100回記念の大会として盛り上がった夏の甲子園から早1ヶ月。全国各地では既に来年の春の甲子園ーーー選抜大会に向けた戦いが幕を開けています。
私の地元鹿児島でも、つい数日前に秋の県大会が開幕しました。この大会の上位2校が熊本で行われる九州大会に出場し、九州沖縄8県16チームと4つの選抜出場枠を賭けて戦うことになります。
果たして今年はどのチームが勝ち上がるのか。。。
そんな中、このブログでは今年の夏の鹿児島王者、鹿児島実ーーー鹿実野球部について追いかけて行こうと思います。
私は20年以上鹿実野球部を応援しているファンなのですが、今年様々な逆境を跳ね返し甲子園出場を果たした鹿実野球部の活躍には胸が熱くなりました。昨年秋の九州大会初戦、そして春の県大会はコールド負け。一度ドン底に落とされながらも這い上がり、最後は県の頂点に立ってた彼らの逞しい成長ぶりーーー高校球児の成長力、無限の可能性を改めて実感させられましたね。
そんな熱い気持ちを形にしたくて、このブログを開設致しました。
まあ前置きはここまでとして、早速新チーム最初の県大会を戦う鹿実野球部のチーム紹介、戦力分析を行なっていこうと思います!
不安要素は経験値
今年の鹿実は、決して評価は高くありません。
この秋最上級生となった2年生は、昨年11月に開催された一年生大会で初戦コールド負けを喫しており、旧チームからレギュラーとして活動している選手も一人もいません。それどころか、甲子園でベンチ入りを果たしたのは主にセカンドを守る山添選手のみ。この経験値の少なさこそ、現時点で最大の不安要素といえるでしょう。
実際にそれが露呈したのが、先月行われた市内新人戦でした。ベスト4を賭けたライバル樟南との一戦では、大量リードして迎えた最終回に7点を奪われ逆転サヨナラ負け。新人戦は過去4連覇中と好成績が続いていただけに、余計に不安を感じさせる結果となりました。
甲子園帰りでろくに実戦形式の練習ができていなかったのも事実ですが、ワンプレーに対する厳しさを追求する鹿実がこういった負け方をするのは非常に珍しく、現時点ではチームとしての成熟度が低いと言わざるを得ません。
逆に言えば伸び代は十分あるとも言えます。あの新人戦の敗退から1ヶ月経ちましたし、果たしてどこまで鍛え直してきたか。注目したいところです。
守備でリズムを作れるか
鹿実野球といえば、「堅実な守備でリズムを作り、攻撃に繋げる」というオールドスタイル。社会人野球出身の宮下監督就任後はそのチームカラーがより色濃くなった印象です。
しかし前述したように、新人戦では守備から崩れ大逆転負け。ここを建て直さないと今大会は厳しいでしょう。
ここ数年は毎年県内屈指の好投手がいたものの、今年に関しては一試合任せられる投手がいないのが現状。まずは試合を作れる投手が出てきて欲しいところ。
ベンチ入りに投手、あるいは登板可能な選手を6人揃えてきたことからも、首脳陣が投手陣に不安を抱いているのは間違いないでしょう。
もう一つ気がかりなのは捕手。今大会は重信選手、河野選手、横峯選手と三人の捕手をベンチに入れてきました。新人戦の起用法を見ても、おそらく現時点では正捕手を固定しない方針でしょう。旧チームでも益満選手、西村選手が交互に試合に出場する2人体制でした。
しかし、理想を言えば正捕手といえる絶対的レギュラーが現れてほしいところ。
投手だけでなく、同じグランドに立つ野手に対してもリーダーシップを発揮し、ベンチに対しても積極的に意見が言え、チーム内で一目置かれるような捕手がいるだけで、守備はガラッと良くなるものです。
もちろんそんな信頼を勝ち取るのは簡単なことではありませんが、この三人は決して素質は悪くないと思います。それだけに、誰か一人抜きん出てチームの信頼を勝ち取ってもらいたいところです。
野手陣個々の守備能力は今年も高いと思います。あとは実戦の中でどれだけ成長していけるか。バッテリーと野手陣がそれぞれ支え合うチームを目指して欲しいです。
強力打線は健在
優勝を逃しシード権も逸した新人戦でしたが、攻撃力の健在ぶりはアピールできたのではないでしょうか。
鹿児島玉龍、樟南といった強豪相手に2試合合計19得点。もちろん相手も調整段階のチームなので割り引いて見る必要はありますが、現段階でこのチームの最大の強みは打力でしょう。ここに関しては今年も県内トップクラスのはずです。
打線の軸を担うのは椎原選手、吉木選手という左の強打者コンビ。椎原選手は確実性と勝負強さ、吉木選手はやや粗いもののチーム屈指の長打力がそれぞれ魅力です。
チャンスメーカータイプの川口主将や、藤村選手、笹山選手、唯一の甲子園メンバー山添選手、好打者叶選手と言った傍を固める選手たちも充実。まだまだレギュラーが固定された感じではなく、大会中も熾烈なレギュラー争いが繰り広げられそうです。
とは言え、高校野球には「打線は水物」と言う格言があるのも事実。特にチームの経験値が乏しい秋は、好投手だけでなく、一見すると打ちごろに見えるような投手にも上手く交わされ、凡打の山を築いてしまう。。。なんていう展開も珍しくありません。
点が取れない展開に陥ったとき、いかに立ち回るか?社会人野球出身の宮下監督は、特にその部分を求めてくるはずです。
果たして、選手たちはどういった野球で応えるのでしょうか。
期待の新戦力
ここまで名前を挙げた選手はほとんどが2年生ですが、チームを活性化させるためには1年生の活躍が欠かせません。そういった意味で最も注目を浴びそうな選手は、昨年U15侍ジャパンにも選出された高田隼之介選手ではないでしょうか。
私は個人的に「元侍ジャパン」という肩書きだけでその選手を評価するような見方は好みません。実際中学時代日本代表に選ばれるほどの実力だったのに、高校では全く活躍出来なかったような選手も過去何人も見てきました。逆に中学時代無名ながら、高校で急成長する選手も珍しくありません。
しかし高田選手は新人戦に2試合、途中出場とスタメンで4番に座り、8打数3安打と一定の結果を残しています。決して名前先行の選手ではないと言えるでしょう。
中学時代の映像もあります。
打席での構えや雰囲気は、同じ串木野ドリームズの先輩有村健太選手と似たものを感じますね。身体はやや細いですが、上背は180と長身。ボールの見送り方もセンスを感じますし、軸がブレないスイングには非常に魅力を感じます。身体が出来て来れば長打も期待出来そうですね。
ただ、彼の中学でのポジションは投手。その映像がこちら。
この日の最速は128キロ。140キロが珍しく無くなった近年の高校野球では平凡ですし、コントロールもややバラツキがある。一見すると投手としてはそれほど。。。という印象を受けるでしょう。
しかし、180センチの長身ながらこれだけ柔らかい投球動作が出来るという点においては、個人的に投手としても高い素質があるように感じます。1:58あたりの縦に大きく割れるカーブも、かなり有効な球種になりそうです。
しっかりとトレーニングを積めば、スピードもコントロールもまだまだ良くなるでしょう。
守備の項目で触れた通り、今年の鹿実にはエースと言える投手がいません。それだけに彼に対する期待は今後高まってくるでしょう。新人戦では登板がありませんでしたが、今大会は背番号10番を付けているのでマウンドに上がる可能性はありそうです。
もちろん過度な期待は禁物ですが、彼の投打の活躍からは目が離せません。
まとめ
前評判の高くない今年の鹿実ですが、メンバー一人一人を見る限り決して力のないチームとは思いません。
一方で克服すべき課題が山積しているのもまた事実で、これを一つ一つクリアしない限り2年連続の甲子園出場は難しいでしょう。
だからこそ応援しがいがあるーーーそう思いませんか?
高校野球といえばどうしても夏の選手権大会ばかりに注目が集まりがちです。負けたらその時点で3年生が引退に追い込まれる緊迫感、その中で選手たちが魅せる全力プレー。。。確かにあの興奮に勝るものはありません。
しかし、夏の甲子園という最高の舞台を賭けて戦う選手たちが、どのような成長過程を辿っていったのか?という点はあまり注目されません。
私はここに高校野球の魅力が詰まっていると主張したいですし、だからこそ秋の大会が楽しみなのです。
恐らく不甲斐ない、未熟なプレーも目の当たりにすることもあるでしょう。そんな選手たちが、一つ一つ壁を乗り越えて逞しくなっていくーーーそれこそが高校野球における感動を生み出すものの正体ではないでしょうか。
私は鹿実野球部を毎年のように追いかけては、その感動を味わって来ました。
今年も彼らの戦いを見届けようと思います。
さあ、今日は県大会初戦!
相手はいきなりシード校。
どんな試合を見せてくれるでしょうか。
楽しみです!