鹿実、NHK旗準決勝敗退……挑戦者として再出発を

まずは戦った3試合を振り返ります。

 

第63回NHK旗鹿児島県選抜高校野球

二回戦

吹  上000 000 02=2

鹿児島実002 201 04x=9

吹上:下池ー西薗

鹿実:大村ー城下

 

◆準々決勝

樟  南010 000 000 000 0=1

鹿児島実000 010 000 000 1x=2

樟南:西田ー森

鹿実:大村ー城下

※延長13回タイブレーク

 

準決勝

鹿児島実 000 000 100=1

鹿児島城西000 400 000=4

城西:津波、乗田、江口ー鍛冶屋

鹿実:大村ー城下

 

初戦はコールドで勝ち上がったものの、2イニング得点なしとややスロースタートな気配がしなくもなかった鹿実打線。それは次戦以降に尾を引く事となります。

準々決勝では県ナンバーワン左腕・西田恒河投手擁する宿敵樟南相手に大苦戦を強いられます。延長タイブレークの末に粘り勝ちこそしましたが、九州大会に引き続き本格派左腕に沈黙する打線に関しては不満の残る試合となりました。

そして準決勝、待っていたのは昨年秋に敗れた鹿児島城西。この試合でも強敵として立ち塞がった城西はタイプの違う3投手の継投で鹿実打線を翻弄。打線も序盤から大村投手にヒットを浴びせ続け4回に一挙4得点を挙げると、最後まで主導権を渡してくれませんでした。

本来このチームの武器であったはずの打線の沈黙、さらには一度敗れたチームに雪辱を果たせないまま敗北、痛感させられた勝ち続ける事の難しさ。非常に苦い思いをさせられた大会でした。

 

牙を剥く宿敵、敵わなかった強敵

鹿児島に生まれ育った高校野球ファンなら誰もが特別視するカード。それが所謂“伝統の一戦“、鹿実樟南戦です。近年は神村学園鹿屋中央、城西の台頭などで以前ほどこの二校が甲子園を独占する状況ではなくなりましたが、それでもこのライバル関係がなくなる事はありません。実際に球場で観戦すると、この両校が単なる強豪校同士以上の関係である事を毎回思い知らされます。準々決勝で実現したこの黄金カード。私も実際現地に行きたくて仕方ありませんでした。

少し前の話になりますが、城下選手と樟南西田投手が高校入学して最初に対峙したのもこのNHK旗。当時はお互い一年生だったので、あれからもう2年たったのだと考えると時の流れの早さに驚かせれます。

今回私は観戦こそ叶いませんでしたが、やはり試合は期待通りの熱戦となりました。

延長タイブレークまでもつれたこの試合、結果的に僅かに上回ったのは鹿実です。ですが、私の中で勝利の喜び以上に沸き上がってくるのは、夏の樟南は間違いなく今まで以上に手強くなるだろうという危機感でした。山之口監督が就任して以降の樟南が甲子園にたどり着いた年は、いずれも主要大会での優勝がないまま夏を迎えてます。追う立場の樟南ほど怖い存在はありません。過去に鹿実はその事を嫌というほど味わって来ましたから。

ただ、チャレンジャーであるのは鹿実も同じ。今季の鹿実は春の県大会こそ優勝していますが、県内には未だに倒せていないチームがあります。それが今大会準決勝で敗れ、その後優勝を勝ち取った鹿児島城西です。秋の3回戦、そして前年度の夏も含めると3連敗中。城西は佐々木誠監督就任前も県内屈指の強豪でしたが、過去に鹿実がここまで城西に勝てなかった時期はありません。単純な勝ち負けだけでなく、実際に試合を見れば直実に力をつけてきているという事実をもはや疑うことはできません。今季は早い段階から投手力の弱さを指摘されていましたが、今大会でその弱点は完全に払拭された印象です。

このチームを倒せるような実力がない限り、甲子園を勝ち取ることはできません。何よりも、やられっぱなしでは鹿実野球部のプライドが許さないでしょう。過去の記事でも述べましたが、私は当時連敗中だった神村学園を破り甲子園出場を成し遂げた2015年の事が今でも強く印象に残っています。前年の2014年は屈辱のコールド負けを喫した相手。その悔しい思いをしたOBたちが現役の選手たちに贈る必死の声援。「お前たちがやり返してくれ」と、そんな事を言った先輩もいました。実際にリベンジを果たした瞬間の興奮、感動は一生忘れる事はないでしょう。単なるファンでしかない私も、この時はチームの一員になったような感覚で応援していた記憶があります。

コロナ禍で甲子園を目指す事ができず、最後の夏も大敗で散った先輩たちの無念を晴らせるのは、現役の選手たちだけです。夏城西と戦う機会があるかはわかりませんが、もし再戦する事があれば、その時は必ず雪辱を果たしてくれると信じています。城西は確かに強く、更なる高みへ登ろうとしています。しかし、鹿実の野球はまだまだこれから。何度も、何度でも言います。

敗北の悔しさを味わってからが、鹿実野球の本領であると。

本番の夏まで残り1ヶ月。1ヶ月後、さらに成長した姿を披露してくれる事を期待してます。