台風直撃の昨日とは打って変わって快晴の今日、秋季県大会も3日ぶりの再開となりました。
本日の鹿実はどうだったでしょうか?早速試合を振り返ることにしましょう!
第143回九州地区高校野球大会 鹿児島県予選
3回戦
鹿実 021 235=13 H11 E0
種中 010 002=2 H5 E3
[鹿]松元、河野、叶ー玉田
[種]高橋陸、川元ー立石
鹿実・松元投手、種子島中央高橋陸投手と、お互い左投手の先発となった一戦。
初回こそ両チーム無得点に終わったものの、2回から試合が動きます。
鹿実が4番吉木選手の安打を足掛かりに川口選手の長打、玉田選手の犠飛で2点を先制すれば、その裏種子島中央もすかさず反撃。ツーアウトから6番立石選手がレフトオーバーのツーベースを放つと、続く川元選手がショート後方に落とすタイムリーで1点を返します。この時点ではまだ互角の様相でした。
しかし、3回以降は鹿実が突き放す一方的な展開に。
ヒットや四死球、エラーで出したランナーを堅実に送り、低い弾道の打球で野手の間を抜くという鹿実らしい攻めが炸裂し、終わってみれば11安打13得点。
守っては松元投手が5回を投げ3安打1失点と、先日の福留投手に続く好投で勝利に貢献。
最終回こそ河野投手、叶投手の二人で2失点を喫したものの、守備に関しては大きな綻びなく記録上もノーエラー。
6回コールドの完勝で、鹿実がベスト16進出を決めました。
「低く鋭い」打撃、ここにあり
今日の鹿実打線は13得点。しかし、記録ほど大味な印象はありませんでした。ここに鹿実野球の特徴が現れていると感じます。
今日は長打が三本出ましたが、それ以外の安打は野手の間を抜くゴロやライナー性の打球ばかり。鹿実の試合記事や監督、選手のインタビュー記事によく出てくるコメントが「低く強い打球」というキーワードです。
とにかく低く強い打球を相手野手陣に浴びせ続ける事。強い打球が野手の間を抜けたらヒットになり、正面の打球でも処理も難しくなる。たとえアウトになったとしても相手守備陣は神経を使うため、ボディーブローのように効いていく。
今日はそんな鹿実らしいスタイルが生んだ13得点といえるでしょう。相手の3つのエラーも単純な向こうのミスではなく、こちらが仕掛け続けた結果生まれたもの。
今日も要所要所でキッチリバントが決まってましたし、攻撃に関しては言う事がありません。
この攻撃力が、次戦以降の強豪校相手にどこまで通用するのか。
とにかく自信を持ってこのスタイルを貫いて欲しいところです。
期待され続けたエース候補
この世代で最初に公式戦、昨年秋の一年生大会の先発を任されたのは松元投手でした。
一個上の世代に混じってベンチ入りする事も多く、期待された存在でしたが。。。その一年生大会を含め、ここまで結果を出してきたとは言いがたいのも事実です。
一年生大会の城西戦では初回いきなり6失点と試合を壊し、今年のNHK旗は決勝のマウンドを任されるも1回持たず降板。1ヶ月前の新人戦でも2回で降板を命じられるなど、期待に答えられない日々。
それだけに今日の試合も心配でしたが。。。結果は5回3安打1失点。充分先発の仕事を果たしたといえるでしょう!
ここまで苦悩の連続だった彼が、ようやく結果を出してくれたことが素直に嬉しいです!
投球フォームには躍動感があり、リズムに乗れている時はボールも走っていました。
もちろん課題はいくつかあります。ボールを散らし過ぎてボール先行になる場面や、ランナーが出るとリズムを崩す点。技術的にもまだまだ試行錯誤を繰り返している段階なのでしょう。
ただ、このチームの弱点は何度も言うように、試合での経験。だからこそ一試合一試合を大事にして成長していくしかない。
松元くんもそうです。課題は山ほどあるとは思いますが、今日の投球を見る限りでは決して力の無い投手とは思いません。反省点もあるでしょうが、まずは今日の投球を自信にして、今後の成長に繋げて欲しいです。
陰の立役者
その松元投手の好投を支えたのが、初戦に引き続きスタメンマスクを被った玉田選手です。
大会直前のエントリー変更でベンチ入りを果たしながらも、ここまでフル出場。
守備時に彼を注視すると、一球ごとに投手へ大きなジェスチャーを送ってコミュニケーションをとっているのがわかります。
ボールが要求より浮いてきた時は両手を使い「低く低く」、力んで投げてしまった時は両肩をぐいっと上げ「力入れるな、リラックス」といった具合に。投手は視野が狭くなったり、自分の世界に入り過ぎて「なんとなく」放ってしまう瞬間があるものですが、そういった不用意な投げミスを防ぐ為にも捕手のボールに対するリアクションは非常に大事です。
一見当たり前のような事ですが、これが出来ていない捕手は意外と多い。
よくリードや配球ばかり語られがちな捕手ですが、それより大事な事は「いかに多くのものが見えているか」だと私は思います。
そういった意味で、玉田選手は良く投手の事が見えて、気遣える捕手だと感じました。投手が安心して投げられるような捕手ですね。
そんなところを買われてのスタメン抜擢なのかもしれません。捕球面でも低めのワンバウンドを身体から止めに行ってましたし、打撃でもいい働きを見せていました。
ただし、彼にも課題はあります。それは捕手としてもう一つ大事な要素の送球。
イニング間の送球を見ると、非常にワンバウンドの送球が多い。もちろん高く浮くよりはいいのですが、彼の場合野手がやや捕りにくい位置でバウンドしている事が多かったと記憶してます。実際にこの日は複数盗塁を許してしまいました。
よりチームの信頼を得るためにも、「刺せる捕手」を目指して努力してほしいです。
一年生投入
初戦は途中出場の平選手を除き出場選手のほとんどが二年生でしたが、この試合ではサード小堺選手、ショート坂本選手と内野の要所に一年生を配置してきました。打撃に関しては2人ともノーヒットながら、それぞれバントを決め得点に貢献。守備では軽快な動きでキッチリ打球を処理してました。
特に坂本選手のグラブ捌きは非常に柔らかく、現時点でレギュラー入りも期待できそう。
同ポジションの藤村選手も強力なので、負けないように切磋琢磨して欲しいです。
そして、期待の選手として既に名前を挙げていた高田選手も、今日は代打での出場。結果はサードゴロながら、打点1をあげました。
チームを強くするためには、上級生だけでなく下からの突き上げも重要です。刺激がなければ、チームは活性化しません。
彼らから一人でも主力となる選手が現れることを願ってます。
少人数チームの健闘に思う事
ここでは相手チームの事にも触れたいと思います。
この日戦った種子島中央は、部員が20人に満たない少人数ながら、非常に魅力的なチームでした。エース高橋陸投手はボールの精度が上がればまだまだ伸びそうだし、二本の長打を放った立石選手もまだ一年生。
そして何より、ベンチ全員で声をかけ合い、向かって行く気持ちを絶やさない姿勢に好感が持てました。
初戦で戦ったシード国分中央も近年実力をつけてきた新鋭ですが、今年のベンチ入りは僅か16人。残念ながらこういった部分でも、少子化や野球人口減少という現実を見せつけられる事が多くなりました。
ですがそんな苦しい状況でも悲観せず工夫してチーム作りに取り組み、強豪校とも堂々と渡り合える地方公立校が、県内にはたくさん存在します。
近年は離島からも県大会で勝利をあげるチームが増えてきましたが、その裏では選手や関係者の方々の並々ならぬ努力があったからこそ。この事を声を大にして伝えたい。
私は鹿児島の高校野球ファンとして、こういったチームが多い事を誇りに思います。
そのようなチームのためにも。。。といったら変かもしれません。
ただ、私は鹿実ファンとしても、鹿児島の高校野球ファンとしても思う事は、“鹿実にはこれからも強く在り続けてほしい”ということです。
鹿実には、今も昔も県内のあらゆるチームの憧れであり、目標であり、倒すべき強敵であってほしい。
勝ったら「あの鹿実を倒した」と歓べるような、負けても「鹿実と戦えて良かった」と思えるような。。。
この夏の甲子園で戦った鹿実には、破ってきた相手チームやライバル校のOBから多くの声援が贈られました。ファンとしてとても嬉しかったですし、だからこそ初戦で敗れた事が悔しくて仕方ありませんでした。
常に県代表として甲子園で戦う事を目指している以上、県内のライバルたちの思いを背負えるチームを目指して欲しい。
そのためにはもちろん、大前提として結果が必要です。
鹿実を含めて鹿児島県代表はここ数年1勝止まり。甲子園での初戦連勝記録も今年で途絶えました。
鹿実が止めてしまった以上、それを挽回するのは鹿実じゃなきゃいけない。これはファンとしてのエゴかもしれませんが。。。
「強い鹿実」であるためには、今大会は次からが正念場です。ここからは強豪校ばかり。
あの最悪のスタートから這い上がった彼らが、どこまで戦う事が出来るのか。
ここまで来た以上、次で終わって欲しくありません。
次も勝って、そのまた次の試合を迎えましょう‼︎