魅せた、成長の証。鹿実、乱打戦を制しベスト4へ!!

今回もまずは試合から振り返ります。

 

第148回九州高校野球鹿児島大会

◆準々決勝

鹿児島実000 320 053=  13

鹿児島南210 300 000=  6

鹿実:大村、森山、赤嵜

鹿南:吉松、田中

序盤は一方的な劣勢を強いられる展開。初回からチャンスを作りつつも得点できない鹿実に対し、大村投手の立ち上がりを見事に攻め立てる南打線。2回途中での継投を余儀なくされます。鹿実が二番手に送ったのは昨年の一年生大会準優勝投手の森山投手。得意の鋭いスライダーを武器に後続を抑えますが、打線が反撃して追いついた4回にはそのスライダーをも南打線に捕らえられ3失点。追いついた直後に突き放される乱打戦は、敗れた昨年秋の城西戦と同じ展開です。

しかし、一冬超えた鹿実はここから違いました。

直後の5回に井戸田選手、平石選手の連続タイムリーで1点差に詰め寄ると、終盤8回には打線が爆発。平石選手がこの日3安打目となる二塁打を放つと、主砲城下選手は申告敬遠を受け1死一二塁。このチャンスに燃えたのが鹿実の主軸を秋から任される2人の選手。4番小倉選手は一、二塁間を破る同点タイムリーを放てば、この日スタメンを外れ途中出場となった5番板敷選手はレフトオーバーのツーベースを放ち逆転。後続も続きこの回一挙5点得点。最終回にも3点を挙げ突き放すと、最後は7回途中から登板の赤嵜選手が南打線の勢いを止め逆転勝利。

昨秋打撃戦で敗れノーシードとなったチームが打線の成長ぶりを見せつけてくれた戦いには、本当に心を動かされました。これで選抜出場組の待つ九州大会まであと一勝です。

 

課題が山積みの投手陣だが、新戦力台頭も

予想された通り、この試合も投手陣は苦しみました。先発大村投手は早々にノックアウトされ、昨年一年生大会で好投した森山投手も目が慣れた南打線に痛打を浴びていました。現時点ではこれが実力だと認めるほかありませんが、打たれて初めて学べる事があるはずです。とにかく、勝って次戦う事ができる。つまり、この試合の反省点を見つけ生かす機会があると言う事です。2人共素材としてはこんなものではないと私は見ています。だからこそ、「素材」で終わらずに、磨き上げられた投手となってくれる事を期待しています。リードする城下捕手も、彼らの成長を手助けして欲しいですね。

そんな中光ったのが、7回途中からリリーフで登板した赤嵜選手の好投です。決して140㌔を超えるような球はありませんが、速球も変化球も非常に腕が振れていてボールに勢いがありました。彼が終盤に相手打線の流れを止めてくれた事が、8回の逆転劇に繋がったと言っても過言ではありません。国分中央戦の先発を任されたのも納得の投球でした。彼は打者としても主力なので「このままエースに」と言うのは現時点ではなんとも言えません。しかし、現時点では最もチームの信頼の高い投手なのは間違いないはず。個人的には二年生の頃の福永泰志(三菱自動車岡崎)選手の2年生時を思い出しました。当時2012年は鹿実が秋春共にベスト8に残れず史上初めてNHK旗出場を逃す厳しいチーム状況でしたが、そこで白羽の矢が立ったのが中学時代投手だった福永選手。彼がマウンドに立つようになってからチーム状況が上向き、夏はノーシードから決勝まで勝ち上がりました。こう言う選手が出てくるとチームとしては非常に助かります。

赤嵜選手も左利きで打者としてのセンス抜群と、福永選手との共通点は多いです。福永選手は今や社会人野球の名選手ですが、赤嵜選手も彼のような選手に近づいて行って欲しいですね。まだ2年生なので、これからの成長が楽しみです。

 

悔しさを振り切り活躍する男たち

試合の振り返りでも述べましたが、このチームは昨年秋は鹿児島城西に打撃戦の末敗れ選抜出場の夢を断たれました。城西には旧チームの3年生も夏に大敗しており、連敗を喫した選手たちの悔しさは相当なものだったはずです。ただ、その悔しさが一冬越した鹿実戦士たちを強くさせてくれたのだと、私は確信しています。鹿実の野球は決して無敵の野球じゃありません。勝負における怖さ、難しさを知り、それを乗り越えようと必死で努力した選手たちが魅せる執念に、私はいつも心を打たれてしまうのです。今年のチームにも、その「戦士の魂」は確かに受け継がれています。

秋の城西戦で無安打と打線のブレーキになってしまった平石選手の4安打の活躍や、4番ながら前の打者を敬遠された小倉選手の同点タイムリー、今大会不振でスタメンを外された板敷選手の勝ち越し打。どれも魂が震えるプレーでした。宮下監督が常々口にする、「ウチは王者ではなく挑戦者」という言葉の意味を改めて再認識します。

次戦も立ち塞がるのは強敵、大島。もはやこのチームには「離島の強豪」「樟南を倒した」なんて枕詞は不要です。好投手と強気の攻めが持ち味の打線は、現時点で県内トップクラス。この強いチームを倒して九州行きを決めれば、その勝利はチームに大きな自信をもたらす事でしょう。

だから、是非とも勝って欲しい。次も挑戦者として、今ある実力の全てを相手にぶつけてください。健闘を祈ります。