trust

昨年は100回記念の選手権、そして創部100周年を見事甲子園出場という形で飾った鹿実野球部。

今年は101回目の夏へ向け、101代目の選手たちの戦いが始まろうとしています。

 

とはいっても、周囲の期待度や温度感は、昨年ほど高まってきていない印象です。

「去年のメンバーと比べたら、今年は……」「レギュラーも全員入れ替わったし、秋も結果出せなかったしなあ……」「去年甲子園行けたし、鹿実はしばらくいいでしょ……」

空気感としては、こんな感じでしょうか。

 

冗談じゃない。

とんでもない。

 

昨年秋のエントリーでも述べましたが、私は今年の鹿実が弱いチームとは決して思っていません。

内容は完敗でしたが、秋の敗戦は優勝した神村と紙一重の戦いを演じた城西相手の僅差の試合。メンバーが入れ替わったとはいえ、個々の能力は昨年の先輩たちと比べて大きく劣っているわけではありません。足りないのはチームとしての成熟度。これから埋めて行く部分です。

何より、昨年甲子園に行ったとは言え彼らにとっては一生に一度の高校最後の夏、特別な年なのです。無関係なファンは時々「◯◯が勝ちすぎて面白くないから、そろそろ負けて欲しい」などと残酷な事を口走りますが、彼ら高校球児はいつだって負けたら終わりの明日なき戦いに挑んでいます。

だからこそ、私は今年も鹿実野球部に栄冠を手にして欲しいと願います。今年は昨年味わえなかった、甲子園での勝利の歓びを感じてほしい。

 

しかし、現実に目を向けたらそう簡単に事が運ばないのもまた事実。鹿児島大会の連覇は2012年の神村が最後で、鹿実も98年の三連覇以来連続出場を果たせていません。

ライバルとの力関係を客観的に分析してみても、現時点では神村、城西、鹿屋中央あたりが先を行っているのは認めなければなりません。これをひっくり返すのは至難の業。

さらに、鹿実野球部自身が乗り越えないといけない壁もあります。高校野球に限らず団体競技では良く「結果が出ている時は良いが、いざ勝てなくなると自分たち自身の力、スタイルを信じる事が出来なくなる」という負のスパイラルがあると言われています。昨年新人戦、秋県大会、一年生大会と結果を出せなかったダメージは、決して小さくてはないでしょう。

おそらく、昨年以上に難しい戦いを強いられる事になるはずです。

 

それでも、私は鹿実野球の持つ可能性を信じています。

なぜなら、鹿実野球部は過去幾多の逆境を跳ね除けて来た実績があるからです。

創立100周年を飾った4年前の甲子園出場も、チームのスタートは神村戦のコールド負けからでした。レギュラーも全員入れ替わり、公式戦でも一度も決勝に進めなかったチーム。そんな世代が、何度も負けを重ねる度に強く逞しく成長していったのです。

昨年のチームだって、春の樟南戦のコールド負けを見た時は「夏は厳しいかな」と思ったものでした。そこからのチームの成長は語るまでもないでしょう。その先輩たちの背中を真近で見てきた世代。負けっぱなしのまま、ただで終わる訳が有りません。少なくとも私はそう信じています。

 

だから……と言ってしまったらファンのエゴになってしまいますが……

彼らには、自分を自分たちを、仲間を信じて戦えるチームとなって欲しい。ヒット数で勝ろうが、ノーエラーで試合をまとめようが、たったひとつのプレーをきっかけ敗れてしまう事もあり得るのが高校野球。そんな戦いの中、強い拠り所となるのは自らを信じる力。決して妄信するのではなく、純粋に己が力を信じる力。それさえ手にできれば、このチームはガラッと変わるはず。

そのための日々の厳しい練習であり、寮生活であると。

 

過去の先輩たちは、皆乗り越えて来ました。乗り越えた先輩たちは皆、誇らしく思い出を語ります。

君たちも、いずれそうなってほしい。

 

頑張れ、101代目の戦士たち。私は君たちの戦い様を、可能な限り見届けたいと思います。

 

戦士の魂を継承して

今年、2人の偉大なる鹿実OBプロ野球選手が、現役選手生活のピリオドを打ちました。

杉内俊哉投手に本多雄一内野手

私自身、このお二方はプロ入り後の活躍はもちろん、鹿実時代からずっとその姿を見てきました。

高校時代はなんと言ってもあの甲子園でのノーヒットノーラン。当時野球に興味を持ち始めた私にとって、初めてリアルタイムで体感するノーヒットノーランでした。「鹿実のエースが全国の舞台で凄い事をやってのけたんだ!」と子供心に誇らしかった記憶があります。プロ入り後とは違うワインドアップの投球フォームもかっこよかったですね。

社会人を経てのプロ入り後は曲がりの大きなスライダーと「2回空振りする」と言われるチェンジアップ、そしてキャッチボールのような脱力したフォームに惑わされ打者が差し込まれる速球。これらの球種を武器に、全盛期はダルビッシュ投手や松坂投手といった豪腕投手たちをも凌ぐ勢いで奪三振の山を築きました。決して恵まれた体格とは言えないあの身体で、プロの世界の猛者たちと渡り合うその戦いぶりは痛快でした。マウンド上では淡々としているようで、内に熱い闘志を秘めていたのも杉内投手の魅力。打たれた試合で悔しさのあまりにベンチの椅子を殴り利き腕を骨折させてしまうほど(決して褒められた行動ではありませんが……)マウンド上で眉毛をキリリと釣り上げ「絶対打たせるものか」と言わんばかりの表情、あの佇まい……もう見られなくなるのかと思うと、やはり寂しいです。

闘志という点では、本多選手もまた負けない熱いハートを持った男でした。普段は周囲を明るくする笑顔が目立ちますが、鹿実時代は小さな身体から溢れんばかりの闘争心でチームを引っ張るキャプテンでした。当時の鹿児島は二強体制から樟南一強に傾いていた時代。試合後のインタビューでは常に「樟南を倒して甲子園に行く」と、チームに発破をかけるコメントを残していたのが印象的でした。俊足巧打のイメージが強い選手ですが、高校時代は一番打者ながら一発もよく打っていた記憶があります。残念ながら甲子園には届きませんでしたが、久保監督最後の代の主将を立派に勤めていました。

卒業後は大野城ガッツの先輩杉内投手と同様社会人に進んだ後にプロ入り。ホークスでは鹿児島工出身の「宗リン」こと川崎宗則選手と二遊間を組み、鹿児島の野球ファンも熱狂させてくれました。俊足と華麗な二塁守備を売りに盗塁王ゴールデングラブとタイトルを獲得し、2013年には杉内投手と共に侍ジャパンの一員としてWBCを戦いました。数年前までバリバリレギュラーで活躍していただけに「まだまだやれるのでは?」と思ってしまいますが、近年は故障で出場機会が減っていたのも事実。それを踏まえての判断だったのでしょう。

お二方とも長く過酷な現役生活、本当にお疲れ様でした。たくさんの夢と感動をありがとうございます。

 

さて、今回の記事でお伝えしたい内容はここから。

杉内投手が引退会見で語った事で深く印象に残ったのが、「一軍で戦うチームメイトや後輩を心から応援している自分がいたことに気がついた。勝負師として、それは違うのではないか」と言ったことです。チームメイトを応援する。それ自体はなんらおかしくない当然の事。ですが、ここ数年の杉内投手は故障の影響で満足な投球すら出来ない日々が殆ど。早く投げたい、でもまずは怪我を治さないといけない……そういった不安や葛藤の毎日だったのでしょう。上述した通り、杉内投手は生粋の負けず嫌いです。かつて杉内投手は「自分はナンバーワンになった事のない投手。同世代や周りには常に自分よりも良い投手がいた。でもそんな凄い投手に負けたくないという思いを常に持って投げてきた」と話していました。確かに高校時代は川内の木佐貫洋投手が、甲子園では怪物松坂大輔投手がライバルとして立ち塞がり、そしてプロでもチームメイトに斉藤和巳投手、和田毅投手など錚々たる面々と凌ぎを削ってきました。チームメイトだろうと、対戦相手だろうと、他の投手に負けたくない。その闘争心こそが、杉内俊哉という男の支えであり原動力だった、と……

近年の杉内投手は、リハビリの合間に巨人の若手投手たちに積極的にアドバイスを送っていました。今季ブレイクした今村投手も、少なからず影響を受けた一人です。自分がアドバイスを送った若手が成長し、結果を残すことに喜びを感じる反面、自分自身を支えていた「他の投手に負けたくない」と言う気持ちが薄れていったのだと感じたのでしょう。引退を決意した理由まで、この人らしいですね。

そして、この杉内投手の言葉は、鹿実野球部の魂そのものだと私は思います。

鹿実野球部は100人近い大所帯で、長時間のハードトレーニングの中から競争を勝ち抜いた選手だけが試合に出る事を許されます。指導者からは一昔前の高校野球のように厳しい罵声が容赦なく浴びせられ、練習試合でも不甲斐ないプレーをしたら、直後にはさらなるハードトレーニングが課せられます。見る人によっては時代に合わない、非合理的なやり方だというでしょう。少子化で一人っ子が増えた現代の子供たちには合わない、とも。

ただ、ここの野球で培われるものは「負けてたまるか」「今に見てろよ」という反骨心と、様々な逆境でも力を発揮できる勝負師の心です。今年の100回記念の選手権と、3年前の学校創立100周年で甲子園を勝ち取ったのは偶然なんかじゃない。逆境やプレッシャーの中でこそ輝くのが鹿実野球だと、私は信じています。

彼らの鴨池球場での整列からグラウンド上での戦いぶりはまさに戦士の姿です。何処よりも揃った入場行進や礼といった集団行動と、グラウンド上での荒々しく逞しい立ち振る舞い。この姿は杉内投手が現役部員だった時から変わりません。この野球は全国でも唯一無二だと確信してます。そして、入部してくる選手の多くが「ここで野球をやりたい」「ここでしか出来ない野球部をやりたい」と思って毎年入部してきている。これはファンとしても非常にありがたいですし、何より親御さんや多くの方に鹿実野球が支持されている証拠です。

だからこそ、結果で応えて欲しい。私はいつか、この唯一無二の鹿実野球が全国一になる瞬間が来ると信じて、これからも応援し続けます。そして、これからも杉内投手や本多選手のような「勝負師の心」「戦士の魂」を受け継ぐ選手が育ってゆく軌跡を見守りたいです。

 

一年生大会初戦敗退……ここから這い上がれ!!!

前回のエントリーで私、こんな記事MBC旗争奪一年生大会、組み合わせ決定 - Bの魂を書いてましたが……

結果は鹿屋中央相手に、無念の初戦敗退……

 

私は試合を見る事は出来ませんでしたが、やはり簡単に勝たせてくれる相手ではありませんでしたね。

相手には秋決勝まで勝ち上がり九州大会も経験したという勢いもあったと思います。

 

逆に今の鹿実は、厳しい言い方をすれば勢いを失っているといえるかもしれません。

今夏甲子園を経験した多くのメンバーが卒部し、ほぼ一からのスタートとなった新チーム。

新人戦はライバル樟南にまさかの大逆転負けでシード権を逃し、秋は城西小峯投手にねじ伏せられ力負け。

期待された一年生大会は2年続けての初戦敗退。

悪い結果が続くと風当たりが強くなるのが名門の宿命ではありますが、これから突入する冬季練習はよりハードになることは間違いないでしょう。

 

ただ、常に良い流れが続かないように、悪い流れに陥るのもまた勝負事では避けられません。

最も大事なのは、結果が出ない時どう過ごすか。もっと言えば結果が出ようが出まいが、一日一日をいかに大事に過ごしていけるか。

野球以外の日常生活まで神経を注ぎ、それを野球に繋げる事こそ鹿実野球の真髄だと思います。 今は結果が出ず気落ちしてる選手も多いでしょう。ですが、どうか今取り組んでいることを信じて愚直に努力していって欲しいです。

 

今年甲子園に勝ち上がった三年生たちは公式戦で二度コールド負けを味わい、そこから這い上がりました。過去には前チームでレギュラー選手ゼロだった代が甲子園に出場したことだってあります。

 

敗北を乗り越えるのが、鹿実野球。

敗北を力に変えるのが、鹿実野球。

 

私はそう信じて応援してきました。これからだってそうです。

勢いを失ったなら、流れが悪いなら……それは自らの力で流れを作るしかない。

彼らがここから立ち直るのを信じて、そして来年には強く逞しくなった姿を見せてくれると信じて、私は春を待ちたいと思います。

 

 

鹿実球児よ、這い上がれ!

 

 

MBC旗争奪一年生大会、組み合わせ決定

今年最後の公式戦です。

 

https://www.mbc.co.jp/event/1nensei2018/

 

f:id:spiritoftheb:20181029005654p:image

 

九州大会出場を逃し久々の予選スタートとなったものの、二戦戦い共にコールド勝ちで本戦出場に漕ぎ着けた鹿実一年生チーム。

秋の悪い流れを断ち切るには、この大会で大きな結果が欲しいところですが………この組み合わせが決まった時は「嫌なブロックに入ったな」と思ったのが本音です(汗)

初戦の鹿屋中央は九州大会出場のシード枠だけではなく、実際に行われた大隅地区予選を勝ち上がって来た実力チーム。主力には山本監督の御子息で夏もレギュラーショートとして活躍した聖選手がいます。強敵となるのは間違いないでしょう。

ここを勝ち上がった場合見えて来るのは、鹿児島城西との秋のリベンジマッチ。秋の鹿実戦には登板しなかったものの、エース小峯投手と並び主戦級の活躍をしている八方投手や、大型右腕前野投手の存在が目を惹くチームです。

仮に対戦が実現した場合、一個上の先輩たちの分のリベンジもかかる試合。というのも、現2年生は昨年の一年生大会で、小峯投手らが主力の城西相手に屈辱のコールド負けを喫しています。

厳しい相手ですが、是非とも実現してほしいカードです。

とはいえ城西の初戦の相手大島も、秋エースナンバーを付けたサウスポー竹投手がいるため、こちらが勝ち上がる可能性も十分にありそう。私が見た試合では、この時期の一年生としては非常にキレのある球を投げてました。個人的に注目の投手です。

そして、更に勝ち進んだ先には……断言は出来ないものの、秋の県王者神村学園との一戦が見えて来ます。

エース中川投手や、主砲井上選手ら現時点で本チームの主力を張る一年生を擁する神村は、今大会の優勝候補と言っていいでしょう。既に一年生レベルを超越したチームとの戦いとなれば、これ以上ない経験値が得られるはず。なんとしても勝ち上がり、挑戦権を勝ち取って欲しいです。

 

今年の鹿実の一年生には非常に能力の高い選手が多いですが、一方で経験値や実戦力という点では課題が残るのも事実。既に2年生に混じってレギュラーを張る強豪チームの選手たちとぶつかる事で、より自分たちの課題や弱点を見つめ直し、克服するチャンスになるのではないでしょうか。

そう思えば、ある意味非常に良い組み合わせを引いたと言えるのではないでしょうか。冒頭の発言は撤回します(笑)

 

過去、この大会で結果を残し飛躍した選手達は数え切れません。過去の戦績を振り返っても、決勝に進出したチームが2年後に甲子園に出場した比率は非常に高いです。

鹿実の一年生たちにとって飛躍のきっかけとなり、それが上級生たちへの良い意味での刺激となるような……そんな大会となる事を、心から祈ってます。

 

実りの秋、収穫の秋で、長い冬に備えましょう!

 

センバツ絶望……鹿実野球部、4回戦敗退

残念‼︎厳しい戦いとは予想してましたが……

 

第143回九州地区高校野球大会 鹿児島県予選

4回戦 対 鹿児島城西

鹿実 000000 000=0 H3 E0

城西110 000 01X =3 H9 E1

[実]福留、高田、福留–玉田、重信、横峯

[城]小峯–田代翔

二塁打:川口(実)、松原(城)

 

城西は190㎝近い大型右腕・小峯投手、鹿実は170㎝と小柄なサウスポー福留投手という対象的な対決に。

初戦に引き続き好投を期待された福留投手でしたが、今日は初回に三連打を許しいきなり先制を許し、続く2回にも追加点を奪われる苦しい立ち上がりに。

反撃したい鹿実打線でしたが、小峯投手の長身から繰り出される常時140キロ台の速球に散発の安打に抑え込まれます。8回にはヒットとエラーで同点のチャンスを作るも、後続が押さえ込まれ無得点。

直後にダメ押しの追加点を奪われると、最終回も四球でランナーを出すのが精一杯。

3安打完封負けで4回戦敗退となり、来春選抜大会出場も事実上絶たれました。

 

立ち塞がったのは、またも怪物右腕

今大会の組み合わせが決まり、まず一番の難所はここだろうと思ってました。

城西のエース小峯投手は、一学年上の世代ですら打ちあぐねた好投手。それでもここまでの勝ち方、勢いなら、対等に戦えるのではという期待を抱いてましたが……やはり完全に相手が上手でした。散発3安打では勝てません。完敗という他ありません。

小峯投手は現時点で鹿児島ナンバーワン右腕でしょう。順調に行けば来年のプロ入りが期待できる、そんなレベルの投手です。そんな投手と対戦出来た経験は、間違いなく財産になるでしょう。そうしなければなりません。

思えば、夏の甲子園で立ち塞がったのもまた、金足農・吉田投手という怪物投手でした。

要所でトップギアを入れられた時の速球には手も足も出ませんでしたよね。

鹿実が今後甲子園出場を目指し、甲子園で勝つためには、こういった速球派を打ち崩さなければなりません。今日の試合は、まさにそんな課題を突きつけられたようなもの。

今日出場した選手たちは吉田投手の球を経験してませんし、そういう意味ではいい経験をさせてもらったといえます。

チーム全員で速い、強い球に負けない打撃、スイングを作り上げる取り組みをして欲しいです。夏まで9ヵ月。やれる事は山ほどあるはず。

そして鹿実を倒した城西には、是非とも九州、選抜を目指して欲しいです。

 

収穫の秋

この秋は現状の力不足を突きつけられた結果に終わりましたが、同時に多くの可能性も示してくれたと私は思います。

まず課題とされた投手力は福留投手の台頭が大きかった。今日の試合も敗れはしましたが、3回以降は粘りの投球を見せてくれました。個人的にMVPを贈るとするなら彼です。

また、今日はリリーフで高田投手も登板しました。結果としては失点を許すほろ苦いデビューとなりましたが、強豪校相手に終盤の厳しい場面での登板はこれ以上ない実戦経験です。

まだまだ球威は物足りませんが、やはり柔らかい投球動作には将来性を感じます。身体作りをしっかりして、来年はエースの座を争って欲しいです。

実践的な野球や堅実な守備は今年のチームにも引き継がれており、この点に関しては去年の今頃の先輩たちより良いのではと思うほど。

陰で「谷間の世代」と揶揄されたこのチームですが、彼らの成長次第では今年の甲子園出場チームを超える可能性は充分ある。そう感じさせてくれる3試合でした。

 

さあ、ここからが逆襲のはじまりです。

厳しく長い冬となるでしょう。

来年の甲子園への道のりも、簡単ではありません。

 

ただ、結果はどうなろうとも、私はこのチーム……今年の鹿実野球部がこれからもっともっと強くなれると確信してます。ここからどう変わっていくのか、それを見るのが楽しみで仕方ありません。

その成長過程を、来年も見届けたいと思います。

 

 

鹿実、2戦連続コールド勝ちで4回戦へ‼︎

台風直撃の昨日とは打って変わって快晴の今日、秋季県大会も3日ぶりの再開となりました。

本日の鹿実はどうだったでしょうか?早速試合を振り返ることにしましょう!

 

第143回九州地区高校野球大会 鹿児島県予選

3回戦

鹿実 021 235=13 H11 E0

種中 010 002=2 H5 E3

[鹿]松元、河野、叶ー玉田

[種]高橋陸、川元ー立石

 

鹿実・松元投手、種子島中央高橋陸投手と、お互い左投手の先発となった一戦。

初回こそ両チーム無得点に終わったものの、2回から試合が動きます。

鹿実が4番吉木選手の安打を足掛かりに川口選手の長打、玉田選手の犠飛で2点を先制すれば、その裏種子島中央もすかさず反撃。ツーアウトから6番立石選手がレフトオーバーのツーベースを放つと、続く川元選手がショート後方に落とすタイムリーで1点を返します。この時点ではまだ互角の様相でした。

しかし、3回以降は鹿実が突き放す一方的な展開に。

ヒットや四死球、エラーで出したランナーを堅実に送り、低い弾道の打球で野手の間を抜くという鹿実らしい攻めが炸裂し、終わってみれば11安打13得点。

守っては松元投手が5回を投げ3安打1失点と、先日の福留投手に続く好投で勝利に貢献。

最終回こそ河野投手、叶投手の二人で2失点を喫したものの、守備に関しては大きな綻びなく記録上もノーエラー。

6回コールドの完勝で、鹿実がベスト16進出を決めました。

 

「低く鋭い」打撃、ここにあり

今日の鹿実打線は13得点。しかし、記録ほど大味な印象はありませんでした。ここに鹿実野球の特徴が現れていると感じます。

今日は長打が三本出ましたが、それ以外の安打は野手の間を抜くゴロやライナー性の打球ばかり。鹿実の試合記事や監督、選手のインタビュー記事によく出てくるコメントが「低く強い打球」というキーワードです。

とにかく低く強い打球を相手野手陣に浴びせ続ける事。強い打球が野手の間を抜けたらヒットになり、正面の打球でも処理も難しくなる。たとえアウトになったとしても相手守備陣は神経を使うため、ボディーブローのように効いていく。

今日はそんな鹿実らしいスタイルが生んだ13得点といえるでしょう。相手の3つのエラーも単純な向こうのミスではなく、こちらが仕掛け続けた結果生まれたもの。

今日も要所要所でキッチリバントが決まってましたし、攻撃に関しては言う事がありません。

この攻撃力が、次戦以降の強豪校相手にどこまで通用するのか。

とにかく自信を持ってこのスタイルを貫いて欲しいところです。

 

期待され続けたエース候補

この世代で最初に公式戦、昨年秋の一年生大会の先発を任されたのは松元投手でした。

一個上の世代に混じってベンチ入りする事も多く、期待された存在でしたが。。。その一年生大会を含め、ここまで結果を出してきたとは言いがたいのも事実です。

一年生大会の城西戦では初回いきなり6失点と試合を壊し、今年のNHK旗は決勝のマウンドを任されるも1回持たず降板。1ヶ月前の新人戦でも2回で降板を命じられるなど、期待に答えられない日々。

それだけに今日の試合も心配でしたが。。。結果は5回3安打1失点。充分先発の仕事を果たしたといえるでしょう!

ここまで苦悩の連続だった彼が、ようやく結果を出してくれたことが素直に嬉しいです!

投球フォームには躍動感があり、リズムに乗れている時はボールも走っていました。

もちろん課題はいくつかあります。ボールを散らし過ぎてボール先行になる場面や、ランナーが出るとリズムを崩す点。技術的にもまだまだ試行錯誤を繰り返している段階なのでしょう。

ただ、このチームの弱点は何度も言うように、試合での経験。だからこそ一試合一試合を大事にして成長していくしかない。

松元くんもそうです。課題は山ほどあるとは思いますが、今日の投球を見る限りでは決して力の無い投手とは思いません。反省点もあるでしょうが、まずは今日の投球を自信にして、今後の成長に繋げて欲しいです。

 

陰の立役者

その松元投手の好投を支えたのが、初戦に引き続きスタメンマスクを被った玉田選手です。

大会直前のエントリー変更でベンチ入りを果たしながらも、ここまでフル出場。

守備時に彼を注視すると、一球ごとに投手へ大きなジェスチャーを送ってコミュニケーションをとっているのがわかります。

ボールが要求より浮いてきた時は両手を使い「低く低く」、力んで投げてしまった時は両肩をぐいっと上げ「力入れるな、リラックス」といった具合に。投手は視野が狭くなったり、自分の世界に入り過ぎて「なんとなく」放ってしまう瞬間があるものですが、そういった不用意な投げミスを防ぐ為にも捕手のボールに対するリアクションは非常に大事です。

一見当たり前のような事ですが、これが出来ていない捕手は意外と多い。

よくリードや配球ばかり語られがちな捕手ですが、それより大事な事は「いかに多くのものが見えているか」だと私は思います。

そういった意味で、玉田選手は良く投手の事が見えて、気遣える捕手だと感じました。投手が安心して投げられるような捕手ですね。

そんなところを買われてのスタメン抜擢なのかもしれません。捕球面でも低めのワンバウンドを身体から止めに行ってましたし、打撃でもいい働きを見せていました。

ただし、彼にも課題はあります。それは捕手としてもう一つ大事な要素の送球。

イニング間の送球を見ると、非常にワンバウンドの送球が多い。もちろん高く浮くよりはいいのですが、彼の場合野手がやや捕りにくい位置でバウンドしている事が多かったと記憶してます。実際にこの日は複数盗塁を許してしまいました。

よりチームの信頼を得るためにも、「刺せる捕手」を目指して努力してほしいです。

 

一年生投入

初戦は途中出場の平選手を除き出場選手のほとんどが二年生でしたが、この試合ではサード小堺選手、ショート坂本選手と内野の要所に一年生を配置してきました。打撃に関しては2人ともノーヒットながら、それぞれバントを決め得点に貢献。守備では軽快な動きでキッチリ打球を処理してました。

特に坂本選手のグラブ捌きは非常に柔らかく、現時点でレギュラー入りも期待できそう。

同ポジションの藤村選手も強力なので、負けないように切磋琢磨して欲しいです。

そして、期待の選手として既に名前を挙げていた高田選手も、今日は代打での出場。結果はサードゴロながら、打点1をあげました。

チームを強くするためには、上級生だけでなく下からの突き上げも重要です。刺激がなければ、チームは活性化しません。

彼らから一人でも主力となる選手が現れることを願ってます。

 

少人数チームの健闘に思う事

ここでは相手チームの事にも触れたいと思います。

この日戦った種子島中央は、部員が20人に満たない少人数ながら、非常に魅力的なチームでした。エース高橋陸投手はボールの精度が上がればまだまだ伸びそうだし、二本の長打を放った立石選手もまだ一年生。

そして何より、ベンチ全員で声をかけ合い、向かって行く気持ちを絶やさない姿勢に好感が持てました。

初戦で戦ったシード国分中央も近年実力をつけてきた新鋭ですが、今年のベンチ入りは僅か16人。残念ながらこういった部分でも、少子化や野球人口減少という現実を見せつけられる事が多くなりました。

ですがそんな苦しい状況でも悲観せず工夫してチーム作りに取り組み、強豪校とも堂々と渡り合える地方公立校が、県内にはたくさん存在します。

近年は離島からも県大会で勝利をあげるチームが増えてきましたが、その裏では選手や関係者の方々の並々ならぬ努力があったからこそ。この事を声を大にして伝えたい。

私は鹿児島の高校野球ファンとして、こういったチームが多い事を誇りに思います。

そのようなチームのためにも。。。といったら変かもしれません。

ただ、私は鹿実ファンとしても、鹿児島の高校野球ファンとしても思う事は、“鹿実にはこれからも強く在り続けてほしい”ということです。

鹿実には、今も昔も県内のあらゆるチームの憧れであり、目標であり、倒すべき強敵であってほしい。

勝ったら「あの鹿実を倒した」と歓べるような、負けても「鹿実と戦えて良かった」と思えるような。。。

この夏の甲子園で戦った鹿実には、破ってきた相手チームやライバル校のOBから多くの声援が贈られました。ファンとしてとても嬉しかったですし、だからこそ初戦で敗れた事が悔しくて仕方ありませんでした。

常に県代表として甲子園で戦う事を目指している以上、県内のライバルたちの思いを背負えるチームを目指して欲しい。

そのためにはもちろん、大前提として結果が必要です。

鹿実を含めて鹿児島県代表はここ数年1勝止まり。甲子園での初戦連勝記録も今年で途絶えました。

鹿実が止めてしまった以上、それを挽回するのは鹿実じゃなきゃいけない。これはファンとしてのエゴかもしれませんが。。。

 

「強い鹿実」であるためには、今大会は次からが正念場です。ここからは強豪校ばかり。

あの最悪のスタートから這い上がった彼らが、どこまで戦う事が出来るのか。

ここまで来た以上、次で終わって欲しくありません。

次も勝って、そのまた次の試合を迎えましょう‼︎

好発進‼︎鹿実野球部新チーム・秋初戦を振り返る

というわけで、1日遅れとなってしまいましたが。。。

 

鹿実野球部、秋初戦突破おめでとうございます!!!

 

正直申し上げますと、初戦がシード国分中央と決まった時はイヤーな感じがしましたが。。。

蓋を開けてみれば、見事なコールド勝ち!

もちろん、初戦突破で一喜一憂している訳にも行きませんが、新人戦からの嫌な流れを払拭するには充分な内容だったといえるのではないでしょうか?

 

前置きはここまでとして、早速試合を振り返ってみましょう‼️

 

 

第143回 九州高校野球大会 鹿児島県予選

二回戦

鹿児島実 140 000 3=8

国分中央 000 000 1=1

[鹿]福留ー玉田

[国]今村、米崎ー桑原

 

鹿実は初回、死球と犠打で作ったチャンスを四番吉木選手のタイムリーで先制。

その裏の守り、鹿実の先発左腕・福留投手は先頭打者にいきなりヒットを許し、犠打、進塁打で同点のピンチを招くも、相手の本盗失敗に助けられ無失点。

直後の攻撃では安打と犠打でチャンスを作ると、福留投手自らタイムリーツーベースを放ち追加点。その後も大技小技を絡め、この回一挙4得点のビッグイニングに。

これで勢いづいた福留投手は、抜群の制球力と緩急巧みな投球で2回から6回まで一人のランナーも許さないパーフェクトピッチ。

7回に長打攻勢で突き放し、7回コールドで鹿実がシード国分中央相手に初戦を飾りました。

 

 

最大の収穫

この試合で誰よりも輝いたのは、なんと言っても先発の福留投手の好投でしょう。

7回を投げ被安打2、失点はエラー絡みの最終回の1で自責点0。三振は僅か2ながら、四死球0と制球力で打たせて取る投球が光りました。低めにビシビシ決まる速球とチェンジアップ系のコンビネーションが効果的で、打者からすると実際のスピード以上に速く見えたと思います。

これほどの投球が出来る投手が現れたのは、投壊で涙を飲んだ新人戦を思うと格段の進歩といえるでしょう。本人も新人戦では出番が無かった事から、悔しさを持って努力してきたのではないでしょうか。

久保総監督も絶賛しており、「投手が良くなったお陰でようやく上昇気流に乗れてきた」と手応えを口にしてました。

もちろん手放しに喜ぶことはできません。この先には更なる強敵との対戦が控えてます。果たして強打のチームや試合巧者相手にも同じ投球ができるのか?という点は気になります。

それでもこの日の投球は、ほぼ満点に近い内容でした。今後の活躍に期待したいのと、他の投手陣も彼の活躍に刺激を受け奮起して欲しいですね。

 

集中打健在

打線に関してもこの日は特に言う事はないでしょう。上位から下位まで満遍なく打ちましたし、要所要所でバントもしっかり決めてました。

先制打は4番吉木選手、駄目押しの長打は3番椎原選手と、軸になる打者かしっかり機能しているのも良かったですね。とりあえず良い流れは出来たと思います。大味に打ち勝つというよりは、小技を交えキッチリ繋ぎ、一気呵成に攻め立てるという鹿実らしい攻撃が展開出来ていたといえるでしょう。

気掛かりだったのはノーヒットに終わった叶選手。5番で起用されてましたが、最終打席は代打を送られてました。柔らかい打撃には非凡なセンスを感じるだけに、今後の奮起に期待したいところです。

 

最終回に出てしまったミス

敢えて課題を挙げれば、最終回に出たエラーでしょうか。

ノーアウト一塁の場面でセカンド山添選手が軽快に処理したものの、ゲッツーを焦ったか二遊間の連携が合わず悪送球に。大勢決していただけに致命傷とはなりませんでしたが、僅差の場面だったらどうか。

初投稿記事でも指摘したように、このチーム最大の弱点は実戦経験の乏しさです。一人一人の能力は高いので、後は実戦で得た課題を練習で克服し、次に活かす。その繰り返しで強くなっていくしかありません。

ゲッツー一つ取るにしても、実戦経験と反復練習の積み重ねが最後にはモノを言います。難しいゲッツーをいとも簡単に処理出来るようになれば、相手から主導権を奪う事が出来る。そういう攻撃的な守備が出来るチームになって欲しいですし、宮下監督もそれを求めているはずです。

そして彼らなら可能だと、私は思います。

守備に関しては、とにかく甲子園に出た先輩たち以上のレベルを目指してもらいたいところです。

 

期待のルーキーには出番なし

私が以前の記事で注目選手に挙げた高田選手は、この日は最後まで出場機会がありませんでした。

ただ、最後ブルペンで投球練習をしていたところを見ると、投手陣の中の起用優先度も高いように感じました。

新人戦では主軸にも起用された高田選手ですが、恐らく今大会は投手としての比重が大きい起用法になるのではないかと予想してます。

マウンドに上がる日が待ち遠しいですね!

 

次戦に向けて

新人戦の状態を思えば、よくぞここまでのチームに仕上げてきてくれた、というのが正直な感想です。

ようやく「戦える準備が整った」と言ったところでしょうか。

ただ、今大会はノーシードで臨む立場なので、あくまでチャレンジャーであることを忘れず、一戦必勝で戦って欲しいです。

三回戦は種子島中央。同じくコールド勝ちで勢いに乗る相手ですが、ベンチ外も含めたチーム全員で勝利を求めて行って下さい!