栄光には届かずとも

悔しいですが、相手が上手でした。

 

第101回全国高等学校野球選手権鹿児島大会

4回戦

鹿児島実000000000=0H5 E0

国分中央101000000=2H7 E1

▽投手

鹿実】福留

【国中】今村

二塁打=吉木、笹山(実)、今村(国)

 

逆襲に散る

昨年王者の鹿実がベスト8を前に敗れた。

国分中央は初回、先頭井上が内野安打で出塁すると、二死一三塁の場面で果敢にも本盗を企図。これが鹿実バッテリーの意表を突く形となり1点先制。左投手福留、捕手にとって三塁走者が見えづらい右打者という状況を上手く利用した見事な奇襲だった。

鹿実は3回にも追加点を許し、打っては国分中央エース今村の力のある速球に、鋭く落ちる変化球という高低を生かした投球に翻弄される。

立ち直った福留も粘りの投球を見せ追加点を許さなかったが、結果的に序盤の2点が重くのしかかる試合となった。

最終回に2本の安打で同点のチャンスを作るも、最後まで本塁を踏むことができず5安打完封負け。

昨年秋鹿実にコールド負けを喫した国分中央が、リベンジを果たした。

 

 

 

「最初の山場」、登頂出来ず

今更後出しになりますが、私はこの4回戦が最も難しい試合になると予想していました。初戦、2戦目とコールドで勝ち上がってきたものの、その状態で好投手を擁するチームと対戦すると逆に苦しむ傾向にあります。

相手は秋コールドで倒した国分中央。当時の試合を観戦しレポート好発進‼︎鹿実野球部新チーム・秋初戦を振り返る - Bの魂も書いてますが、秋とは比較にならないほど力をつけてきている印象でした。

特にエース今村投手。当時はそこそこスピードのあるまとまった投手という印象でしたが、私は加治木工戦の映像を見て度肝を抜かれてしまいました。速球の威力、スピードが明らかに違う。県内でも上位クラスに相当する投手に成長している、これはかなり打ちあぐねるのでは…と。

残念ながら、その通りの展開となってしまいました。最終回を除き散発の安打しか放つ事ができず、鹿実の持ち味である繋がりある攻撃が最後まで発揮できない重苦しさ。

こうなると序盤の失点が重すぎました。

しかし、2点失ったあとは追加点を許さなかったバッテリーは責められません。ピンチでも冷静に間を取り、苦しい場面でも自分を信じて投げ抜く福留投手の姿はまさしくエースそのもの。彼がマウンドに最後まで立ち続けて負けたのなら、仕方ないのかなと思います。

やはり、点を取れなかったことが全てです。今年のチームは常に打線の力で勝ってきました。だから打って勝たなければいけません。いくら良い投手でも、好投手を攻略できないチームに頂点に立つ資格はないと私は思います。

ただ、この日の今村投手は素晴らしかった。高めには力のある速球、低めにはボールになる鋭い変化球、という「縦」を使った投球に鹿実打線は完全に機能を失ってました。15年夏の中京大中京・上野投手、16年選抜の智辯学園・村上投手、もっと前で言えば「世紀の番狂わせ」と言われた11年薩摩中央の崎山投手もそういったタイプの投手でした。

こう攻めたら鹿実打線は脆いという部分を、よく研究されていたと思います。認めざるを得ません。完敗です。

国分中央は昨年シードに選ばれながら3回戦敗退。主力の多くが卒業し、新チーム当初はベンチ入り20人に満たない少人数でのスタート。秋も鹿実がコールドで下し、春も初戦敗退と公式戦未勝利のまま夏を迎える状況でした。ただ、チームは組み合わせが決まった時「鹿実を倒す事」を目標に掲げたといいます。

負けたことは悔しいですが、鹿実を目標にして戦ってきたチームに敗れたなら、それは相手を讃えるしかないでしょう。

勝った国分中央には、鹿児島の高校野球の歴史を変えるような活躍を期待したいです。

 


「谷間」と言われ続けても…

新チーム結成当初から、今年の鹿実の評判はいいものではありませんでした。

昨年の甲子園メンバーはほとんどが最上級生。現3年生世代は1年生大会で大差のコールド負けを喫しており、「力のない世代」と言われていたのを私は知っております。

下級生には期待の高い選手も多かったため、「この学年には見切りをつけ、早く下級生をレギュラーに起用すべき」との声も少なからず耳にしました。

様々な意見があって然るべきですが、私はこのような考え方は率直に言って大嫌いです。

鹿実に入ってくる選手たちは、どの世代も甲子園に行きたくて門を叩いてきます。みんな、鹿実の野球をしたくて、鹿実のユニフォームを着て戦い一心で日々の練習に耐えてる。そんな彼らを捨て駒のように扱うことは、絶対にあってはなりません。

宮下監督もそう考えていると私は思います。かつて宮下監督は「鹿実の繋がりを、世代の違う先輩たちと同じ思いを共有できる関係を作っていくことが私の使命だ」と仰ってました。だから鹿実は他校以上に卒業後も部を気にかける先輩が多いのです。甲子園に行けなかったOBが、後輩たちが甲子園に行けるようにと本気で応援してくれるのが鹿実の伝統なんです。

鹿実には谷間の世代なんてない。彼らは令和、そして「高校野球の次の100年」を戦った記念すべき最初の世代。

世間は彼らの事を忘れていくでしょうが、私は絶対に忘れません。

 


どんなピンチでも常に自分の投球を貫く粘りのエース福留投手。

ベンチ外から一時期は正捕手まで上り詰め、後輩の髙田投手らを懸命にリードした玉田捕手。

積極的なバッティングと華麗な守備で、攻守ともにチームの中心的存在だったキャプテン山添選手。

パワフルなバッティングでチームの得点源となった椎原選手。

走攻守抜群のセンスが光っていた藤村選手。

広い守備範囲と強肩で何度もピンチを救った名ショート折田選手。

力強さと確実性を兼ね備えた頼れる主砲川口選手。

俊足を生かした外野守備に、ここぞの場面で活躍が光った笹山選手。

いぶし銀の活躍と勝負強いバッティングが持ち味の叶選手。

ギリギリのメンバー入りながら、最後に意地のヒットを放った岩元選手。

そして、1年生大会で8番打者デビューから、チームになくてはならない主力打者に成長した吉木選手。

 


彼らを筆頭にベンチ入りした全ての3年生。

一時期退部を悩みながらも、宮下監督の説得により「ベンチ外の主将」としてチームを支える決意をした河野主将と、裏方に回ったベンチ外の3年生。

 


私は彼らの事が大好きです。

このチームが皆笑って終われるような結果を期待して、この一年応援し続けてきました。

それはもう叶わないですが、晴れやかな表情で「後悔はない」とインタビューに堂々と答える山添選手を見て、私は少し救われた気がしました。

結果が全てといいます。結果でしか評価しない人が多いのも現実です。

この世代が望むような結果を残せなかったのは事実。しかし、彼らの成長の軌跡を一年間見守ることができたのは、私にとって大切な思い出であり財産です。立派に戦い、本当に逞しく育った。そこをファンとして、しっかり主張したいと思います。そのために、私はこのブログを運営してきたようなものですから。

 


最後に、感謝の言葉を述べさせていただこうと思います。

 


第101代鹿実野球部のみなさん。

この一年間勝手に応援させていただき、勝手に勝利と敗退に一喜一憂し、勝手に感動させてもらいました。

みなさんの頑張りが、私にとって少しだけ自分の人生を豊かにしてくれたような気がしてます。

今後の鹿実野球部はもちろんのこと、卒部、卒業、進学、就職していくみなさんの人生を応援してます。

高校野球では結果を出せませんでしたが、人生はこれからが長いです。高校野球で手に出来なかった栄光を、これからの人生で勝ち取れるよう心から祈っております。

 


3年間本当にお疲れ様でした!