかったでしょう。

結局髙田投手は5回持たず降板となり、この春最短イニングでのノックアウトとなりました。

この結果を持って今足りない物が何か、彼自身が強く自覚したでしょう。試合後のコメントからも、それを窺うことはできました。

やはりストライク先行で攻める投球が出来なければ、相手打線に付け込まれてしまう。そしてこちらの反撃ムードに水を刺すことになる。相手打者が嫌がるような厳しい球をコンスタントに投げ込める真の制球力を身につける必要があります。勿論、一朝一夕とはいかないでしょう。根気よく自分の身体、心と向き合い、技術を向上させていかなければなりません。

四死球こそ多いですが、彼は元々制球の良い投手。この春得た経験を、必ず活かしてくれるでしょう。今はまだまだ投手として成長段階。小手先の投球に走らず、「強く厳しい球」を投げる事に注力して欲しいです。

 

その後鹿実は公式戦初登板のサウスポー森重投手やエース福留投手を投入しますが、結局明豊打線を止めきれず8回コールド負け。打線は見せ場を作っていただけに、やはり守備で相手の勢いを止めきれなかったのが痛かったですね。打ち合いでは相手い分がありますから。

鹿実の野球は守備で作った流れを攻撃に活かし、奪ったリードを活かして主導権を握る攻守一体型の野球。だからこそ、守備でリズムを作れないのは致命的です。その鍵を握るのは、マウンドに立ちプレーの最初にボールを触る投手です。この投手陣の立て直しが夏の連覇の最大の鍵になるのは間違いないでしょう。

初登板だった森重投手も、決して力のない投手ではありません。短いイニングではありましたが。髙田投手より制球は安定しており、しっかり自分の意図を持って投球をできているように思いました。まだまだ実戦機会が必要だとは思いますが、夏頃には戦力として計算できる投手になっている事でしょう。

そして私が誰よりも期待したいのは福留投手。彼には三年生エースとして、投手陣を、そしてチームを引っ張る存在になって欲しい。髙田投手、森重投手と下級生が力を付けてきてはいるものの、このチームのエースナンバーに相応しいのは彼だと私は思います。マウンドでの立ち姿や打者に立ち向かう姿勢、落ち着きなどは、やはりこれまでの経験と3年間揉まれてきたものを感じさせます。彼は入学当初は登板機会が少なく、新チーム最初の公式戦の市内新人戦でも登板機会を与えられませんでした。そこから這い上がり背番号1を勝ち取った男です。この試合でも大勢決した終盤まで投げる事が出来ず、駄目押しの得点を許した事はきっと悔しかったはず。その悔しさを是非とも次以降の登板で晴らして貰いたいです。

 

この九州大会で、鹿実野球部の現状の力が露わとなりました。ただ、あくまでも「現状」です。力が足りないのなら、今からつけてやればいい。まだ4月。7月の選手権までは充分時間があります。他のチーム以上に力をつければいいのです。

それが可能である事を、今回鹿実に立ち塞がった明豊は証明している。その事は前回エントリーでも触れさせていただきました。鹿実もそうなれると私は信じています。

だって、負けてから強くなるのが鹿実ですから。追い詰められてから底力を発揮する不屈不撓の魂の野球。それが発揮されるのは、きっとここから。

 

さあ、逆境の鹿実を見せてくれ。