浮き彫りになった課題。敗戦を糧に強くなれ!

結果は残念でしたが、まずは冷静に試合を振り返ろうと思います。

 

第147回九州高校野球鹿児島県大会

3回戦

鹿児島実4−8鹿児島城西

鹿実100003000=4 H8 E2

城西01202003X=8 H11E0

【投手ー捕手】

鹿実=下山、大村、筏ー城下

城西=板敷政、日高、乗田ー鍛冶屋

【長打】

本=巻(城西)

二=鍛冶屋(城西)、井戸田、城下、小倉、板敷昴、永井(鹿実

【試合経過】

先攻鹿実は初回に2番井戸田選手、3番城下主将の連続二塁打で先制。

しかし先発の右アンダーハンド下山投手は2回裏に同点を許すと、3回四球を許したところで降板。後を受けたエース大村投手も城西打線を凌ぎ切る事ができず逆転を許すと、5回までに1−5の劣勢を強いられる事となります。

鹿実打線は6回、城西二番手日高投手から5番小倉選手の2点適時打、代打永井選手の中越二塁打で3点を挙げ1点差としますが、その後を受けた城西三番手乗田投手を攻略できず。8回裏にも駄目押しの3点を追加され完敗。

トータル与四死球9の投手陣、2失策の守備、相手を上回る長打5本を放ちながら4点に終わった打線と、現状チームに足りていないものを明確に突きつけられた形に。

相手の城西にも付け入る隙が無かったわけではありません。しかし野手としても主力である板敷政選手、乗田選手は投手として決して手が付けられないほどでは無かったものの、級チームからの主力という事もあり非常に「場慣れ」を感じさせる落ち着きを見せていました。

結果的に、懸念していた試合経験値の差を見せ付けられたと言えるでしょう。

以下は、ネット中継を見た私の感想です。

 

◆投手陣再建には希望あり。まずは打者との「勝負」を!

私が新チームで最も不安視していたのが投手力でした。前チームでの登板経験者は少なく、優勝した一年生大会でもほぼエース大村投手に頼りきりでしたし、新人戦序盤の失点の多さも気がかりでした。結果的にその不安が当たった形とはなりましたが、彼らの投球を見るとまだまだ成長の余地があるように思います。

先発を任されたのは背番号10の下山投手。昨年はどちらかと言えば野手としての起用が多く、個人的には内野のレギュラーを期待される選手だと私は思っていました。投手としては身体能力を生かしたパワー型かと勝手に想像していましたが、マウンド上で見せた彼の投球はまさかのアンダーハンド。これには驚きました。決して単なる付焼き刃ではなく、下手投げ特有のシンカーや浮き上がるカーブのような球もしっかり織り交ぜており、城西打者陣もタイミングが合わないようなリアクションを多く見せていました。何より球速の出しにくいアンダーハンドとしては非常に力を感じさせる球を投げていたのが好印象です。

ただ、一方でまだまだ調整段階の実戦投入である事も同時に感じました。ストライクゾーン枠外に暴れる球も多く、投球の質が不安定。おそらく本人も違和感を抱きながらの投球なのではないでしょうか?何より3回途中降板の事実がそれを物語ってます。

投球フォームは一朝一夕で身につくものではありません。幸いここから先はしばらく公式戦はありませんから、時間をかけてじっくり自分の身体にあったアンダーハンドを見出してほしいです。あの低い軌道の速球に両サイドに曲がる変化球をゾーン内から曲げる事が可能になれば、もっと簡単に打者を抑えられるようになるはず。同じアンダーハンドの大先輩である谷村拓哉投手(専修大)を超える投手を目指してほしいですね。

二番手大村投手は実質この試合の責任投手。相手打線の流れを食い止める事ができず、失点を重ねてしまいました。ただ私が気になった部分は失点以上に与えた四球の多さ。二桁安打こそ許しましたが、許した長打は5回の本塁打のみ。相手打線に優位な状況を作り出してしまった事が失点に繋がりました。彼は決して制球が悪いタイプではなく、指にかかったスピンの効いた速球には球速以上の勢いを感じます。高めに抜けたり引っかかる球があるのは、おそらく下半身の力を使い切れて無いからでは無いでしょうか。この冬にしっかり身体を作り直し安定してストライクが放れるようになれば、彼は勝てる投手に生まれ変わる事ができるでしょう。純粋に投手としての資質はこんなものではないはずですし、球速もまだまだ伸びるでしょう。だからこそ、これからの過ごし方が重要です。

私は大村投手が昨年口にした「先輩たちと甲子園に行きたい」という言葉を忘れていません。結果こそ叶いませんでしたが、責任感のあるエースにふさわしい男だと思いました。だからこそ、しっかり打者と勝負ができてチームに勢いを作る「真のエース」を目指してほしいと願います。

 

◆打ち勝てなかった打線。援護射撃で投手を育てよ!

一方で敗戦の責任が全て投手陣にあるとは決して思いません。事前に打撃戦になる事も想定できましたし、安打こそ二桁に届かないながらも相手を上回る長打を放ちながら勝ち切れなかった事も、今後に向けて改善していかなければなりません。

私がキーマンに挙げた平石選手は、相手の徹底マークもありこの試合では力を発揮できませんでした。今後も相手チームは簡単に主力打者を気持ちよく打たせてはくれないでしょう。どんなマークにあってもきっちり結果が出せる打者に成長してほしいです。彼は今までの鹿実にはいなかったタイプの打者ですし、新しい鹿実打線の牽引車となってくれる事を期待してます。

力のある打者を上位に布陣した今年の鹿実打線は、この試合でも城西相手に互角以上の力を示してくれました。代打の永井選手の初戦に続く活躍も明るい材料です。

しかしながら、主砲の板敷政選手や長選手と言った強打者を下位打線に置ける城西打線とは余力、切れ目の無さに差を感じさせられた事もまた事実です。駒壽選手や福崎選手と言った守備を期待されて起用された選手も、今後は打撃での奮起を期待したいと思います。試合出場のなかった選手たちにも、彼らを脅かす存在になってほしいですね。

このチームは打ち勝っていかなければなりません。夏は最終的に守り勝つチームが強い傾向がありますし、投手陣の強化は必須事項です。ただ、彼ら援護する野手陣が強くなければ、決して投手は育ちません。「何点取られても俺たちが後から追いついてやる。だから自信を持ってストライクを投げろ」と言える関係こそが、真の強いチームです。このチームのメンバーなら、私はその関係こ構築が充分可能だと信じています。

 

結果は確かに残念でしたが、それ以上に私は今年の鹿実もやはり非常に魅力に溢れた素晴らしいチームだと再認識しました。ファンとしても熱い気持ちを思い出してきたところです。

彼らがこの日の悔しさを糧により強固なチームになってくれる事を信じて、私はこれからも鹿実野球部を見守り続けて行こうと思います。

 

さあ、ここからが本当の戦いだ。