ライバルの底力

第61回NHK旗争奪鹿児島県選抜野球大会

二回戦

鹿児島実 000 002 000 0=2 H8 E0

樟       南 022 000 000 0=4 H5 E0

鹿実】髙田、加島-玉田、城下

【樟南】吉田、城須-神山

本塁打=川口(鹿実)

二塁打=髙田、加島(鹿実)、菊池(樟南)

 

劣勢はね返せず…宿敵に連敗

鹿実の先発マウンドは今大会からエースナンバーを背負う2年生右腕・髙田。初回こそ三者凡退で切り抜けるものの、二回に一死満塁のピンチを迎えると押し出しの四球と犠牲フライで2点を献上。3回にも一死二三塁から四番小手川に2点タイムリーを打たれたところで降板。3回途中ノックアウトとなった。

2番手の2年生右腕・加島が試合を立て直すが、打線は樟南先発の1年生左腕・吉田の前に沈黙。ストライクゾーンを広く使う投球に翻弄された。

6回に3番川口のツーランホームランが飛び出すものの、その後は樟南2番手右腕・城須に力で押し切られ反撃及ばず。昨秋新人戦に引き続き、宿敵の前に苦杯を舐める形となった。

 

 

息を吹き返した宿敵

悔しい…とにかく悔しいですね。樟南相手に負けるのは…

安打数、選んだ四死球は全てこちらが上。にもかかわらず、2回と3回のたった2イニングのチャンスをしっかりモノにされ、こちらは主砲川口選手の一発の2点のみ。10残塁

力負けした感覚はありませんが、「うまくしてやられた」という感じ。久々に「樟南らしく立ち回られて負かされた」という感覚を思い出しました。

しかしーーーそうでなくては。そうであろうとも。それこそが我らが宿敵樟南です。

不振だと、結果が出ないと散々言われても、夏にはキッチリ合わせて来るのがこのチーム。肉を切らせて骨を断つような狡猾さ。こうでなければ伝統の一戦は面白くありません。

とはいえこれで新人戦に続き2連敗。前チームの対戦も含めると3連敗です。

無論、やられっぱなしではいられません。この敗戦は、絶対無駄にしてはいけません。次に対戦する事があれば、是非ともリベンジを果たしてほしいところですね。

というわけで、今日もポイントをまとめて試合を振り返りたいと思います。

 

 

正念場の背番号1

この試合の主導権を樟南に明け渡すきっかけになったのは、やはり序盤の4失点でしょう。スコアが動きにくいこのカードで、このビハインドは重すぎました。

今日先発のマウンドに上がったのは髙田投手。失礼を承知の上で少し厳しい事を言わせて頂くと、この日の投球は背番号1を背負う投手に相応しくありませんでした。

満塁のピンチを招いた時、8番の1年生投手相手にストレートの押し出し四球。その次の回も簡単にピンチを招いた後四番打者に痛恨の2点タイムリー…

ランナーを貯めた経緯に関しては不運な当たりや見方の拙いプレーもありましたが、それにしても易々と点を与え過ぎな印象は拭えませんでした。

これは私の個人的な印象ですが、まだまだマウンド上で相手打者とではなく自分自身と戦っているように感じます。髙田投手としては今日は序盤から思うように行かず、「試合に入りきる前に点を取られた」という感じだったかもしれません。しかしそれは一発勝負のトーナメントでは致命的。たった一球でそのチームの一年を賭けた勝負が終わってしまうのが、夏の選手権なのです。

打者にとって最も怖いのは、向かってくる投手です。己のボールを信じて思い切って腕を振られたら、甘いコースでも打ち損じてしまうもの。

今日の樟南の2人の投手は、まさにそういった投球をしてました。2人とも決して針の穴を通すような制球がある訳ではないものの、吉田投手は一年生ながらストライクゾーンを幅広く使い鹿実打線を翻弄しました。センターからリリーフした城須投手は、元々野手が本職の選手。しかし持ち前の地肩、身体能力の高さを生かし思い切って腕を振り、ボールの勢いで打者を押し込む投球。

それぞれが自分の持ち味、どういうボールを投げたら打者が嫌がるか?をよく理解した上でボールを放っているように見えました。

私は髙田投手の事を力のない投手だとは思ってません。素材は申し分なく、むしろ鹿実の命運を握る存在だと思っています。だからこそ、本当の意味で自分の武器は何か?打者が嫌がるボールは何か?という部分を磨いてほしい。それが出来れば、また一段上の投手に成長できるはずです。

今日の投球をしっかり反省した上で、夏マウンドに立つ時は常に打者と戦える投手になっていてほしいと願っています。

 

 

守備からリズムを作れず

無論、今日の敗戦は髙田投手だけの責任ではありません。僅か2点に抑えられ追いつくことすらできなかった打線、何よりノーエラーながら今日はバックの守りも拙いプレーが散見されました。

記録上はヒットになったものの、やや球際のプレーや挟殺プレーに甘さがあったように感じます。そういった意味で、今日負けたらノーシードの樟南とはこの試合にかける執念の差を見せつけられた形かもしれません。

今日途中交代を命じられたショート折田選手は、この春から再三好守でチームのピンチを救ってきました。難しいゴロやヒット性の打球にも追いつく広い守備範囲に、深い位置からでも強く正確な送球。その高い守備力を私は買っています。ですが課題を挙げるならば、球際の捕球技術だと思います。

今日許した内野安打、薩南工戦のエラーも決して見た目ほど簡単な打球ではありません。ただ、ああいった打球を事もなく処理する事で、初めて「守備からプレッシャーを与える」という事になるはず。もちろん本人も自覚はあるでしょう。

これは鹿実の先輩たちも通ってきた道です。甲子園で華麗なプレーを披露し注目を集め、現在は愛知大学リーグの名ショートとして君臨する長谷部大器選手(愛知大)も、レギュラーになった当初は捕球、送球ミスが非常に多い選手でした。ですが、誰よりも多くノックを受け続け、指導者にも食ってかかるような執念で守備を磨き続けた結果、あのような名手に成長したのです。

折田選手も能力は負けていないと私は感じています。

まだまだ夏本番まで時間はある。やれることは山ほどある。もう一度その技術を磨き直し、夏も正遊撃手としてチームを支えてくれる事を期待してます。

 

 

3学年の力を結束させよ

これから一カ月は人一人が実力を伸ばすチャンスがあります。一人一人個々のレベルアップなくして、強いチームは作れません。前のエントリーでも述べましたが、このチームは発展途上。だからこそ伸び代があるし、ベンチ入り、ベンチ外の選手にもチャンスがある。

幸い今年は3年生だけでなく、1年含め全学年が試合に出ています。

課題ばかり挙げましたが、新戦力も台頭してきているのも見逃せません。代打からの出場で結果を出した原口選手や、途中出場の文田選手、平選手など2年生の出番も増えてきましたし、今日の試合を立て直した加島投手の好投も夏に向けて大きな収穫です。何より正捕手争いに加わっている1年生城下選手も大きな存在になってきているはず。

こうなってくると3年生はうかうかしてられません。「最後の夏の3年生の意地」は、下からの突き上げがあって初めて発揮されるものだと思います。

OBが口を揃えて「最も辛かった」というのが夏前の一カ月。これをどう乗り越えるか。どう立ち向かうか。このチームの真価が試されます。

私は一貫して「今年のチームは谷間の世代」という周囲の評価に異を唱え続けてきました。決して弱いチームなんかじゃない。彼ら一人一人は力があるんだ、と。

だからこそ彼らには、それを自らの実力と努力で証明して見せてほしいと思います。

さあ、泣いても笑ってもも夏はすぐそこ。

 

 

泣こかい笑ろかい、泣こよかひっ跳べ!