鹿実野球部、接戦を連勝!次戦強敵へ挑む

◆第150回九州高校野球鹿児島大会

二回戦

鹿児島工 000 100 000=1

鹿児島実 000 000 12x=3

【投ー捕】

鹿工:椎原ー小村

鹿実:筏ー駒壽

 

三回戦

鹿情報  000 002 000=2

鹿児島実 000 200 10x=3

【投ー捕】

情報:盛ー川畑

鹿実:筏ー駒壽

 

ここ2試合はいずれも重苦しい投手戦。リアルタイムで速報をチェックしながら気が気じゃありませんでした。

いずれの試合も相手チームの左腕投手を打ちあぐねる試合展開。ただ、そういった苦しい展開でも勝ち切る事ができた事は非常に価値があるといえるでしょう。それでは、試合映像を見た感想を簡単に述べていきたいと思います。

 

悪夢を糧に躍動する左腕と、エースの復帰

今大会に入ってから全ての試合で先発マウンドを任されたのは、背番号8の左腕筏投手です。

昨年秋は背番号1を背負いながらも、鹿屋中央戦ではリリーフに失敗し敗戦投手に。誰よりも敗退の悔しさを知る選手ではありますが、正直ここまで投手として重用されてくるとは思いませんでした。当初は宮下監督の「やられた分はグランドでやり返せ」というメッセージにも感じられます。

しかし、その投球内容に目をければ、私はこの起用が単なる情だけが優先された采配ではない事に気がつかされました。実際今大会における筏投手の安定感は抜群。元々得意だった横の変化球の出し入れに加え、縦に落ちる球で空振りが取れるようになるなど、投手として新たな姿を見せてきています。決して速球で押すタイプではないものの、以前よりも球の力が増し躍動感が出てきました。抜ける球が目立つ部分は課題でしょうが、彼が先発投手として目処が立った事はチームとしても大きな戦力アップです。

さらに、三回戦の鹿児島情報戦では6回途中から赤嵜投手が登板。昨年夏決勝以来の公式戦登板となりましたが、一打勝ち越しの場面を難なく切って取りました。マウンド上でのクールな立ち振る舞いと、内で燃やす闘志、そして力強い速球にキレのあるスライダーは以前と同じ。打席でもいきなり勝ち越しタイムリーを放って見せるなど、そのポテンシャルが健在である事を示してくれました。ファンとしては心強い限りです。ここからは貴重な夏の大会の経験者として、これまで以上にチームを引っ張ってくれる事を期待したいですね。

 

下級生の躍動と、主砲の一振り

この2試合では、下級生ながらスタメンで起用された二人の選手の活躍にも目を奪われました。ショート一ノ瀬選手と、ライト植戸選手です。

この学年は昨年秋の1年生大会の本戦出場を逃しており、残念ながらプレーをチェックする機会に恵まれませんでした。失礼ながら、「もしかしたら例年と比較して力が劣る代なのでは……」と懸念していましたが、スタメンを任されたこの二人に関しては、少なくとも現時点で鹿実のレギュラー争いに参加する力を間違いなく有しています。

一ノ瀬選手のショートとしての身のこなし、送球含めた安定感は、ライバルチームのショートと比べても全く遜色がありません。また打席でも複数安打を放つなど、攻守共に存在感を発揮し、徐々に打順を上げてきています。一方植戸選手は中軸を任されるだけあって、打席で放つ雰囲気は上級生顔負け。凡退になった打席でもきっちり捉えた打球も多く、能力の高さが窺えます。鹿児島工戦では犠打、エンドランにも対応するなど、チームプレーも無難に熟していました。彼ら下級生が結果を出せば、上級生も負けられないという気持ちになるでしょう。学年を超えた競争が生れることが、チームの活性化に繋がるはず。彼らに続く選手が出てくる事も期待したいですね。

そして、忘れてはいけないのが、主砲永井選手の存在です。二回戦では1点ビハインドの終盤に、貴重な同点アーチを市民球場防級ネットまで飛ばして見せました。そのパワーは圧巻です。元々下級生時代から主軸候補として期待されていながらも確実性に課題があり、新チームになってからレギュラーを獲得した選手。ただ、彼の強烈な打撃は、間違いなくチームにとって欠かせない大きな武器となり得るでしょう。

これまでの鹿実にも、「強打者」と呼ばれるバッターはいました。具体例を挙げれば、綿屋樹選手や西竜我選手、昨年の城下拡選手などです。ただし、彼らは長打力を秘めながらも、本質的には鋭いライナーで野手の間を抜く「パワーのある好打者」といったタイプでした。永井選手はそれらの先輩とは確実性こそ劣るものの、打撃スタイルや打球の質は一線を画します。思い切りの良さ、カチ上げるようなフォロースルー、打球の角度は強打者のそれと言えるでしょう。彼のような打者の台頭を待ち侘びてました。これからは警戒が強くなり、簡単には打たせてもらえなくなるでしょう。それでも永井選手には持ち味を失う事なく、一振りで相手バッテリーにプレッシャーを与える存在を目指し続けて欲しいと願います。

 

さあ、次戦は強敵神村学園が相手。昨夏のリベンジに燃えてくる相手にどう立ち向かうか。ファンとしては非常に楽しみな一戦となりそうです。