4年ぶりの秋戴冠!!桜島打線復権への期待

▽鹿児島実=優勝(8季ぶり31回目)

*秋優勝は17回目

・決勝         2-0 鹿児島城西

・準決勝      7-5 鹿屋中央

・準々決勝  3-2 大島

・3回戦    13-1 鹿児島工(5回)

・2回戦     9-0 種子島(7回)

 


遅くなりましたが…鹿実野球部の皆さん、秋の鹿児島制覇おめでとうございます!

予想された通り準々決勝以降は常に厳しい戦いを強いられましたが、その中でもしぶとく「勝ち切る」戦いぶりは正に鹿実野球そのもの。

今大会は絶対的優勝候補と目される中、着実にその強さを示してくれたことはファンとしても誇らしかったです。

 


……と、九州大会の組み合わせが決まったタイミングで、今更な内容となってしまいました。記事を更新しない中でも日々多くのアクセスをいただきながら、大変申し訳ありません。

 


九州大会にも触れたいのですが、まずは県大会の戦いぶりで私が強く感じた事を記していきたいと思います。

 

 

 

◆新時代の鹿実野球、かつての看板復活へ

先程は「まさに鹿実野球」と評しましたが、今秋の戦いぶりは今までの鹿実とはまた違った強さを私は感じました。確かに準々決勝以降の「苦戦しながらもなんとか押し切る」という粘り強さは鹿実の伝統。ただ、野球そのものの質、プレースタイルに例年とは違う鹿実野球部の姿を見た気がします。

宮下監督になってからの鹿実の打撃スタイルは「低く強く鋭く叩く」のスローガンの下、野手の足下や間を鋭く抜ける打球を放つ事に主眼を置いた方針が色濃くなりました。一発長打に頼る事なく、アウトになってもじわじわと相手野手陣にプレッシャーをかけ、相手が隙を見せたら一気に畳み掛ける野球。所謂「切れ目のない繋ぎの打線」です。

このスタイルが鹿実の大きな強みとなっていたのは事実です。

一方、大型化、スピード化が進む全国レベルの強豪校相手には、ここ数年苦戦し続けてきたのもまた事実。

今季のチームには、その積年の課題を克服しようとする意図を感じます。

レギュラー選手は今年の夏を戦った3年生世代以上に大型の選手が並び、一見小柄な選手もまた肉付きの良い体格の選手が揃います。

何より明らかに違うのは、スタメンに占める右打者の割合です。

例年の鹿実は半数以上、下手をすればスタメン全員が左打者という年も珍しくありません。コツコツとバットに当てるのが上手いタイプや、クサイ球をファールで粘る曲者タイプ。綿屋選手や西選手のようにパワーこそあれど、「ヒットの延長線上に長打がある」という好打者タイプがスタメンに並ぶケースが多かった。

もちろん、左が並ぶ事自体が悪い訳ではありませんが、似たタイプの打者が打線に並んだ場合相手バッテリーが対策を立てやすいと感じてもおかしくありません。

国分中央戦の回顧でも述べましたが、ここ数年鹿実が打線を封じられて負けたパターンはほとんどがここに起因すると感じています。

しかし、今年の鹿実は4番坂本選手を筆頭に、繋ぎ役の小堺選手、主将の原口選手、投手ながら主軸に座る事もある加島投手と、主要打者に右打者がこれだけ揃ってます。

秋は出場機会はありませんでしたが、新人戦で4番にも座った古川選手や、一年生ながら代打の切り札に定着しつつある平石選手も忘れてはいけません。

もちろん、ただ右打者である…それだけならここまで主張しません。彼らに共通するのは、「強くボールをしばき上げられる」というスイングの力強さ。

決勝で殊勲打となる先制ホームランを放った坂本選手の打撃はその代表格といえるでしょう。

追い込まれてノーステップ打法に切り替えながら、変化球に対応しレフトスタンド深部へ。巧さに加えて力強さが光ったバッティングでした。

繋ぎ役を期待されながらも左右に長打を放つ小堺選手も本来なら主軸クラスですし、加島投手もまたパワフルな打撃が持ち味。さらには背中が付くほどまでフォロースルーが大きい平石選手のスイングは、過去の鹿実の右打者とは大きく異なるスタイルです。

九州大会はより相手チームのレベルが上がるため、県と同じような打撃を発揮できるかはわかりません。しかし、かつて「桜島打線」と称され全国にその名を轟かせた鹿実に憧れた私としては、例年とはまた違った種類の期待を抱いているのもまた事実です。

鹿児島県勢は、全国選手権で10年以上ホームランがありません。それが全国上位進出ができない理由の全て…とは言いません。ただ、複数ある理由の一つとは捉えられるでしょう。

最後のホームランは宮下監督就任初の甲子園で田野尻選手、森田選手が放った2008年。選抜を合わせても、3年前の追立選手が最後。全員が右打者というのも偶然ではなく、浜風が吹く甲子園では右打者の方が打球が伸びやすいというアドバンテージがあるからでしょう。

宮下監督自身も現役時代、小柄ながらも鍛え上げた肉体でボールをしばき上げる強打の右打者でした。サイレン鳴り止まぬうちにレフトポール側に運んだ先頭打者ホームランは伝説となってます。

あの頃の強打の鹿実を復活させる事こそが、鹿実が全国で再び輝くための鍵になる事でしょう。

当然宮下監督もその事は頭にあるでしょうし、過去のインタビュー、発言の節々からもその意志は感じ取れました。今大会の結果もそれを目指してチームを鍛え上げた成果だと私は見ています。

 


私は繋いで粘って畳み掛ける「繋ぎの鹿実野球」も大好きですが、やはり強打で圧倒する桜島打線に浪漫を感じてしまうのです。もちろん、勝利という結果が伴ってこそ。

大事なのは長打を打つ事以上に、相手に「甘くなれば長打があるぞ」と警戒させる事。

長打を警戒させてからより生きてくるのが、「しぶとく繋ぐ鹿実野球」です。この両軸の野球を、今年のメンバーならきっと体現してくれるはずです。

 


もちろん、右打者だけでなく、平選手、城下選手、髙田選手も素晴らしい打者。今回はあえて目についた特徴に絞って記事を書きましたが、試合になればチーム全員の活躍を期待して応援します。

 


他にも気になった事がありますが、今日はここまで。

続きは九州大会が開幕するまでに更新しようと思います。