鹿実野球部、九州王者を倒し夏初戦突破!!

◆第104回全国高校野球選手権鹿児島大会

1回戦

鹿児島実010 000 000 01=2 H8 E0

神村学園000 100 000 00=1 H6 E3

【投ー捕】

鹿:赤嵜ー濵﨑

神:朝吹、内掘ー富﨑

 

本当に、選手の皆さんがやってくれました。

組み合わせ抽選でどよめきを起こしたこのカード。甲子園常連校であり、今年の春の鹿児島、九州王者である神村学園との2年連続の対戦。ただ、昨年がお互い勝ち進んだ準決勝の舞台であるのに対し、今回は一回戦。ここに一年間順調に勝利を積み重ねた神村に対し、怪我人続出で不本意な戦いに終始した鹿実という明確な違いが存在しました。下馬評は神村優位で、宮下監督ですら「胃が出るようなプレッシャーで怖かった」と口にするほど。私もこの日が来る事を純粋に楽しみにできたかと言えば、そうではありませんでした。

情けない話、「もし負けたらどうなるのだろう」そんな事を戦う前から考えたことも一度や二度ではありません。

しかし、グランド上の鹿実ナインはなんと勇敢で逞しかったことでしょうか。

「夏の借りを夏に返す」

このチーム内に浸透したスローガンに嘘偽りはない。まるで選手たちがそれをプレーで体現しているように思いました。

 

今日の試合、まず赤嵜投手の熱投に触れずには語れません。

昨年の神村戦は勝利こそしたものの、彼にとっては打ち込まれた苦い経験でしかありません。その後疲労骨折が発覚し、年明けまで登板できない苦しい一年間になり、エースを失ったチームも低迷。ただ、夏のリベンジを誓ったチームはエースの復帰を待ち、そしてこの日のエースはその信頼に見事に応えました。11回完投1失点。失点を喫した4回以外は先頭打者の出塁を許さず、明確なピンチも8回のみ。持ち味の速球とスライダーに加え、右バッターの外に逃げるチェンジアップのような球を有効だと感じました。マウンド上で動じず淡々と投げるその姿に、私はエース復活を確信しました。

また、彼を支えた女房役の濵﨑捕手の働きも見逃してはいけません。要所要所ではマウンドに向かい間をとるなど扇の要としてしっかり役割を果たしてましたし、なんと言っても延長11回の勝ち越しタイムリーも彼の一打。打撃を期待されながらも、捕手としての守備力を不安視され一時は外野にコンバートされた選手ですが、この試合ではほとんどそのような不安を感じさせませんでした。この先も攻守共にチームを勝利に導く活躍を期待していきたいところです。

さらに、ショートで再三に渡る好プレーを見せた一ノ瀬選手を中心とした内外野の守備の堅さも見事という他ありません。この守備の安心感が、結果的に勝利をもたらしたのだと思います。

とはいえこの結果は紙一重のもの。相手の神村は間違いなく強いチームでした。これまでのネームバリューや九州大会優勝という実績からそう感じるのではなく、この一戦だけ見ても選手個々の力や鍛えられた能力は見てとれます。私は鹿実野球部には、今後この激闘を戦った相手チームの強さを証明する戦いをしてほしいと強く願います。それが九州王者を降したチームの責任であり、戦ったライバルへの最大の礼儀だからです。

 

夏一本に絞り、プライドを捨てて戦ってきたこの一年。どんな逆風にも耐え抜いてきたこのチームの苦労が、結果として報われるようファンとして祈っております。

 

 

 

最後に余談ではありますが、ここのところ更新が滞ってしまっていた事についても触れさせていただきます。

これは正直に言うと今季の鹿実の不調がショックだった事もありますが……私自身の身の回りで大きな変化があり、野球にのめり込めない時期があったのが理由です。心機一転新しい事に挑戦しようと思っても跳ね返され、挫けそうな時期もありました。それでも、鹿実野球部に対する情熱は失う事はありませんでした。

今日の試合を見て、挑戦する事とはどういう事か。戦う覚悟とはいかなるものか。それをひと回りも下の野球少年たちに教えられたように思います。鹿実野球部選手の皆さんには、素晴らしい試合を、そして運命に立ち向かう勇気を与えてくれた事に感謝申し上げます。

 

次の試合も、心からの声援を贈るつもりです。キバレ!

 

鹿実野球部、接戦を連勝!次戦強敵へ挑む

◆第150回九州高校野球鹿児島大会

二回戦

鹿児島工 000 100 000=1

鹿児島実 000 000 12x=3

【投ー捕】

鹿工:椎原ー小村

鹿実:筏ー駒壽

 

三回戦

鹿情報  000 002 000=2

鹿児島実 000 200 10x=3

【投ー捕】

情報:盛ー川畑

鹿実:筏ー駒壽

 

ここ2試合はいずれも重苦しい投手戦。リアルタイムで速報をチェックしながら気が気じゃありませんでした。

いずれの試合も相手チームの左腕投手を打ちあぐねる試合展開。ただ、そういった苦しい展開でも勝ち切る事ができた事は非常に価値があるといえるでしょう。それでは、試合映像を見た感想を簡単に述べていきたいと思います。

 

悪夢を糧に躍動する左腕と、エースの復帰

今大会に入ってから全ての試合で先発マウンドを任されたのは、背番号8の左腕筏投手です。

昨年秋は背番号1を背負いながらも、鹿屋中央戦ではリリーフに失敗し敗戦投手に。誰よりも敗退の悔しさを知る選手ではありますが、正直ここまで投手として重用されてくるとは思いませんでした。当初は宮下監督の「やられた分はグランドでやり返せ」というメッセージにも感じられます。

しかし、その投球内容に目をければ、私はこの起用が単なる情だけが優先された采配ではない事に気がつかされました。実際今大会における筏投手の安定感は抜群。元々得意だった横の変化球の出し入れに加え、縦に落ちる球で空振りが取れるようになるなど、投手として新たな姿を見せてきています。決して速球で押すタイプではないものの、以前よりも球の力が増し躍動感が出てきました。抜ける球が目立つ部分は課題でしょうが、彼が先発投手として目処が立った事はチームとしても大きな戦力アップです。

さらに、三回戦の鹿児島情報戦では6回途中から赤嵜投手が登板。昨年夏決勝以来の公式戦登板となりましたが、一打勝ち越しの場面を難なく切って取りました。マウンド上でのクールな立ち振る舞いと、内で燃やす闘志、そして力強い速球にキレのあるスライダーは以前と同じ。打席でもいきなり勝ち越しタイムリーを放って見せるなど、そのポテンシャルが健在である事を示してくれました。ファンとしては心強い限りです。ここからは貴重な夏の大会の経験者として、これまで以上にチームを引っ張ってくれる事を期待したいですね。

 

下級生の躍動と、主砲の一振り

この2試合では、下級生ながらスタメンで起用された二人の選手の活躍にも目を奪われました。ショート一ノ瀬選手と、ライト植戸選手です。

この学年は昨年秋の1年生大会の本戦出場を逃しており、残念ながらプレーをチェックする機会に恵まれませんでした。失礼ながら、「もしかしたら例年と比較して力が劣る代なのでは……」と懸念していましたが、スタメンを任されたこの二人に関しては、少なくとも現時点で鹿実のレギュラー争いに参加する力を間違いなく有しています。

一ノ瀬選手のショートとしての身のこなし、送球含めた安定感は、ライバルチームのショートと比べても全く遜色がありません。また打席でも複数安打を放つなど、攻守共に存在感を発揮し、徐々に打順を上げてきています。一方植戸選手は中軸を任されるだけあって、打席で放つ雰囲気は上級生顔負け。凡退になった打席でもきっちり捉えた打球も多く、能力の高さが窺えます。鹿児島工戦では犠打、エンドランにも対応するなど、チームプレーも無難に熟していました。彼ら下級生が結果を出せば、上級生も負けられないという気持ちになるでしょう。学年を超えた競争が生れることが、チームの活性化に繋がるはず。彼らに続く選手が出てくる事も期待したいですね。

そして、忘れてはいけないのが、主砲永井選手の存在です。二回戦では1点ビハインドの終盤に、貴重な同点アーチを市民球場防級ネットまで飛ばして見せました。そのパワーは圧巻です。元々下級生時代から主軸候補として期待されていながらも確実性に課題があり、新チームになってからレギュラーを獲得した選手。ただ、彼の強烈な打撃は、間違いなくチームにとって欠かせない大きな武器となり得るでしょう。

これまでの鹿実にも、「強打者」と呼ばれるバッターはいました。具体例を挙げれば、綿屋樹選手や西竜我選手、昨年の城下拡選手などです。ただし、彼らは長打力を秘めながらも、本質的には鋭いライナーで野手の間を抜く「パワーのある好打者」といったタイプでした。永井選手はそれらの先輩とは確実性こそ劣るものの、打撃スタイルや打球の質は一線を画します。思い切りの良さ、カチ上げるようなフォロースルー、打球の角度は強打者のそれと言えるでしょう。彼のような打者の台頭を待ち侘びてました。これからは警戒が強くなり、簡単には打たせてもらえなくなるでしょう。それでも永井選手には持ち味を失う事なく、一振りで相手バッテリーにプレッシャーを与える存在を目指し続けて欲しいと願います。

 

さあ、次戦は強敵神村学園が相手。昨夏のリベンジに燃えてくる相手にどう立ち向かうか。ファンとしては非常に楽しみな一戦となりそうです。

 

 

 

 

 

鹿実鹿実野球部、初戦大勝も……真価の問われる2回戦

◆第150回九州高校野球鹿児島大会

一回戦

武岡台     000 00=0

鹿児島実 673 0x=17

【投ー捕】

武台:吉田、大木場、福森、山野、鮫島、本多ー渕脇

鹿実:筏、松元ー駒壽、濱崎

 

いよいよ今年の鹿実野球部が始動しました。12月から3月頭までは高校野球界はオフシーズンに入るため、この時期に試合を見ることができないのは例年通り。ただ昨年秋は鹿実が早期敗退したことに加え、久々に一年生大会本戦出場を逃す不本意な結果に。その上地元開催の九州大会では鹿児島代表の大島が準優勝という立派な戦績を残しました。これに対しては鹿児島高校野球ファンとしては嬉しさと同時に、私は鹿実ファンとしてはその場に鹿実野球部が立てない事への寂しさを抱かずにはいられなかったのが正直な気持ちです。

なので今年は春季大会の開幕を例年以上に待ち侘びたように思います。ファンにとって悔しい思いをした昨秋は、当然選手にとってはそれ以上の屈辱だったことでしょう。今年の夏こそは、その悔しさが報われる事を強く願います。

さて、今大会の初戦ですが、相手はかつて夏の決勝まで勝ち進んだ事もある武岡台。ここ最近もベスト8に顔を出す実力校でしたが、結果は見事な5回コールドゲームの圧勝でした。幸先のいいスタート……と言いたいところですが、この17-0というスコアを額面通り評価する事は難しいでしょう。相手投手陣が鹿実打線に与えた四死球は実に13個。初戦という事もあり、相手チームが地に足がついていなかった事が窺えます。選手、首脳陣はもちろん自覚しているでしょうが、この試合に関しては忘れて次戦に集中してほしいところです。

その次戦の相手は、甲子園経験校でもある鹿児島工。今季のチームも昨秋優勝の大島と接戦を演じるなど、そう簡単には勝たせてくれない事が予想されます。このチームをしっかりした形で降してこそ、チームの前進に繋がるはずです。コロナ禍における蔓延防止措置期間もあり、以前ほど練習時間を割けなくなったのはどのチームも同じ。だからこそ実践経験が何よりの練習となります。次戦は結果はもちろん、いい形での試合運びを期待してます。

 

気になった点、未知数な新チームへの期待

私が注目していたのは、スターティングラインナップにどういった9人を選ぶのかという点。秋の敗戦を受けてのメンバー変更はもちろんの事、選手の成長や伸び悩み、故障者の状態など、考慮しないといけない要素も多く全く予想できませんでした。

初戦のマウンドに立ったのは昨秋に引き続き筏投手。昨秋誰よりも悔しさを味わった彼に年明け初戦を任せるあたり、奮起を願う宮下監督の思いのようなものが伝わってくるように思います。一方投打ともに今年の中心選手だと見ていた赤嵜投手は試合を通じて出番がありませんでした。単なる温存なのか、状態面に問題があるのかわかりませんが、次戦以降は出場機会がある事を願います。

赤嵜選手が入るものだと見ていた上位打線には大きな動きがありました。主軸級の打力があると評される濱崎選手がトップバッターに据えられ、主軸の3番には新2年生の植戸選手を起用してきた事は、先に全く予想ができないとは言ったものの驚きました。昨年のチームも主軸クラスの強打者平石選手をトップに据えてから打線が機能した事から、宮下監督は同じような役割を濱崎選手に期待しているのでしょうか。

また、3番の植戸選手起用ですが、この時期の鹿実で下級生が中軸を担っていた例といえば、過去には城下拡選手、西竜我選手、綿屋樹選手と言った錚々たる面々ばかり。基本的に3年生中心のチーム編成をする鹿実にあって、下級生が打線の中心を担うのは容易ではありません。それだけ期待の高さが窺えます。実際のプレーを見ていないだけに、早くこの目で確認したい思いが強まりました。

長年のファンとしてもなかなか試合観戦の機会が少なく、未知数な部分の多い今季の鹿実ナイン。それはつまり、見る度に新たな発見があることを意味します。今年も例年通り、いや例年以上に鹿実を見たいという気持ちが燃え上がってきました。だからこそ、この春は一戦でも多く彼らのプレーを可能な限りチェックしていきたいと思います。

 

さあ、プレイボールだ。グランドで精一杯暴れて来い!

 

魔の9回、成す術なく……鹿実野球部、選抜への道断たれる

◆第149回九州高校野球鹿児島大会

二回戦

鹿屋中央 000 100 006=7

鹿児島実 100 000 010=2

【投】

鹿屋:村山、永田

鹿実:井上、筏、久留須

 

速報を見ながら気が気でなかった今日の午後。8回裏の勝ち越しの報を聞いて安堵した束の間の悲劇。

使い古された言葉で「これが野球の怖さ」という表現がありますが、まさにそうとしか言い様のない展開でした。勝ち試合の9回のアウトを捕る事が、これほど難しいとは……

現時点で冷静に振り返る事も、この結果を受け入れる事も出来ているかどうか怪しいです。しかし、だからこそ今の感情が消えないうちに綴っておこうと思います。

 

選抜が断たれた、九州を逃した、樟南とのライバル対決を逃した……そんな事以上に、この一戦をこういった試合展開の末に敗れてしまった事が率直に悔しいです。相手は強豪鹿屋中央、当然簡単に勝たせてくれない事も理解していたつもりです。しかし、数人の主力を欠いていたとはいえ地力では優っているはず、と心の中で思っていたのも事実。当然、勝負はそんなに甘くはありませんでした。この春の決勝で破った鹿屋中央が、その時のリベンジに燃えていないわけがありません。今日の9回の逆転劇は、まさに春の返り討ちといったところでしょうか。

やるかやられるかが勝負の世界。今回は鹿実が「やられる側」となってしまいました。ならばやるべき事ははっきりしています。この悔しさを忘れず力に変えて、大一番でやり返す事。この敗北こそが、今年の鹿実の進むべき道標となる事でしょう。

最終回に登板し、なかなかアウトを取れないまま敗戦投手となった筏投手、そして慣れない捕手としてその場面の当事者となったキャプテン駒壽選手、何よりここまで苦しい試合を強いられる要因となった打線の得点力不足。反省点は山ほどあります。そして、それを鍛え直す時間もみっちりあります。

この試合で今年の鹿実の野球が見納めになるのは残念ですが、捲土重来を期して立ち上がり反撃に転じる皆さんの戦う姿を期待して来春を待とうと思います。

 

悔しさを知るからこそ、強くなれる。

 

 

【秋季高校野球県大会】新生鹿実、逆境スタートもコールド発進!次戦強豪に挑む。

◆第149回九州高校野球鹿児島大会

一回戦

松  陽 010 000 0=1

鹿児島実 101 032 1x=8

【投ー捕】

松陽:山下、丸田、山下、丸田ー中村、野田

鹿実:筏ー駒壽

 

更新がすっかり遅くなってしまい申し訳ありません。秋季大会が開幕した事ですし、これからなるべく投稿頻度を上げていこうと思います。

惜しくも決勝で敗れ甲子園を逃した夏から早2ヶ月。例年とは違いシード権を争う地区新人戦が行われなかったため、シード校なしの完全フリー抽選となった今大会。鹿実鹿屋中央れいめい、そしてライバル樟南といった、通常ならばシードに名を連ねるような強豪犇めくブロックに入りました。来春の選抜をかけて戦う九州大会に出場するためには、この激戦区を突破して決勝まで辿りつかなければなりません。決して楽な道のりではありません。しかし、それは鹿実と同じ組に入ったライバルにとっても同じ事。厳しい戦いを制してこそ、真の栄光を掴めるというもの!

とは言いつつも、ファンとして本音を言えばもっと散らばってほしかった気持ちもありますが……こうなった以上腹を括るしかありません!痺れる戦いを楽しみながら、鹿実の勝利を信じて応援しようと思います。

 

不在の主力と、大胆コンバート

さて、先日の初戦に関してですが……正直な話、コメントする材料がありません。試合中継もなく、無観客試合により観戦した方の話を聞けるわけでもなく、夏と違いメディアの扱いも小さい……「この選手がどうプレーして、どう貢献したか?」という事が全く分からないため、試合内容を語る事も難しいのが率直なところです。ただ、登録されたベンチ入りメンバーや試合に出場した選手の起用法から感じた事はいくつかあったので、今回はその部分を述べていきたいと思います。

現メンバーの中で唯一夏の時点でレギュラーだったのは赤嵜智哉選手。投手としては左腕からキレのある球を投げ強豪相手にも好投、野手としても主軸を任されるなど、新チームでは間違いなく投打の柱になるであろうと疑いなく信じていました。ところが登録された背番号は10番。試合でも登板はおろか打者としてもスタメンには名前がなく、終盤にようやく代打で出てくる程度。こういった起用法から察すると、何らかの故障を抱えていると見た方が自然でしょう。「〇〇が故障した」といった話はチームにとっても不利益になるため可能な限り避けたいところですが、彼は多少の不調であっても試合に出なければならない立場の選手。そういった選手が二桁の背番号を背負い、限定された起用法での出場となれば、故障の可能性を排除するのはむしろ不自然です。同じ理由でベンチ入りメンバーに名前の無い森山遼耶投手も、登板ができる状態では無いと推測します。昨年の一年生大会決勝では背番号1を背負い完投していますし、本来なら赤嵜投手がマウンドに上がれない場合真っ先にエース候補として名前が挙がるのは彼のはず。にもかかわらずベンチに入れない状況を考えると、その状態を心配せずんにはいられません。しかし新チームは始まったばかり。なんとか夏までに戻ってこれるよう、順調な回復を祈りたいと思います。彼は今年の鹿実に絶対に必要な選手ですから。

二人の主力投手を欠く中、重要になってくるのは投手をリードする捕手の存在です。リード……というと配球や打者との駆け引きなどを思い浮かべがちですが、それ以前に捕る、止める、そして走者を刺す送球、という部分。ここがしっかりしていないと、投手だけでなく味方の野手も不安を抱き、守備からリズムを作れません。だからこそ「扇の要」とも表されるのですが、当初私はそこに一年生大会でマスクを被った濱崎綜馬選手か、もしくは旧チームで背番号12を付けながらブルペン捕手を熟していた主砲の永井琳選手を起用するものだと見ていました。

しかし、実際に背番号2を背負った選手は予想もしなかった駒壽太陽選手でした。180cmの上背があり運動能力と打撃力に長けた彼は、旧チームでは昨年秋からショートのレギュラーとして期待されスタメンを任されていた選手でした。ですが、ショートとして肝心の守備では送球の不安からミスを連発。春以降は徐々に出場機会を失っていきました。そんな彼を一体どのポジションで使うのかは、私としても注目していました。能力を買って再びショートを任せるか、もしくは打撃を優先して負担の少ないポジションに回すのか……と。それがまさか、さらに守備面での活躍が重要視される捕手になるとは、驚かずにはいられませんでした。一方でこれはベンチやチームにおける彼への期待の高さとも言えるでしょう。一年生大会同様に主将を任され、先日の初戦では3番に座りタイムリーも放つ活躍を見せていました。「本当の意味での中心選手に成長してほしい」といった思いが、彼を起用した宮下監督の胸にはあるのではないでしょうか。プレーを見ていないので実際のところはわかりませんが、これから覚えないといけない事も多いでしょうし、本人も重圧や負担を感じている事でしょう。しかし、この重責を背負う事によって、見えてくるものや得られるものは必ずあるはずです。何より彼は、中学時代から先代の主将であり絶対的正捕手だった先輩、城下拡選手の背中を見てきたわけですから。きっと彼も、素晴らしい選手、そしてチームリーダーへと成長してくれる事でしょう。新生鹿実野球部を牽引する彼の姿を見るのが、ファンとして待ち遠しいです。

組み合わせも含め、今年も厳しい船出を強いられる事となった鹿実野球部。ですが、彼らならこんな逆境でも力に変えてくれる事でしょう。

次戦の相手は甲子園経験のある強豪、鹿屋中央。思い出されるのは昨年秋、同じ二回線で強豪鹿児島城西と当たり敗れ去った事です。昨年のチームはそこから長い冬を超えなければなりませんでした。今年は同じ思いをして欲しくありません。この強敵を打ち破り、チームが勝ち進む事を信じています。

 

一戦必勝!栄光はその先にある!

 

 

鹿実野球部、甲子園出場へあと一歩届かずも……「痺れる夏」をありがとう。

結果は残念。しかし、その戦い様は見事でした。まずは準決勝と決勝の二試合を振り返ります。

 

第103回全国高校野球選手権鹿児島大会

◆準決勝

神村学園001 004 000 3=8

鹿児島実110 000 111 4x=9

【投ー捕】

神村:泰、内堀ー前薗

鹿実:赤嵜、大村、赤嵜ー城下

【長打】

二:井戸田、平石、板敷(鹿実)、甲斐田、長谷2(神村)

三:松岡(神村)

【試合経過】

鹿実と神村、夏の大会では6年ぶりとなった両雄の対決。鹿実サイドが先発マウンドに送ったのは、背番号7の2年生赤嵜投手。それに対して神村が立てたのはエースナンバーの3年生泰投手。非常に対照的な出方を見せた両軍ベンチでした。

試合は初回から鹿実が優位に立ちます。1回裏、鹿実は二死から主将城下選手が四球を選ぶと、4番井戸田選手が先制のタイムリーツーベースを放ち先制。いきなり相手の出鼻を挫くと、続く2回裏もリズムを崩した泰投手の制球が乱れ、4つの四死球によりさらに1点を挙げます。しかし、ここまで苦しめながらも泰投手をノックアウトさせる事には至らず。この試合最速150キロを記録する剛腕の前に、鹿実打線はしばらく圧倒されます。

一方の神村は、3回に反撃開始。ヒットと犠打で得点圏に走者を置くと、今大会絶好調の強打者1番甲斐田選手が右中間に技ありの二塁打を放ち一点差に。この後も赤嵜投手は神村の強力打線のプレッシャーに晒されながらも、バックが好守で盛り立てながら序盤5回までなんとかこの1点だけに留めます。

グランド整備明けの6回表、ここで強打を誇る神村打線が鹿実に一気に襲いかかります。先頭福田選手こそ三振に仕留めた赤嵜投手でしたが、4番前薗選手と5番中島選手に連打を許すと、続く花倉選手を歩かせてしまい一死満塁。この局面で7番長谷選手、8番松岡選手に連続長打を許し一挙4失点。今大会無失点と抜群の安定感を誇った赤嵜投手でさえも飲み込む神村打線の脅威を前に、鹿実ベンチは継投の決断を下します。ここでマウンドを託したのが背番号1、3年生大村投手でした。これ以上失点が許されない場面を任されたエースは、相手の背番号1を気迫で三振に仕留め見事ピンチを凌いでくれました。

一気に3点のビハインドを背負う形となった鹿実ですが、ここからしぶとさを見せます。7回には城下選手、8回には福崎選手がそれぞれタイムリーを放ち一点ずつ返せば、エース大村投手も毎回ランナーを出しながら神村打線に追加点を許さず、1点差で9回裏の攻撃へ。

鹿実は先頭の大村投手に代打末吉選手を送ると、これが四球となりノーアウト一塁。続く城下選手は凡退となりますが、ここから4番井戸田選手、5番板敷選手の連続ヒットが飛び出し同点。試合の決着は延長戦へ絡れ込みます。

10回表。大村投手に代打を送った関係で鹿実はレフトの守備についていた赤嵜投手を再びマウンドに送るスクランブル体勢で臨みますが、一度攻略した投手に対して神村打線は容赦ありませんでした。連打とバント処理失敗により一死満塁のピンチを招くと、6回に逆転打を浴びた長谷選手にまたしても右中間に運ばれ3点差。ここで勝負あり……誰もがそう思っても仕方ない展開。それでも鹿実の闘志は全く衰えを見せませんでした。

一死から福崎選手、平石選手が四球を選べば、代打の木村選手はショートへ痛烈なライナーを放ちます。記録こそエラーとなったものの、執念が乗り移ったような強烈な打球でした。これで一点を返せば、続く城下選手がタイムリー、井戸田選手もヒットで繋ぐと、最後に決めたのは板敷選手でした。変わった2年生左腕内掘投手に対しても迷いなく振り抜いた打球はセンター頭上を超える2点タイムリーとなり、これでサヨナラゲーム。文字通りのシーソーゲームを制した鹿実が、前年まで連覇を果たしていた王者神村を撃破して決勝に駒を進めました。

 

決勝

鹿実000 000 000=0

樟南100 310 02x=8

【投ー捕】

鹿実:大村、赤嵜ー城下

樟南:西田ー長澤

【長打】

二:小倉(鹿実)、尾崎、下池(樟南)

【試合経過】

伝説の引き分け再試合となった2016年以来5年ぶりとなった両校による決勝。今季は直前のNHK旗ベスト8で延長タイブレークの末鹿実が勝利するなど対戦経験もあり、緊迫した好ゲームが予想されました。

しかし、試合は序盤から樟南が主導権を握ります。鹿実先発の大村投手は初回に2番尾崎選手と3番下池選手の連続長打を許し、早々先制を許す苦しい投球。ボールはやや高く浮いたものの、甘い球をきっちり捕らえる樟南打線はこの後も鹿実投手陣を苦しめていきました。反撃したい鹿実打線でしたが、その前に大きく立ちはだかったのが県内ナンバーワンの呼び声高い樟南のサウスポー西田投手でした。この日は140キロを超える球はほとんど無かったものの、切れのある速球と多彩な変化球、抜群の制球に加え、NHK旗以降に鹿実対策として取得したというスプリットが冴え、鹿実打線に連打を許してくれません。

すると4回裏、2回以降ランナーを許しながらも耐えてきた大村投手が捕まり始めると、鹿実ベンチは赤嵜投手への交代を決意。それでも樟南の勢いは止まらずこの回4失点。結果的にこの失点が試合の行方に大きく影響を与えるものとなりました。

以降も鹿実は西田投手相手に反撃の糸口さえ掴めません。特に神村戦でも活躍した頼みの主軸城下選手、井戸田選手、板敷選手の3人はこの試合を通じて無安打。最終回は末吉選手、上西選手と代打二人でチャンスを演出する意地こそ見せましたが、最後までホームを踏めず最終スコアは0−8。攻守に隙のない樟南に圧倒された鹿実は、甲子園を目前に惜しくも敗れ去る事となりました。

 

宿敵に対し劇的勝利も、またも樟南の壁は厚かった

というわけで、準決勝と決勝の2試合を振り返ってきました。神村戦の執念の逆転勝利と、ライバル樟南相手の大敗。正直、私の中では未だにこの2試合で掻き回した感情を整理できずにいる気がしています。私は前回エントリーで「鹿実らしく勇ましく戦い、痺れるような試合をしてほしい」と希望しましたが、鹿実選手たちはその期待に十二分に応えてくれました。特に神村戦、諦めてもおかしくない展開から何度も息を吹き返す戦いぶりに、私は思わず画面に向かい叫び声をあげたものです。見る者の心を熱く震わせる戦いは、やはり何年たっても変わらない鹿実の魅力です。これほどの戦いを繰り広げるチームが、甲子園という大舞台でどんな野球をしてくれるのか。まだまだ選手たちの成長を見たいーーーそんな期待ばかりが膨らんで行きましたが、残念ながらそれはもう叶いません。

やはり、決勝の舞台での樟南は手強かった。過去のエントリーでも述べましたが、この鹿児島県内において勝利に飢えた樟南ほど恐ろしいチームはありません。樟南はこの一年間一度も頂点を経験しておらず、選抜大会出場をかけて臨んだ九州大会でも初戦敗退。NHK旗では鹿実とのライバル対決を延長タイブレークの末落としています。この敗北の一年が、樟南ナインの「夏は絶対負けるものか」という執念を生み出したのは間違いないでしょう。もちろん、甲子園に行きたい気持ち、負けたくない気持ちは鹿実も同じだったはずです。ですが樟南には、過去鹿実の夢を絶った年と同じく西田恒河投手という絶対的エースが君臨し、さらに彼を支える守備力も磐石でした。この投手を打ち崩すために鹿実も研究と対策を練ってきたはずですし、幼馴染である城下主将は内なる闘志を燃やしていたはずでしょう。それでも、相手がこちらを倒すために蓄えてきた力と策が、今回は上回った。勝負とはそういうものです。

次こそは、鹿実がーーーそう言いたいところですが、最後の夏の大会で敗れてしまった以上このチームで樟南に挑む事はできません。鹿実が破ってきた対戦校も、同じ思いをしてきた事でしょう。これが高校野球。敗れてしまった以上は、勝者に思いを託すしかありません。今年の樟南ならばきっと、甲子園でその名を轟かせてくれる事でしょう。健闘を……いや、ここまで鹿実を圧倒したチームですから、今年こそは鹿児島県代表としての目に見える形での「成果」を期待したいと思います。

 

18人の軌跡

本当はこのブログももっと早く更新するつもりでした。それができなかったのは、決して鹿実の敗退を受け入れられなかったからではありません。この一年間素晴らしい戦いと成長ぶりを見せてくれた選手たちを思い返せば、言葉にしきれないほどの想いが溢れてきたからです。未だにその気持ちをまとめきれている自信はありません。鹿実としては少ない18人の3年生たち。しかし一人一人は強烈な個性を纏っていて、非常に魅力的な選手ばかりでした。

入学早々その評判に違わぬ実力を発揮し、この3年間常にチームの中核を担い続けてきた城下拡主将。彼なくして今年のチームは語る事ができません。二人の兄の背中を追いかけて愛知から鹿実の門を叩いた井戸田直也選手は、最終的に強打を誇るチームの4番を務めるほどの打者にまで成長しました。誰よりも宮下監督に怒られたという平石匠選手。一番に座りながら積極的な打撃でチームに勢いをもたらす姿勢は、宮下監督もご自身の現役時代と重ねるものがあったのではないでしょうか。なかなか正ショートが決まらない中、チームのためにコンバートを名乗り出た漢気も印象深いです。勝負強さに磨きをかけた板敷昴太郎選手や、打順降格から意地を見せた小倉良貴選手。再三の好守でチームを救った福崎浩志郎選手や、お父様の誕生日に高校初ホームランを放った濱田禎勝選手の活躍も忘れられません。

そして何より心を打たれたのは、大村真光投手のエースとしての投球です。新チーム結成時は決して頼れるような投手ではありませんでした。実際、秋の城西戦は多くの四死球、被安打を献上し敗戦投手になっています。投げるボールもなかなか走らず、常に高めに浮くなど投球内容も散々だったと記憶してます。それが一冬超えると彼の下半身はガッチリと逞しくなり、球速は140キロを記録するほどにまで伸びてきました。さらにその球をビシビシと低めに投げ込み相手打者に向かっていく姿は、秋とは全くの別物。一度は失った背番号1を、彼は実力で奪い返したのです。神村戦で見せた気迫のリリーフは、その後の反撃に向けてチームに大きな勇気をもたらしてくれました。決勝こそ早々降板する形にはなりましたが、彼がいなければチームはここまで来れなかった事でしょう。

甲子園には確かに届かなかった。栄光の舞台に立てなかった。それでも、このチームが戦い抜いた軌跡は、全国のどの強豪校にも負けない誇るべきものだったと私は思います。

私はこのチームを、第103代鹿実野球部を忘れる事はないでしょう。

 

素晴らしい野球をありがとう。そして、お疲れ様でした。

これからの皆さんの人生も、私はファンとして応援しています。

 

きっといつの日かこの夏の悔しさが、未来の自分に力をくれるはずです。

 

 

 

 

いざ神村戦へ!準決勝展望

日付変わって今日、決勝進出をかけた準決勝の鹿実対神村戦が行われます。

さて、ブログの表題ですが……当日の深夜にこの記事を書く意味はあるんだろうか?とも迷いましたが、こういったものは後から振り返る事に意味があると私は思ってます。試合前にあれこれ考え、たとえ的外れであろうが言いたい事を言ってしまいたくなるのが野球ファンの性というもの。そんな欲求に任せて今回は両チームの力を私なりの分析を述べていきながら、この試合の展望を簡単に行なっていきたいと思います。

なお、客観的な視点も交えるつもりではありますが、私自身は鹿実ファンであり、この記事の見解は決して両チームに公平な内容ではない事を先にご了承ください。

 

【攻撃比較】好調の打線は共にトップバッターが牽引。後続が繋ぐ事ができるか。

鹿実、神村のチーム成績を比較した時、まず目を引くのが互いの打線の好調さです。チーム打率は神村が.409と好成績ならば、鹿実はそれを上回る驚異の.500ちょうど。それぞれ8得点未満で終わった試合はなく、打撃に自信を持ったチーム同士の戦いになると言えるでしょう。

さらに共通するのが、共に1番打者がチームを牽引する強力な得点源になっている事です。

神村の1番甲斐田選手はここまで大会最多の4本塁打を放つなど、立ち上がりからバッテリーに強いプレッシャーを与えてくる選手です。

一方の平石選手はホームランこそないですが、こちらも強打の1番打者。大会打率はチーム打率と同じ5割ながら、特筆すべきはそのプレースタイル。打席では剥き出しの闘志を纏い、初球から相手投手に喰らい付いていく姿勢はまさに切り込み隊長と言うに相応しいもの。その中で厳しいボールはファールで粘ったり、強引に行かず逆方向に打ち返す確かな技術も兼ね備えています。それが発揮されたのが、大島戦の先制タイムリーでした。鹿実打線は彼の存在に牽引されてここまでの好成績を残していると言っても過言ではありません。

両チームのバッテリーは共に、まずこの1番打者の対策を求められている事でしょう。鹿実としては平石選手がこれまで通りチャンスメイクして勢いに乗り、守りでは甲斐田選手をしっかり抑えて神村の勢いを削ぎたいところです。

ただし、神村は甲斐田選手を抑えれば何とかなるほど易しいチームではありません。神村打線が持つストロングポイントは、どこからでも長打が打てる強打にあります。ただ振り回すだけの打線なら対処に困りませんが、神村の場合ほとんどの打者は半端な変化球には手を出してくれず甘く入れば簡単に振り抜いてきます。バッテリーとしては、息を抜く場所に困るチームです。こういうチームの場合、見え透いた交わす投球では後々苦しくなるだけなので、バッテリーが攻めの姿勢をどこまで意地できるかが求められてくるでしょう。経験豊富な城下主将のリードに期待したいところです。

長打力ではやや遅れをとるものの、鹿実の打線の切れ目のなさは神村にとっても脅威なのは間違いないでしょう。ここまで勝ち上がってきた試合同様、チーム単位で束になって相手投手へ襲いかかる事ができるか。プレッシャーをかけるためには早い回での先制点が欲しいところです。もちろん神村としてはこの数日鹿実打線を研究してきているはずなので、そう簡単に点を取らせてはくれないでしょう。打線の核である平石選手、城下選手、井戸田選手は特に厳しいマークにあう事が予想されます。その中で鍵となるのが、後続の打者の働きです。主軸への繋ぎが求められる福崎選手、城下選手や井戸田選手の後ろを打つであろう板敷選手、準々決勝で復調を印象付ける活躍を見せた元4番打者小倉選手らにはここぞという場面での一打を期待してます。

 

【守備・投手比較】互いに読めない先発。総力戦がものを言うか?

鹿実・赤嵜投手、神村・内堀投手と共に2年生左腕に先発マウンドを託してきた両チーム。例年ならばここで両者満を持して準決勝にエースを立てる……という予想になるところですが、今年から設けられた1週間近くの休養日は両ベンチの采配に大きな影響を与えるはずです。準々決勝の先発を任された2人は決して「二番手投手」という立ち位置ではなく、ゲームメイク能力に関して言えば3年生のエースを凌ぐ評価をされているようにも見受けられます。

神村は3回戦の泰投手の投球をベンチやチームメイトがどう捉えているか。「お前が立ち上がりが悪い事や四球出す事は計算済みだ。持ち前の真っ直ぐでグイグイ押していけよ」と背中を押せているなら、これほど戦いにくい相手はいません。逆に一点を惜しんでくるようならば、こちらが付け入る隙が増えるでしょう。

一方鹿実は先にも述べたように、守りの面でも攻めの姿勢を失ってはいけません。失点を防げるに越した事はありませんし、もちろん長打警戒は必須。しかし、長打を恐れすぎて腕の振りが鈍くなる事や、不利なカウントから少ない選択肢での配球を強いられる状況の方がより状況を苦しくするからです。ここまで最も安定感のある投球を見せているのは赤嵜投手ですが、私はエース大村投手にこの大一番を託す可能性も十分あると見ています。この一年、公式戦で2度の敗戦投手を経験してきた彼ですが、その度に成長を遂げてきました。130超えるのに精一杯だった球速は、先日の準々決勝でついに140キロを超えてきました。もちろん近年の高校野球では突出した数字ではありませんが、彼の武器は「強い球」を常に放れる事です。強いスピンが効いた球が140近くの球速で厳しいコースに決まれば、神村打線も手を焼くはずです。この3年間バッテリーを組んできた城下選手のミットを目掛けて、ここまで磨き上げた球を自信を持って投げ切って欲しいと思います。

もちろん、もしこの決断をするならばチームとしては信頼してエースに託すべきですが、一方でベンチの立場としては過度な「信用」は禁物。常に先を見据えて、先手を取れるようピッチャーを準備させていくはずです。後手後手の継投は最も避けたいところでしょう。先発マウンドでない場合は野手でスタメンが濃厚な赤嵜投手や2試合登板のある森山投手はもちろん、ここまで登板のない筏投手も含めて全員がマウンドに立つ気持ちで準備して欲しいところです。

当然、投手を支えるバックの守りも重要になってきます。27個のアウトを捕るため、常に最善の準備と集中力を保ち続けられるか。日にちが空くだけに実戦感覚がどこまで残っているかもきになりますが、とにかく立ち上がりの守備でしっかりリズムを作って行って欲しいですね。

圧倒できるに越したことはありませんが、おそらくそんな楽な試合にはならないでしょう。もつれた試合になった場合、最後にモノを言うのはチーム全員の力です。

 

求めるのは、己が極めし野球道

ここまで様々な見解を述べてきましたが、結局のところ試合になってみないとわかりません。野球は筋書きのないドラマ。どちらかが一気に流れを掴んで呆気ない結果になる事も、息を呑むような重苦しい展開になる事も十分あり得るでしょう。

鹿実ファンとしては、ここ数年夏の頂点を極めている神村はどうしても倒して欲しい相手です。しかし、それ以上に期待しているのが痺れるような最高の試合です。勝利を目指すのは当然として、鹿実らしく勇ましい戦いぶりが発揮される事を願います。ここまで必死に取り組んできた事と、困難を乗り越えてきた自分を、仲間を信じて。あとはふてぶてしく堂々と戦ってくれさえすれば、ファンとしては言う事はありません。

私自信は残念ですが球場に行く事も、リアルタイムで観戦する事も叶いません。しかし、今回も心からの声援を贈らせていただくつもりです。

 

負けるな!今の君たちならやれる!!