第105回全国高校野球選手権 鹿児島大会
鹿児島実業野球部、今大会戦績
1回戦
鹿児島実531 55=19H16 E0
3校連合000 00=0H1 E6
【投ー捕】
鹿実:井上ー溝口、新改
連合:有馬、芦谷原ー志水、関
※5回コールド
※連合は鹿児島第一、霧島、串良商
2回戦
鹿児島実000 030 120 2=8H10 E4
鹿児島商001 001 022 1=7H16 E2
【投ー捕】
鹿実:西、菅田ー溝口、新改
鹿商:坂口、江口、稲森ー上妻
※延長10回タイブレーク
3回戦
鹿児島実012 040 1=8 H13 E0
池 田000 000 0=0 H6 E1
【投ー捕】
鹿実:菅田ー溝口、新改、木村
池田:久保、西村元ー西村元、浜村
※7回コールド
準々決勝
鹿児島実010 040 000=5 H9 E1
樟 南010 000 000=1 H4 E1
【投ー捕】
鹿実:井上、西ー溝口
樟南:濵田、新藤ー福元、南
◆御三家対決を制し4強入り!苦しみながらも光った勝負強さ
7月の頭に開幕した鹿児島県大会ももう終盤。鹿実は4強まで勝ち進む事ができました。
1回戦と3回戦はコールド勝ちでしたが、2回戦と準々決勝では鹿児島商、樟南という強豪と対戦し、苦戦を強いられてきています。
鹿商、樟南といえば、鹿実とともに昭和から平成にかけ長年鹿児島の高校野球をリードしてきた鹿児島高校野球「御三家」の一角。樟南とは一昨年も決勝で甲子園を賭けて戦ったように近年もライバル関係を維持していますが、今大会二回戦での鹿商との対戦は夏の大会において実に19年ぶり。大会優勝候補に挙がる事が当然だった当時と比べると、今の鹿商の立ち位置はだいぶ様変わりした印象です。
ただし、今年の鹿商の実力は決して「衰えた古豪」ではありませんでした。中でも打線は4安打を放った3番上妻選手を筆頭に上位から下位まで振れており、鹿商のチーム安打16本は鹿実を大きく上回るもの。終盤は常に鹿商に主導権を握られていた展開で、対する鹿実は守備陣が焦りからか計4失策を献上するなどらしくないプレーも目立ちました。
本来であれば完璧な負け試合。しかし、こういった展開でも負ける事なく勝ちきった。負けたら終わりの夏のトーナメントでは、そこに最大の価値があります。
一打サヨナラ負けの場面で魅せた木村選手のファインプレーや、タイブレークにもつれた延長戦での4番濵嵜選手のバント、そのチャンスをものにした平山主将の一振り。これらのプレーには勝利への渇望、執念が滲み出ていました。不恰好でも、泥まみれでも、最後には勝利を掴み取る。ここには鹿実「らしさ」も感じ取れました。こういった苦戦を経験する事で、チームは大きく成長を遂げたはずです。
そして準々決勝樟南戦。樟南は春、NHK旗と決勝まで勝ち進んでおり、今季の実績では鹿実より上。夏の直接対決でも過去3連敗中の天敵でもあります。
ただ、この日の鹿実メンバーからは画面越しにも「樟南には負けたくない」という気迫が溢れているように見えました。
ここまで当たりのなかった主砲植戸選手の二塁打に、今大会初スタメンの小村選手の先制タイムリー。この日も試合を決める一打を放つ平山主将の勝負強さ。丸山選手、満留選手の2年生二遊間コンビの必死の守り。
これらのプレーは、樟南と言う過去多くの名勝負を繰り広げて来た好敵手が相手だからこそ引き出されたものでしょう。
樟南も例年のごとく守りが鍛えられたしぶといチームでした。西投手の好リリーフがなければ、もしかしたら結果が逆だったかもしれません。
攻守の中心選手である4番ショート坂口選手、終盤4イニングで1点も取る事ができなかった新藤投手はいずれも2年生。彼らが秋以降の中心になると思えば、樟南とのライバル関係は来年も継続していきそうです。
宿敵を倒してたどり着いた準決勝。これからの相手はより強力になっていきますが、鹿実は今大会「御三家」最後の砦。そして御三家同士の戦いを制してここにいるのです。鹿商と樟南の主将はそれぞれ悔しさを滲ませながら「最後の相手が鹿実で良かった」と口にしていました。
ならば、鹿実ナインは彼らの思いに応えなければなりません。
さあ見せろ、御三家の意地を。
◆最後の夏、今度こそ「3強」へのリベンジを
鹿実が御三家の最後の砦なら、同じくベスト4に残った神村学園、鹿児島城西、鹿屋中央は今季の鹿児島高校野球における「3強」と言えるでしょう。私は昨年の新チーム結成直前、今年の鹿児島は上記3校を中心とした勢力図になると見ていました。2年生時からのレギュラー選手が多く、それぞれ県内有数の実力の選手を抱えている事からそう見立てていましたが、秋、春、NHK旗といったここまでの公式戦の結果、そして今大会の勝ち残りを見れば、その見立ては間違っていなかったと実感します。
ただ、私はあくまで鹿実野球部を応援する立場。鹿実はここまでの主要3大会ではまさにこの「3強」にそれぞれ悔しい思いをさせられてきました。特に秋の大会で城西にコールド負けを喫した時は、「このままでは厳しいかもしれない」と思ったのが正直なところです。今年のチームはその敗退から3強との差を地道に埋めてきて、ついにこの夏の舞台で甲子園が懸かった挑戦権を手に入れてくれました。ここまでの成長度合いは誇るべきものです。
まだ現時点でも3強の方が戦力的には上手かもしれませんが、それでも劣勢や困難を魂とド根性でひっくり返すのが鹿実野球。今年のメンバーもその真髄を魅せてくれるはずだと、私は信じています。
次戦準決勝は県内二冠の神村学園。神村にとっても鹿実は2年連続で敗れた宿敵ですし、きっと「これ以上負ける訳にはいかない」と闘志を燃やしてくる事でしょう。挑む立場の強さは、私もよく知っています。
上記の精神的な部分に加え、戦術的な部分でも今年の神村は一味違います。例年通りの強打と強力投手陣に加え、例年以上に細かい野球を得意としている印象です。一筋縄ではいかないチームなのは間違いありません。
勝利の鍵になるのは、やはり神村の強力投手陣を打線がどう攻略するか。左の黒木投手と、右の松永投手はいずれも140km/hをゆうに超える本格派。打ち崩すのは容易ではありませんが、鹿実サイドとしては序盤から優位に試合を進めなるべく2年生投手たちを楽にしたいところです。相手もこちらの対策は練ってくるでしょうが、今の打線なら決して不可能ではないと思います。
結果はどうなるかはわかりません。一つ言える事は、互いに譲れぬ思いと理由がある以上、このカードが今年も白熱した一戦になる事だけは間違いないでしょう。
痺れる勝負を、魅せてくれ。