王道

早いもので明後日日曜日の28日に鹿児島の夏の王者、鹿児島の甲子園出場校が決まります。鹿実の名がここに残っていない夏というのはなんとも寂しい気分になりますが、それが夏のトーナメントというもの。だからこそ、鹿実に勝った国分中央に甲子園を託したい気持ちで今日の準決勝を見ていました。

しかし残念ながら、国分中央は神村学園相手に敗退。先制されながらも焦りを感じさせない神村の試合運び、バッテリーの隙を見つけては果敢に盗塁を仕掛ける狡猾さ、派手さはなくてもミスの少ない内野守備。まさに試合巧者と言うに相応しい戦いぶりでしたね。

国分中央今村投手には疲労の影響もあったでしょうが、やはりチーム力には一枚も二枚も神村が上手だなと認めざるを得ない結果でした。

神村は個々のポテンシャルの高さで圧倒するチームのイメージが一般的ですが、その実はチーム単位でじわじわとあらゆる方向からプレッシャーをかけるその戦略性の高いスタイル。それこそが強さの秘訣だと私は考えております。

試合前から対戦の可能性のあるチームを徹底的に研究し尽くしまる裸にし、選手一人一人に相手の隙を突くためのプレーが落とし込まれている。それでいて、9イニング全てを有効に使った戦い方をしてくるーーー実際に鹿実も、春の県大会決勝で神村のしたたかな戦いぶりに圧倒されました。

当時制球難を抱える髙田投手に対し球数を放らせ四死球を選び、貯めた走者を確実に返していく。終盤こそ鹿実も追い上げたものの、見事にこちらの弱点を突く的確な攻めは脱帽するしかありませんでした。

しかし、その神村ですら九州大会は初戦敗退。鹿児島県勢としてもここ数年、甲子園で2勝目の壁を超えられないのが現状です。

県勢の選手権最後の2勝は宮下監督初陣の2008年鹿実、選抜を含めても野田投手や豊住主将を擁した2011年鹿実まで遡らなければなりません。

もしかしたら、今年の代表校がこの2勝の壁を超えてくれるかもしれませんが……この現状は、ここ10年で夏の代表を3回務めた鹿実にも責任があると認めなければなりません。

 


やはり私は、鹿実が甲子園で勝つ姿をもう一度見たい。

甲子園で一勝を挙げる事も、そもそも甲子園に行く事すらも、そう簡単な事ではないのは理解してます。

ですが、あえてファンなりのエゴを言わせていただくと、鹿実にはいつまでも鹿児島を代表する存在であってほしいのです。子供の頃私が憧れたような、強くカッコいい存在であってほしいのです。

 


なぜ先程神村の野球スタイルの話をしたかといえば、それは鹿実と対照的なチームだからです。相手に合わせ立ち回る神村のスタイルに対して、鹿実は「我々はかく戦う」と宣言するように自らの磨き上げた野球を愚直に相手チームにぶつけに行くスタイル。それ故にキッチリ弱点を突いてくるチームには苦戦する傾向にあります。だから「古い、時代遅れ」と言われるのも理解はしてます。

ですが、私はこの鹿実野球が大好きです。一点一点を泥臭く奪いに行き、奪ったリードをこれまた泥臭く守りきるという野球。「俺たちはこれだけのことをやってきた。だから負けるわけがない」という練習量に裏打ちされた自信溢れるプレー。昭和の時代から続く、「これぞ高校野球の王道」という野球。

合理的ではないかもしれない。論理的ではないかもしれない。それでも私はこの鹿実野球を見る度に、震えるほど感動を覚えるのです。

この新しい令和の新しい時代にも、鹿実のような古臭いスタイルのチームが一つはあってもいいのではないでしょうか。異なるスタイル、異なる信条を持つチーム同士の戦いにこそ、高校野球の感動は生まれるのですから。

 


もちろん、王道で勝ち進めるほど高校野球は簡単ではありません。なぜなら全国4000校で王者になれるのは僅か1校だからです。

王道で勝つためには、それに相応しい力を身につけなければなりません。投手、打者、守備、ベンチワーク……その全てで相手チームを圧倒しなければ、いとも簡単に牛耳られてしまいます。

だからこそ新チームの鹿実には王者になってほしい。ここ4年間手に入れていない秋の鹿児島王者、並びに神宮決勝まで勝ち残った2010年以来の九州王者を本気で目指して戦ってほしいと願います。

外野席から言うのは簡単かもしれませんが、この一年間は勝てない時期の苦しさを散々味わってきたことも私は理解してるつもりです。

皆さんの矜持を満たすためには、結果を残す他ないです。宮下監督の口癖である「勝てば全てが正解になる」の真意もここにあるのでしょう。

 


今大会決勝に勝ち進んだ神村は主力投手陣が二年生ばかりですし、鹿屋中央にもレギュラーに下級生がいます。れいめい、城西、樟南なども強敵として牙を剥いてくるはず。生半可な力では鹿児島を勝ち上がることも難しいでしょう。

必要になってくるのは真の力強さと凄味です。

 


新人戦まで一カ月、本番の秋季大会まで二カ月。

その間に、本物の王者に相応しい力を身につけていけるよう祈ってます。

 

 

 

第102代鹿実野球部の皆さん、王道を極めてください。

 

栄光には届かずとも

悔しいですが、相手が上手でした。

 

第101回全国高等学校野球選手権鹿児島大会

4回戦

鹿児島実000000000=0H5 E0

国分中央101000000=2H7 E1

▽投手

鹿実】福留

【国中】今村

二塁打=吉木、笹山(実)、今村(国)

 

逆襲に散る

昨年王者の鹿実がベスト8を前に敗れた。

国分中央は初回、先頭井上が内野安打で出塁すると、二死一三塁の場面で果敢にも本盗を企図。これが鹿実バッテリーの意表を突く形となり1点先制。左投手福留、捕手にとって三塁走者が見えづらい右打者という状況を上手く利用した見事な奇襲だった。

鹿実は3回にも追加点を許し、打っては国分中央エース今村の力のある速球に、鋭く落ちる変化球という高低を生かした投球に翻弄される。

立ち直った福留も粘りの投球を見せ追加点を許さなかったが、結果的に序盤の2点が重くのしかかる試合となった。

最終回に2本の安打で同点のチャンスを作るも、最後まで本塁を踏むことができず5安打完封負け。

昨年秋鹿実にコールド負けを喫した国分中央が、リベンジを果たした。

 

 

 

「最初の山場」、登頂出来ず

今更後出しになりますが、私はこの4回戦が最も難しい試合になると予想していました。初戦、2戦目とコールドで勝ち上がってきたものの、その状態で好投手を擁するチームと対戦すると逆に苦しむ傾向にあります。

相手は秋コールドで倒した国分中央。当時の試合を観戦しレポート好発進‼︎鹿実野球部新チーム・秋初戦を振り返る - Bの魂も書いてますが、秋とは比較にならないほど力をつけてきている印象でした。

特にエース今村投手。当時はそこそこスピードのあるまとまった投手という印象でしたが、私は加治木工戦の映像を見て度肝を抜かれてしまいました。速球の威力、スピードが明らかに違う。県内でも上位クラスに相当する投手に成長している、これはかなり打ちあぐねるのでは…と。

残念ながら、その通りの展開となってしまいました。最終回を除き散発の安打しか放つ事ができず、鹿実の持ち味である繋がりある攻撃が最後まで発揮できない重苦しさ。

こうなると序盤の失点が重すぎました。

しかし、2点失ったあとは追加点を許さなかったバッテリーは責められません。ピンチでも冷静に間を取り、苦しい場面でも自分を信じて投げ抜く福留投手の姿はまさしくエースそのもの。彼がマウンドに最後まで立ち続けて負けたのなら、仕方ないのかなと思います。

やはり、点を取れなかったことが全てです。今年のチームは常に打線の力で勝ってきました。だから打って勝たなければいけません。いくら良い投手でも、好投手を攻略できないチームに頂点に立つ資格はないと私は思います。

ただ、この日の今村投手は素晴らしかった。高めには力のある速球、低めにはボールになる鋭い変化球、という「縦」を使った投球に鹿実打線は完全に機能を失ってました。15年夏の中京大中京・上野投手、16年選抜の智辯学園・村上投手、もっと前で言えば「世紀の番狂わせ」と言われた11年薩摩中央の崎山投手もそういったタイプの投手でした。

こう攻めたら鹿実打線は脆いという部分を、よく研究されていたと思います。認めざるを得ません。完敗です。

国分中央は昨年シードに選ばれながら3回戦敗退。主力の多くが卒業し、新チーム当初はベンチ入り20人に満たない少人数でのスタート。秋も鹿実がコールドで下し、春も初戦敗退と公式戦未勝利のまま夏を迎える状況でした。ただ、チームは組み合わせが決まった時「鹿実を倒す事」を目標に掲げたといいます。

負けたことは悔しいですが、鹿実を目標にして戦ってきたチームに敗れたなら、それは相手を讃えるしかないでしょう。

勝った国分中央には、鹿児島の高校野球の歴史を変えるような活躍を期待したいです。

 


「谷間」と言われ続けても…

新チーム結成当初から、今年の鹿実の評判はいいものではありませんでした。

昨年の甲子園メンバーはほとんどが最上級生。現3年生世代は1年生大会で大差のコールド負けを喫しており、「力のない世代」と言われていたのを私は知っております。

下級生には期待の高い選手も多かったため、「この学年には見切りをつけ、早く下級生をレギュラーに起用すべき」との声も少なからず耳にしました。

様々な意見があって然るべきですが、私はこのような考え方は率直に言って大嫌いです。

鹿実に入ってくる選手たちは、どの世代も甲子園に行きたくて門を叩いてきます。みんな、鹿実の野球をしたくて、鹿実のユニフォームを着て戦い一心で日々の練習に耐えてる。そんな彼らを捨て駒のように扱うことは、絶対にあってはなりません。

宮下監督もそう考えていると私は思います。かつて宮下監督は「鹿実の繋がりを、世代の違う先輩たちと同じ思いを共有できる関係を作っていくことが私の使命だ」と仰ってました。だから鹿実は他校以上に卒業後も部を気にかける先輩が多いのです。甲子園に行けなかったOBが、後輩たちが甲子園に行けるようにと本気で応援してくれるのが鹿実の伝統なんです。

鹿実には谷間の世代なんてない。彼らは令和、そして「高校野球の次の100年」を戦った記念すべき最初の世代。

世間は彼らの事を忘れていくでしょうが、私は絶対に忘れません。

 


どんなピンチでも常に自分の投球を貫く粘りのエース福留投手。

ベンチ外から一時期は正捕手まで上り詰め、後輩の髙田投手らを懸命にリードした玉田捕手。

積極的なバッティングと華麗な守備で、攻守ともにチームの中心的存在だったキャプテン山添選手。

パワフルなバッティングでチームの得点源となった椎原選手。

走攻守抜群のセンスが光っていた藤村選手。

広い守備範囲と強肩で何度もピンチを救った名ショート折田選手。

力強さと確実性を兼ね備えた頼れる主砲川口選手。

俊足を生かした外野守備に、ここぞの場面で活躍が光った笹山選手。

いぶし銀の活躍と勝負強いバッティングが持ち味の叶選手。

ギリギリのメンバー入りながら、最後に意地のヒットを放った岩元選手。

そして、1年生大会で8番打者デビューから、チームになくてはならない主力打者に成長した吉木選手。

 


彼らを筆頭にベンチ入りした全ての3年生。

一時期退部を悩みながらも、宮下監督の説得により「ベンチ外の主将」としてチームを支える決意をした河野主将と、裏方に回ったベンチ外の3年生。

 


私は彼らの事が大好きです。

このチームが皆笑って終われるような結果を期待して、この一年応援し続けてきました。

それはもう叶わないですが、晴れやかな表情で「後悔はない」とインタビューに堂々と答える山添選手を見て、私は少し救われた気がしました。

結果が全てといいます。結果でしか評価しない人が多いのも現実です。

この世代が望むような結果を残せなかったのは事実。しかし、彼らの成長の軌跡を一年間見守ることができたのは、私にとって大切な思い出であり財産です。立派に戦い、本当に逞しく育った。そこをファンとして、しっかり主張したいと思います。そのために、私はこのブログを運営してきたようなものですから。

 


最後に、感謝の言葉を述べさせていただこうと思います。

 


第101代鹿実野球部のみなさん。

この一年間勝手に応援させていただき、勝手に勝利と敗退に一喜一憂し、勝手に感動させてもらいました。

みなさんの頑張りが、私にとって少しだけ自分の人生を豊かにしてくれたような気がしてます。

今後の鹿実野球部はもちろんのこと、卒部、卒業、進学、就職していくみなさんの人生を応援してます。

高校野球では結果を出せませんでしたが、人生はこれからが長いです。高校野球で手に出来なかった栄光を、これからの人生で勝ち取れるよう心から祈っております。

 


3年間本当にお疲れ様でした!

 

 

「エース不在」は全員の力でカバーせよ!

第101回全国高等学校野球選手権鹿児島大会

二回戦

鶴      翔00000=0  H2 E0

鹿児島実41204X=20 H16E0

▽投手

【鶴翔】山下、浦

鹿実】森重

 


終始圧倒

鹿実が地力の違いを見せつけた。

先発の2年生サウスポー森重は初回こそ安打を許すものの、公式戦初先発を思わせない堂々の投球。キレのある速球とスライダーで翻弄し、鶴翔打線に二塁を踏ませなかった。

打線は初回に川口のタイムリーを皮切りに4点を先制すると、2回には一挙12得点のビッグイニング。4回にも追加点を挙げ、終わってみれば16安打20得点。5回コールドで初戦突破を決めた。

 

アクシデント
という訳で、今日の試合に関しては特に言う事もないでしょう。バント失敗など細かなミスはありましたが、そこは次戦までに修正してくるはず。

次の試合も勝利を期待したいです……と言いたいところですが、一つ残念なニュースが。

春以降チームの主戦級として活躍してきた髙田隼之助投手が、今大会ベンチから外れる事になりました。メンバー表には背番号10となってますが、直前の登録変更で内野手の2年生原口選手と入れ替わったようです。

チームとしても戦力的に大きな痛手である事はもちろん、本人の気持ちを思うと無念でなりません。逆境からスタートしたこのチームの春の躍進を支えたのは、間違いなく彼の投球です。春の対城西リベンジマッチ、勝因の一つが彼の力投でした。もし彼の存在がいなければ、ノーシードという厳しい立場で今大会で挑む事を強いられたかもしれません。

NHK旗の試合記事では厳しい事を書いてしまいましたが、きっと夏はこの敗戦を糧に成長した姿を見せてくれると信じていただけに…ただただ残念です。

とはいえ、彼はまだ2年生。甲子園を目指すチャンスはまだ2回残されていますし、彼自身が持つ素質はその先の世界を目指せるもの。誰よりも悔しいのは髙田投手だと思いますが、再びグラウンドに立つ日を目指して前を向いて頑張ってほしいです。

そして、ベンチ入りのメンバーはこの一年共に主戦としてマウンドに立ち続けてきた髙田投手の思いも背負って戦ってくれる事でしょう。三年生たちは来年の鹿実を背負って立つであろう彼に対し、「上級生の背中」を示してくれるはずです。

髙田選手だけでなく、彼らはベンチ入り出来なかった部員も含めての「鹿実野球部」の代表を務める猛者たち。

今こそ、その結束が試される時です!

 

 

 

「秘密兵器」投入!救世主となるか?

この一年間苦しみ続けた投手陣。そんな中の髙田投手離脱は、繰り返しになりますが間違いなく痛手。

とはいえ、振り返ってばかりはいられません。夏の大会の幕はとうに上がっているのですから、目の前の戦いに集中しなければなりません。

いよいよやってきたこの夏の初戦。「開幕投手」に指名されたのは、髙田投手と同じ二年生のサウスポー森重温季投手でした。

密かに関係者の間では評判になっていた存在でしたが、公式戦では今日の試合が初先発。私も春の九州大会の明豊戦の2番手で出てきた記憶はありましたが、当時は彼が夏このような大役を任される存在になるとは思ってもみませんでした。

しかし今日の投球内容は、相手打線の力を差し引いたとしても大役を任されるに足る素晴らしいものでした。

テンポの良い投球間隔としなやかな投球フォームで、それでいて腕の振りも鋭いから打者としては予想以上に手元にボールが飛び込んで来る感覚になるでしょう。実際、今日は速球で多くの空振りを奪っていました。

さらに良かったのがスライダー。高校生でスライダーを武器にする投手は珍しくありませんが、そのほとんどは速球との目先を変える事や打たせて取る事を目的としたもの。しかし森重投手のスライダーの特異点は、途中までほとんど速球に近い軌道で来て、ベース近くで急激にスライドする事です。今日はその軌道に対処しきれず、多くの相手打者が速球のタイミングで空振りしてました。

高めにボールが浮くシーンも少なく四死球は0、安打は僅か2。

相手打線や試合展開を考慮する必要はあるでしょうが、個人的には次戦以降の登板が楽しみになる投球でしたね。

真価が問われるのはもっと先かもしれませんが、上位チームには左の強打者を揃えるチームが多いため、彼の台頭は戦力的に大きなプラスになるはずです。

経験値の少なさはたしかに不安材料ではありますが、ここまできたらそうも言ってられません。彼と加島投手という2年生が軸となる投手陣を、上級生野手が今日のようにしっかり援護していってほしいところです。

もちろん、エースナンバーを背負う三年生福留投手の奮起にも期待してます。

 


このチームはまだまだ未完成。ただ、この夏一戦一戦成長できる余地を残してます。

どんなに努力しても、結果が出るのは一瞬。だからこそ、この一年間の努力と自分たちの力を信じて戦ってほしい。

 

次の試合も勝利を期待してます!

 

偉大なる「昭和の頑固親父」

過去の記事で散々触れてきましたが、私が鹿実を好きになった最初のきっかけは1996年の選抜優勝をリアルタイムで見た事です。

子供の頃の私は「鹿児島に県勢初の優勝旗を持ってきた鹿実野球部」がとても誇らしく思っていて、私の父を始めとした野球好きの大人たちに何度も鹿実の話をした記憶があります。

その大人たちが決まって返してくる言葉がありました。

 


「いやあ、優勝したチームより、内之倉がいた頃のチームの方が強かったよ」

 


そう。後にプロ野球ダイエーに入団する内之倉隆志選手を中心とした1990年の鹿実は、九州大会無敗。全国の舞台では4番内之倉選手を中心に、どこからでも長打が打てる「桜島打線」で全国を席巻したチームです。

鹿児島を代表するスポーツライター政純一郎氏は、「鹿児島の高校野球史上初めて全国制覇を期待されたチーム」と言います。

私はこの当時は物心つくかつかないかの児童で、当然野球に興味を持つ遥か前。

リアルタイムで見る事が出来なかった「伝説のチーム」に対して、強い憧れを抱いたものです。

そして、現在鹿実の指揮を執るのが、その当時キャプテンとしてチームを牽引した宮下正一監督です。

今日は、宮下監督に対する私の想いをこの記事に綴らせていただこうと思います。

 

 

 

宮下監督が母校鹿実の監督に就任したのは、低迷期の2005年。当時の経緯については、こちらの記事freak - Bの魂でも触れさせて頂いてます。

当時から今に至るまで、宮下監督は周囲から様々な批判を浴び続けてきました。

就任直後は結果が出ない事、偉大な名将久保克之総監督との比較。

「やっぱり宮下じゃだめだ。久保先生の野球じゃないと」という言葉を球場で耳にする事も何度もありました。

しかしそれ以上に指摘されるのが、その指導方針。一般的な宮下監督の世間のイメージは「鬼のように厳しい人」「昔の指導者」でしょう。

宮下監督の指導は確かに厳しい。試合中もベンチで選手たちに強い口調で叱責する事は少なくありません。練習時間も馬鹿みたいに長く、それに対して全国の野球ファンから「あれでは選手が萎縮してしまう」「もっと楽しく野球をさせてあげないと、選手たちが可哀想だ」という主張が上がっている事も理解してます。

また、宮下監督の指導ポリシーである「勝てば全て正解になる。だから我々は勝たないといけない。勝って我々の野球を正解にしなければいけない」という主張に対して、反発を抱く人も少なくありません。「それは勝利至上主義ではないか。将来ある選手たちを潰す気か」と。

これらの一面だけ受け取ったら、宮下監督の事を「悪しき体育会系の風習を改善する気のない旧態依然の指導者」と評価する声があってもおかしくないでしょう。

 


しかし……これが果たして本当に宮下正一監督の実像なのでしょうか?

 


まず、先にお伝えしないといけないのは、私は個人的に宮下監督の事が好きであるという事。その人物像に魅力を感じている事。

そのためここからの話は私個人の贔屓目が多分に含まれる事になる訳ですが、それを踏まえた上で私の主張を述べさせてもらえば、「宮下監督は決して悪しき旧態依然の指導者ではない」という事です。

なぜなら、私は上記の批判が宮下監督の一面でしかない事を理解しているからです。

 


4年前鹿実が甲子園に出た際に、こんな出来事がありました。

大会前に現地に到着した際、地元の高校の野球部が練習場所としてグランドを提供してくれたのですが、グランドのベンチ内の黒板にはたくさんの歓迎のメッセージがありました。自分たちが甲子園に出る訳でもない上、貴重な練習環境を全く違う地域の代表校に定期するのに、そのチームを応援したり労ったりする心温まるメッセージ。

それに対して宮下監督が選手を集め「これが高校野球だ。高校球児は地域が違っても、野球という競技で繋がっている。だから甲子園に出る我々は、出られない彼らの思いも背負って戦わなければならない」と。

私はこの言葉に、強い感銘を受けました。

誰かの思いを背負って戦う---個人主義が叫ばれる現代では否定されがちな価値観。しかし、それこそが高校野球の魅力であり、良さである……改めてそう気づかされたような気がしました。自分たちが勝てば良いんじゃない。この人は、常に色んな人の想いを背負って戦う覚悟のある監督なんだと。こんな事を言える高校野球の指導者は、果たしでどれだけいるでしょうか。

 


また、今年の鹿実の卒業式の後の、昨年のエース吉村投手とのやりとりも深く印象に残っています。

吉村投手が宮下監督に感謝の言葉を伝えようとした時、「監督が僕をエースとして期待してくださったから…」と口にして、感極まり言葉に詰まった時の、呆れたように笑い飛ばす宮下監督の暖かい表情。鬼なんかじゃない。厳しさの中に、子供たちの成長を心の底から願う優しさがある「古き良き昭和の親父像」そのものでした。

感謝の言葉を言い切れずに泣きじゃくった吉村投手は、下級生の頃から期待されながらも、大事な試合で結果を残せず苦しんできました。周囲からも「エースは吉村でなく、ライバルの立本の方が相応しい」と言う声が上がる日々。そんな中、宮下監督だけは吉村投手の復活を最後まで信じ、チャンスを与え続けてきたのです。結果的に吉村投手を信じた宮下監督の判断が正しかったかどうかは、去年の夏の彼の活躍を見れば一目瞭然でしょう。彼は「親父」の期待に、見事に応えてくれました。

その事が頭をよぎり、私もこの光景を見てテレビの前で思わずもらい泣きしてしまった事も、余計な事ながら付け加えておきます。

 


鹿実野球部はよく「軍隊」と例えられます。規律正しいその集団行動や、過剰に礼儀正しい大声の挨拶を見れば、そういう表現をされても仕方ないでしょう。何より、宮下監督自身も「軍隊」を自称するくらいです。

しかし、私の目には「100人の大家族」のようなものに見えて仕方ないです。その家族の中心には、昭和の時代の様な厳しさと優しさが同居する頑固親父います。

この頑固親父がいて、この一家を作り上げた久保総監督が「優しいおじいちゃん」として見守る鹿実野球部一家。私はこの大家族の野球が大好きでたまりません。

だから負けて欲しくない。たった三年間だけども、ここで培われた結束と絆の強さは、全国どこに出しても一級品です。

 


こんなチームを作り上げてしまう監督は、全国どこを探してもなかなかいないでしょう。

だから、僕は宮下監督の作るチームに、ついつい過剰なほどに感情移入してしまうのです。

「勝てば全て正解になる」という主張も、決して勝利至上主義によるものではなく、周囲からのプレッシャーや期待、批判すらも全て正面から受け止める覚悟がそう言わせているのだと、私は思います。

 


古い価値観かもしれません。時代に合っていないかもしれません。

しかし、現代は多様性の時代。新しい価値観だけでなく、古い価値観も一緒に共存してこそ「多様性」は保たれるのではないでしょうか。

 


素晴らしく素敵な、強くて優しい昭和の頑固親父、宮下正一監督。その頑固親父が信じて鍛え上げた選手たちが、「萎縮して力を発揮できない」なんてヤワな連中な訳がありません。伊達に冬の裸練を、罵声飛び交う喧嘩ノックをこなしてはいませんから。

 


そんな鹿実一家の最後の夏が、いよいよ始まります。彼らは一高校生では経験できないような期待を背負って戦っています。そんな彼らを、私はついつい応援せずにはいられない。

結果はどうなるかは分かりませんが、彼らのこの一年の軌跡を私は誇りに思います。

青春の全てを捧げた日々が、勝利という名の正解に結びつきますように。

 


引き続き微力ながらも、一ファンとして声援を贈らせていただきます。

チーム河野

このブログをご覧頂いてる読者の皆様は、恐らくご視聴済みの方が多いでしょう。

昨日のKKBの高校野球コーナー「めざせ甲子園」では、鹿実が注目校としてピックアップされていました。

まだご覧になっていない方も、KKBのサイトから視聴することが可能です。

 

http://www.kkb.co.jp/mezase2019/syokai-mp4.php?start=20190702_1

 

私は試合を見るのと同じくらい、毎年このコーナーの鹿実を見るのが楽しみです。ネットがスマホやPCが無く、今ほど試合を見に行く訳でもなかった頃は、大会前に唯一鹿実の選手を知る事が出来たのがめざせ甲子園の注目校紹介でした。だから、「今年はどんなチームなのかな?」「今年はどんな選手がいるんだろう」とワクワクしながら見てました。

もちろん、情報収集が容易になり、自分で積極的に公式戦を見に行けるようになった今でも、それは変わりません。TVの取材を通して選手たちの声や表情、詳しいエピソードを知る事が出来るのは本当にありがたいです。

 


そして、河野「主将」のエピソードも、私は恥ずかしながら今回の取材映像で初めて知る事となりました。

河野選手が怪我をした事、そして試合に出れない事をどう受け入れていいか分からず退部も考えた事、そこから悩んだ末にチームに復帰した事までは話に聞いていました。その後はメンバー表では山添選手が主将と記載されていたため、てっきり主将の肩書きも無くなっていたものかと思っていましたが…

その後も主将として、ベンチ外からチームのまとめ役を務め続けていたとは知りませんでした。

怪我をして復帰の道を絶たれた絶望感、主将なのに試合に出れないもどかしさ。そんな気持ちを奥歯で嚙み殺し、彼はこのチームで出来る仕事を全うし続けてきたのです。何という男でしょう。これが18歳の少年の決断なのか、私が同じ立場なら同じ事ができるのか……

このエピソードを今の今まで知らなかった私ですが、この春一冬越してきた鹿実の選手たちの雰囲気は、昨年秋と比べて何処と無く霧が晴れたように明るくなっていたのを感じたのも事実です。

「もしかしたらチームの状態が上がっているのかも」

そしてそれは、県大会準優勝という形となって証明されました。

山添「副」主将も口にしていましたが、そこには河野主将の献身があったからこそといえるでしょう。

鹿実は伝統ある強豪校として、毎年甲子園を目指すチーム作りをしています。「良い選手がいるから、甲子園に行けて当たり前」なんて言われる事もありますが、彼らにとっては3年最後の夏は特別な大会。自らの青春を全て捧げて取り組んで来た事、この夏が終わると二度と同じチームで野球が出来なくなる仲間との絆…その全てをぶつけるのが最後の夏の大会なのです。

彼らはエリートではなく、叩き上げ。揉まれて這い上がるのが鹿実の伝統です。

今年のチームは特にそうでした。

谷間の世代と揶揄され、メンバーのほとんどが入れ替わった新チーム。新人戦ではライバル樟南相手に乱打戦の末の大逆転負け。

秋の大会も、鹿児島城西の小峯投手相手に力でねじ伏せられ完封負け。

あの当時を思えば、よくぞここまでチームを持ち直したものです。

そこには我々ファンは絶対知り得る事が出来ない彼らの努力と苦悩の日々があったはず。

 


私は彼らにこの一年間を、これまでの1日1日を、彼ら自身が「間違いじゃなかった」ど実感できる夏にしてほしいと願います。

あの苦しい日々も、全ては皆んなで笑うため。みんなで歓喜の涙を流すため。

そのためにここまでやってきたのだと。

 


グランドで戦う彼らには、スタンドに構える県内一強力な「援軍」がいます。彼らの球場にこだまする声援は、全国どこに出しても恥ずかしくありません。

その中には、試合に出られない主将の姿があります。

 


彼を漢に、鹿児島一のキャプテンに。

 


その思いが形となる事を、私は強く願ってます。

 

ライバルの底力

第61回NHK旗争奪鹿児島県選抜野球大会

二回戦

鹿児島実 000 002 000 0=2 H8 E0

樟       南 022 000 000 0=4 H5 E0

鹿実】髙田、加島-玉田、城下

【樟南】吉田、城須-神山

本塁打=川口(鹿実)

二塁打=髙田、加島(鹿実)、菊池(樟南)

 

劣勢はね返せず…宿敵に連敗

鹿実の先発マウンドは今大会からエースナンバーを背負う2年生右腕・髙田。初回こそ三者凡退で切り抜けるものの、二回に一死満塁のピンチを迎えると押し出しの四球と犠牲フライで2点を献上。3回にも一死二三塁から四番小手川に2点タイムリーを打たれたところで降板。3回途中ノックアウトとなった。

2番手の2年生右腕・加島が試合を立て直すが、打線は樟南先発の1年生左腕・吉田の前に沈黙。ストライクゾーンを広く使う投球に翻弄された。

6回に3番川口のツーランホームランが飛び出すものの、その後は樟南2番手右腕・城須に力で押し切られ反撃及ばず。昨秋新人戦に引き続き、宿敵の前に苦杯を舐める形となった。

 

 

息を吹き返した宿敵

悔しい…とにかく悔しいですね。樟南相手に負けるのは…

安打数、選んだ四死球は全てこちらが上。にもかかわらず、2回と3回のたった2イニングのチャンスをしっかりモノにされ、こちらは主砲川口選手の一発の2点のみ。10残塁

力負けした感覚はありませんが、「うまくしてやられた」という感じ。久々に「樟南らしく立ち回られて負かされた」という感覚を思い出しました。

しかしーーーそうでなくては。そうであろうとも。それこそが我らが宿敵樟南です。

不振だと、結果が出ないと散々言われても、夏にはキッチリ合わせて来るのがこのチーム。肉を切らせて骨を断つような狡猾さ。こうでなければ伝統の一戦は面白くありません。

とはいえこれで新人戦に続き2連敗。前チームの対戦も含めると3連敗です。

無論、やられっぱなしではいられません。この敗戦は、絶対無駄にしてはいけません。次に対戦する事があれば、是非ともリベンジを果たしてほしいところですね。

というわけで、今日もポイントをまとめて試合を振り返りたいと思います。

 

 

正念場の背番号1

この試合の主導権を樟南に明け渡すきっかけになったのは、やはり序盤の4失点でしょう。スコアが動きにくいこのカードで、このビハインドは重すぎました。

今日先発のマウンドに上がったのは髙田投手。失礼を承知の上で少し厳しい事を言わせて頂くと、この日の投球は背番号1を背負う投手に相応しくありませんでした。

満塁のピンチを招いた時、8番の1年生投手相手にストレートの押し出し四球。その次の回も簡単にピンチを招いた後四番打者に痛恨の2点タイムリー…

ランナーを貯めた経緯に関しては不運な当たりや見方の拙いプレーもありましたが、それにしても易々と点を与え過ぎな印象は拭えませんでした。

これは私の個人的な印象ですが、まだまだマウンド上で相手打者とではなく自分自身と戦っているように感じます。髙田投手としては今日は序盤から思うように行かず、「試合に入りきる前に点を取られた」という感じだったかもしれません。しかしそれは一発勝負のトーナメントでは致命的。たった一球でそのチームの一年を賭けた勝負が終わってしまうのが、夏の選手権なのです。

打者にとって最も怖いのは、向かってくる投手です。己のボールを信じて思い切って腕を振られたら、甘いコースでも打ち損じてしまうもの。

今日の樟南の2人の投手は、まさにそういった投球をしてました。2人とも決して針の穴を通すような制球がある訳ではないものの、吉田投手は一年生ながらストライクゾーンを幅広く使い鹿実打線を翻弄しました。センターからリリーフした城須投手は、元々野手が本職の選手。しかし持ち前の地肩、身体能力の高さを生かし思い切って腕を振り、ボールの勢いで打者を押し込む投球。

それぞれが自分の持ち味、どういうボールを投げたら打者が嫌がるか?をよく理解した上でボールを放っているように見えました。

私は髙田投手の事を力のない投手だとは思ってません。素材は申し分なく、むしろ鹿実の命運を握る存在だと思っています。だからこそ、本当の意味で自分の武器は何か?打者が嫌がるボールは何か?という部分を磨いてほしい。それが出来れば、また一段上の投手に成長できるはずです。

今日の投球をしっかり反省した上で、夏マウンドに立つ時は常に打者と戦える投手になっていてほしいと願っています。

 

 

守備からリズムを作れず

無論、今日の敗戦は髙田投手だけの責任ではありません。僅か2点に抑えられ追いつくことすらできなかった打線、何よりノーエラーながら今日はバックの守りも拙いプレーが散見されました。

記録上はヒットになったものの、やや球際のプレーや挟殺プレーに甘さがあったように感じます。そういった意味で、今日負けたらノーシードの樟南とはこの試合にかける執念の差を見せつけられた形かもしれません。

今日途中交代を命じられたショート折田選手は、この春から再三好守でチームのピンチを救ってきました。難しいゴロやヒット性の打球にも追いつく広い守備範囲に、深い位置からでも強く正確な送球。その高い守備力を私は買っています。ですが課題を挙げるならば、球際の捕球技術だと思います。

今日許した内野安打、薩南工戦のエラーも決して見た目ほど簡単な打球ではありません。ただ、ああいった打球を事もなく処理する事で、初めて「守備からプレッシャーを与える」という事になるはず。もちろん本人も自覚はあるでしょう。

これは鹿実の先輩たちも通ってきた道です。甲子園で華麗なプレーを披露し注目を集め、現在は愛知大学リーグの名ショートとして君臨する長谷部大器選手(愛知大)も、レギュラーになった当初は捕球、送球ミスが非常に多い選手でした。ですが、誰よりも多くノックを受け続け、指導者にも食ってかかるような執念で守備を磨き続けた結果、あのような名手に成長したのです。

折田選手も能力は負けていないと私は感じています。

まだまだ夏本番まで時間はある。やれることは山ほどある。もう一度その技術を磨き直し、夏も正遊撃手としてチームを支えてくれる事を期待してます。

 

 

3学年の力を結束させよ

これから一カ月は人一人が実力を伸ばすチャンスがあります。一人一人個々のレベルアップなくして、強いチームは作れません。前のエントリーでも述べましたが、このチームは発展途上。だからこそ伸び代があるし、ベンチ入り、ベンチ外の選手にもチャンスがある。

幸い今年は3年生だけでなく、1年含め全学年が試合に出ています。

課題ばかり挙げましたが、新戦力も台頭してきているのも見逃せません。代打からの出場で結果を出した原口選手や、途中出場の文田選手、平選手など2年生の出番も増えてきましたし、今日の試合を立て直した加島投手の好投も夏に向けて大きな収穫です。何より正捕手争いに加わっている1年生城下選手も大きな存在になってきているはず。

こうなってくると3年生はうかうかしてられません。「最後の夏の3年生の意地」は、下からの突き上げがあって初めて発揮されるものだと思います。

OBが口を揃えて「最も辛かった」というのが夏前の一カ月。これをどう乗り越えるか。どう立ち向かうか。このチームの真価が試されます。

私は一貫して「今年のチームは谷間の世代」という周囲の評価に異を唱え続けてきました。決して弱いチームなんかじゃない。彼ら一人一人は力があるんだ、と。

だからこそ彼らには、それを自らの実力と努力で証明して見せてほしいと思います。

さあ、泣いても笑ってもも夏はすぐそこ。

 

 

泣こかい笑ろかい、泣こよかひっ跳べ!

 

苦しみながらの勝利

第61回NHK旗争奪鹿児島県選抜野球大会

二回戦

鹿児島実 000 000 100 2=3 H8 E1

薩南工業 010 000 000 0=1 H7 E0

鹿実】福留-城下、玉田

【薩南】永江、土本-竹内

三塁打=川口(鹿実)

二塁打=吉木、山添(鹿実)

 


粘り勝ち

鹿実は2回に薩南工に先取点を奪われると、その後も追加点こそ許さなかったがピンチを迎えては凌ぐという苦しい展開。打線も薩南工先発の右アンダーハンド永江の前にゴロの山を築き、6回まで僅か1安打無得点。

劣勢で迎えた終盤7回、この日2番に座った椎原が先頭打者として出塁すると、4番吉木、途中出場の笹山が続き同点に。

その後チャンスを作るも勝ち越せず迎えた9回裏、先発左腕福留が二死満塁のピンチを招くも、辛くも凌ぎ切り延長戦へ。

延長10回表、先頭打者はここまで粘りの投球の福留。薩南工2番手土本から四球を勝ち取ると、犠打で進塁後キャプテン山添のセンター頭上を越える二塁打で勝ち越しのホームを踏む。その後も3番川口の三塁打で追加点を挙げ、鹿実が2点勝ち越す。

裏の守りを凌ぎ切り、ベスト8進出を決めた。

 

 

 

もう試合経過を書いてて疲れます(笑)なんとも息苦しくなるような試合でしたね……ここまで苦戦するとは、正直予想外でした。

やはり薩南工は毎年いいチームを作ってきましたね。試合中に一昨年秋の準々決勝を思い出しました。あの時も薩南工が相手で、右の本格派と左の技巧派のめまぐるしい継投の前に9回まで点が奪えず延長に縺れ込むという展開でした。

この日は序盤で先制も許しましたし、打線も中盤まで完璧に抑えられましたから「もしかして今日はこのまま…」と負けを覚悟したものです。

ただ、こういう劣勢をひっくり返す試合は貴重な経験になるはずですし、今後を考えると間違いなくプラスになるはず。エラーこそ1つ出ましたが、今日も守備から崩れるような兆候はありませんでした。粘り強く戦えるのがこのチームの強みですしね。

それでは、ポイントを絞って試合を振り返ってみようと思います。

 


「エース」の背中と、支えるバック

この試合先発の福留投手は春まで背番号1を背負っていたものの、今大会の背番号は「10」。エースナンバーを後輩の髙田投手に譲る形に。

たしかに、春の県大会から重要な試合での登板を任せるのはどちらかといえば髙田投手でしたし、登板機会も少なくなってきたことも事実。まだまだ不安定ながらも180センチを超える長身から140キロ近い速球を放る髙田投手と見比べると、福留投手には絶対的な球種がありません。それ故に厳しくコースを突いた結果四球が増え、ランナーを背負って甘くなった球を打たれるという場面にも何度か出くわしました。

ただ、私は今年のチームの投手陣を引っ張るのは彼だと思っています。

それは以前も述べたように、マウンド上での姿勢。先頭打者に四球を許したり、軽々と安打を許す事も少なくありませんが、そこからピンチを迎えても動揺を見せる事なく自分の投球を貫く芯の強さ。この試合ではそんな彼の真骨頂を見せつけられたような気がします。

四球が多いのも、決して「逃げ」の姿勢からではありません。むしろこの日は「四球を嫌って中途半端なボールを投げるくらいなら、自分らしく厳しいボールで勝負する」という信念すら感じました。これこそエースの姿ではないでしょうか。

そんな「エース」の粘りの投球に、バックもしっかり応えます。

先程も述べたように、この日は守備で崩れるような兆候が全くありませんでした。

山添くん、折田くんの二遊間は相変わらずの安定感で、難しい併殺を再三成功させてましたね。

球威で圧倒するタイプの投手ではないだけに、バックの好守は心強いはず。

この「粘りの守り」が終盤の逆転劇を生んだと言えるでしょう。

私が何度も主張しているように、鹿実の野球は好守一体型の野球。守りで作った流れを攻撃につなげる、というもの。

鹿実らしく戦って勝った。そう言える試合ではないでしょうか。

チームの成長ぶりに、私は手応えを感じずにはいられません。

 


新オーダーの成果は?スタメン争い激化!

今日の試合で印象的だったのがスターティングオーダーです。今までとは全く違う試みを感じ取る事が出来ました。

1番山添選手、3番川口選手、4番吉木選手…この三人は最早不動のレギュラーと言えるでしょうが、驚いたのは2番に座った椎原選手。一年生大会では吉木選手を差し置いて四番に座っていたように、元々この世代の主軸打者候補として期待された選手です。

秋も3番を任されていましたが、春は故障からメンバー外となり、その間に折田選手と藤村選手が台頭しポジションを奪われる形に。

今大会も二桁背番号でしたが、小技や足を生かすタイプの選手ではない彼を2番に据えてくるとは…プロ野球でも今「攻撃的2番打者」がトレンドになりつつありますが、このオーダーを継続するかどうか、次戦も注目したいです。

今日はその椎原選手のヒットが、反撃の口火となりました。それまでゴロを「打たされていた」アンダースロー独特の球筋を、引っ掛ける事なく綺麗にセンター前へ運ぶバッティング。まさに「低く鋭い打球」のスローガンそのものでした。

椎原選手がファーストを守った関係で、4番の吉木選手はライトに。ただ、元々は外野も任されていた選手なので動きに違和感もなく、鋭い送球で走者を補殺する場面もありました。今後はこういった起用方法も増えてくるかもしれません。

ただ、今日の同点タイムリーを放ったのは、新オーダーの割を食ってスタメンを外された途中出場の笹山選手でした。アンダースロー攻略のお手本のような流し打ちでしたね。彼もここまで守ってきたセンターのレギュラーの座を、そう易々と手放したくないはず。

春の大会勝負強い打撃でチームを支えた5番の叶選手も、決してレギュラー安泰の立場とは言えなくなってきました。

また、代走から途中出場した2年生の平選手も1安打を放ち、徐々にですが存在感を放ってきています。走攻守とも高い能力を備えており、先輩を差し置いてスタメンに起用される日も近いかもしれません。

激しい競争は、チームを強くするためには必要不可欠です。本人たちは必死でしょうが、この状況はチームとしては歓迎すべきでしょう。

これを乗り越えてグランドに立つ者に、初めてチームを背負って戦う権利が与えられるのです。

まだまだこのチームは発展途上、しかしだからこそ強くなる余地がある。まだまだその過程を見続けていたいと、私は強く願っています。

 

 

 

仕切り直し、伝統の一戦

新チーム最初の公式戦の昨秋市内新人戦。樟南との「伝統の一戦」がいきなり実現しました。

とはいえ、その試合内容は「伝統」という格式とは程遠いお粗末なもの。両軍合計7人の投手をつぎ込み、合わせて23点の乱打戦。最終回鹿実が6点をリードするも、樟南が一挙7点の猛攻でサヨナラ勝ちするという、とにかく最後まで落ち着きのない展開でした。

この頃から両チームとも、「柱になる投手がいない」と囁かれるようになりました。

鹿実は当時登板しなかった福留投手や髙田投手が台頭し、なんとか夏のシード権が確保できるところまで持ち直すことができましたが、樟南は一年通してここに苦しみ続けた印象です。

しかし、今大会2試合を勝ち進んできたその戦いぶりを見ると、おそらくここに来てチーム状態が上がってきたのでしょう。まだまだ例年ほどの安定感は無いかもしれませんが、れいめい戦で好リリーフを見せた一年生の西田投手や、本職は野手ながらも鹿屋農戦の終盤に登板し追撃を阻んだ城須選手など、新戦力が台頭してきています。

やはり伝統校。結果が出ずに苦しんでもキッチリ夏に合わせてくるのは流石です。

樟南はポイント的に今大会で決勝まで勝ち進まないとシード権が厳しい状況。それだけに鹿実戦も全力で来るでしょう。鹿実もそれに負けない気迫で戦ってほしい。本気の樟南に勝つ事は、これ以上ない経験値になるはずです。

何より、九州大会以降負け続きの流れを変えてほしい。夏のシード獲得以上に、どういうチーム状態で夏を迎えるかの方が非常に重要なはず。

この強敵に勝って、良い流れを呼び込んでほしいです。

 


簡単な相手でない事は間違いありませんが、次戦も勝利を期待してます!